南山大学

 
指定
期間
通年
単位
年次
2〜4
担当者
友岡 敏明
他の科目との関連
他学科履修
副題
講義内容  政治思想史を扱う場合、どのような歴史解釈の立場に立つかを明確にしなければならない。単に誰が何を言ったかを記憶するだけでは思想史にはならない。講義では、一応、発展史観の立場を維持し、西洋の政治思想史を統一的に講じようと思う。そこで、「政治」への知的接近が始まった古代ギリシアの政治思想を出発点とし、これがストア・キリスト教を通じて新たなオリエンテーションを得て中世に流れ込んだ、その姿を描いてみる。したがって、ひところ流行ったように中世を暗黒時代とすることなく、それを重要な歴史的発展の一つの段階とする。そして、近代政治思想もそれ以前の過去を受けての発展であって、それまでの西洋の知的財産のラディカルな部分的発展として捉えてみる。部分的発展だからこそ、近代=万能にはならない。近代は欠点を孕みながらの発展であり、その欠点の克服が現代に流れ込んでいるのであって、現代は、近代を継承しつつ近代を乗り越えようともがいている。その姿を紹介する。
 思想史学習というのは、過去の思想家がそれぞれ生きた時代環境の中でいかに問題を感じ、これにいかなる思索と解答を与えたかを「じっくり味わい」(イギリスの政治学者R・N・バーキーの言)、あるいは思想家が取り組んだ問題とその解決のための思索を「追体験」し、あたかも「楽譜の演奏」(いずれも丸山真男の言)するごとく共感をもって思想家を解釈することである。そこで受講生に期待するのは、こうした思想史学習の性質をよく肝に銘じて、知識を「対象として記憶」するのではなく、自らが認識した「歴史」にみずからも参加していることを意識することである。思想史の真摯な学習は、「歴史」の中での自己の位置、自己が生きている時代の位置を発見し、その中での「歴史」の内部改造への知的関心を持つことへと刺激するはずである。講義では、要約的な理屈のみならず、思想史上の原典に触れて、思想の香りを味わうことにも意を用いる。
講義計画 次のようなオーダーによる。
(1)政治思想史という学問(対象と方法)
(2)デモクラシーの祖型=アテネ(ペリクレス)
(3)アテネ・デモクラシーの堕落と近代民主主義への警告
(4)アテネ・デモクラシーの堕落を救う試み=理想主義的政治論(ソクラテスとプラトン)
(5)理想主義的政治論の功罪=個と公の緊張(改革とファシズム)
(6)現実主義的政治論の元祖=(アリストテレス)
(7)脱ポリスの政治論(ストア派とキリスト教)
(8)封建制の政治原理(マグナ・カルタとトマス・アクイナス)
(9)個的世界(国家と個人)のビッグ・バン(マキアヴェリ、ルター、カルヴァン)
(10)個人と国家の結合の試み=社会契約論(ホッブズ、ロック、ルソ)
⑪自由主義の変遷=国家消極説から積極説へ(ペイン、ベンサム、ミル、グリーン)
⑫大衆社会と民主主義(ヒューム、バーク、トクヴィル、オルテガ)
評価方法  資料配布時のロール・コール、定期試験等を通じて、問題意識への取り組み、したがって授業への取り組みにおける誠実度および達成度を判定基準とする。
テキスト 参考書:中谷猛、足立幸男編『概説・西洋政治思想』(ミネルヴァ書房)
資料:テキスト(思想史上の原典)のサワリの部分をコピーにて配付
その他