南山大学

 
指定
期間
春学期
単位
年次
1〜4
担当者
友岡 敏明
他の科目との関連
履修対象学科
副題 政治の此方に
講義内容  本講義では、政治の本質や政治学上の基礎的な概念をまず押さえたのち、その具体的な理解のために、冷戦前後に焦点を合わせた現代政治の状況や問題を取り上げて説明する。基礎的な概念理解においては、歴史上に現われた代表的な政治理論を紹介し、主に「国家」と「権力」の概念を中心に説明する。その後、冷戦後の世界における日本の位置と役割を理解するために、米ソの対立を軸とする冷戦の本質と歴史について学ぶ。
講義計画  副題の「政治の此方に」は、英国の歴史哲学者クリストファー・ドーソンの『政治の彼方に』(1939年)をモジッタものである。「彼方(かなた)に」ではなく「此方(こなた)に」とした理由は、政治に対する関心の極度の低下という最近の傾向に警鐘を鳴らし、「政治」を自分に取り返すことへと激励するためである。「政治の彼方に」は、心の中まで覗き見るファシズムが世界を席巻する中でこそ、「政治」よりも高い価値が存在すると叫ぶ意味はあったが、時移って「政治」を他人事のように批判し、軽蔑し、あるいは無視する潮流の中では、むしろ「政治」に内在する本質的価値を強調し、「政治」への参加を叫び、「政治」からの逃避を批判する必要がある。
 確かに、国民の「政治」からの逃避や国民の「政治」に対するシラケの原因は、政治家の方にも社会の構造変化にもあるし、国民の側でのさまざまな無知・誤解にもとづく「はきちがい」にもある。しかし、往々にして、政治家が悪いから国民が政治に無関心になるのだとか、政治家がだらしない政治をするから国民が政治に背を向けるのだと、すべて政治家のせいにして、自分は悪くないという態度にわれわれは安住してはいないだろうか。
 特に、現在は「民主主義」の時代であって、政治を営む最も大事な基礎は国民の考えと姿勢であって、国民が政治から隔離されていた絶対主義時代のように政治家を批判するだけではすまなくなっている。例えば、福祉を拡充するなら税金が高くなるがどうするか、といった選択肢が無数に国民を取り巻いているし、この決定を行なうのが政治である。「民主主義」は、こうしたフレームワークの中で選択肢の提示者を政治家とし、提示された選択肢の最終的な決定者を国民とするのであるが、通常は、法律ができたからそれに従うといった、「政治」をお上(権力者)の仕事として受動的にこれを捉えがちである。それは「政治」に対するシラケの一つの現象に他ならない。そうではなく国民が「政治」の基底にある、選択肢の最終決定は国民にある、したがってその決定の結果と責任は国民に帰属するのだ(順法の根拠)という、その仕組みを絶えず確認しなければならない。この活性化に向けて、「政治」に関する少々基礎的な学習を歯を食いしばって成し遂げることにしよう。
 講義では、「政治」を考え、「政治」を自らに引き寄せる際の努力の一助として、事例を交えながら政治学上の基礎的な概念について解説し、その意味の確定に主眼をおくことにする。以下のように進める。
  (1)政治(妥協・創造・強制)とその政治のシステム(入力・出力・還流の構図)
  (2)国家(ゲマインシャフトとゲゼルシャフトの合成)の消滅?
  (3)権力と権威の正確な意味
  (4)政党とは?(政策決定と国民の架橋、圧力団体との違い)
  (5)選挙の意味と代表の実質化
  (6)政治と官僚(ファンクションとリークルートメントとトレーニング)
  (7)軍事と政治(国の安全とシビリアン・コントロール)
評価方法  問題意識への真摯な取り組み、したがって授業への取り組みにおける誠実度を参照し、定期試験における達成度で見る。
テキスト 特に指定せず。
その他