講義内容 |
民法典の第一編(総則)中に含まれている条文や制度について解説する。すなわち、総則編は、「人」および「法人」、つまり、権利の主体・取引の主体、「物」、つまり、権利の客体・取引の対象、そして、「法律行為」、つまり、権利の変動を生じさせる行為・取引行為、を基本的事項として取り扱っており、この順序で規定している。そして、民法は、これらのほかに、「期間」、さらに、「時効」の規定を、事柄の性質上、総則編に配置しているのである。以上の中で最も重要と思われるのは「法律行為」に関する規定・制度であるが、これを含め、総則編の問題の中心をなすのは、法律行為(その代表は契約)の過程においてその有効な成立を妨げる事由があるために、権利の変動、すなわち、権利義務の発生・消滅・変更が生じない場合に関する問題である。このような、いわばアブノーマルな事態に関する問題が議論の中心となるのであり、したがって、裏からいえば、総則編の議論をよくマスターするためには、総則編中の条文や制度のこのような意味・位置づけをよく理解する必要がある。これを理解しないままに、ただ闇雲に「人」に関する解説から話を聞いても、おそらく諸君の興味は喚起されないであろう。そこで本講義では以下の講義計画のような順序で、丁寧にわかりやすく、諸君の知的関心を呼び起こすことができるよう解説をしていくつもりである。 |