南山大学

 
指定
期間
通年
単位
年次
2〜4
担当者
田中 実
他の科目との関連
他学科履修
副題 ヨーロッパ大陸における法律学の展開
講義内容  明治以来、日本の法のあり方や法律学に強い影響を与えてきた、ヨーロッパ大陸法学の歴史的な展開を解説します。古代ローマで軍人となる子や奴隷に一定の特有財産を与えて自由に取引させてきたことが、今日の代理や有限責任のヒントとなっています。日本の民法の無味乾燥な規定も、今日的な機能はともかく、ローマの事件や法学の沿革を知ると生き生きとしてきます。中世の教会絶頂期でも、ローマ法をあやつる法学部出身者が社会に大きな影響を与えていました。イギリスのロジャー・ベーコンも、教会では、神学を勉強する者よりローマ法を勉強した者が称賛されていると嘆いています。イタリアの思想家ヴィーコも修辞学の先生でしたが、(ずっと俸給の高い)ローマ法の講座を担当するのが夢でした。哲学者カントやヘーゲルの叙述にも、ローマ法学の所有権移転理論などをわかっていないとピンとこないものがあります。有名な社会学者ヴェーバーも法学部出身です。古代ローマ社会、そして12世紀以降の西欧で生じた、紛争や財貨の帰属、社会そのものを法的なメガネで捉えていく「法の支配」を担う法律家があやつった『ローマ法大全』と19世紀までのローマ法学の中味を実際に解説して、今日の法律学と西欧社会を理解する手がかりを提供したいと思います。
講義計画  講義は、配付資料を用いて解説する形式です。序論として、日本における西欧法の継受および英米法と大陸法の特色を簡単に説明した後、ローマ法を適用して事件を解決した19世紀のドイツの判例を紹介します。本論として、まず、古代ローマ法の基本的な構造とローマ法の法文の読み方を具体的に説明し、6世紀『ローマ法大全』の編纂、さらにビザンツ帝国で編纂されたギリシャ語の『バシリカ法典』を解説します。次に、12世紀北イタリアでの大学の成立つまりローマ法学の復活を論じ、註釈、注解、助言文献などを解説し、今日の法律学のモデルとなった普通法学の完成を見ていきます。その後、印刷術の発明による法学文献出版の混乱、ヨーロッパ諸国へのローマ法の浸透、判例・実務文献の充実といった状況と、伝統的な法律学に対する革新としてあらわれる新たな動きを紹介します。具体的には、ルネサンスに対応するフランスを中心とした人文主義法学、中央ヨーロッパでの近世自然法学、啓蒙期の法典編纂、そして19世紀ドイツのパンデクテン法学を検討します。
評価方法 年2回の筆記試験

【そ の 他】講義内容に対応する教科書は出版されていません。配布資料に基づいた講義の聴講が単位取得には必要です。
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