南山大学

 
指定
選必
期間
春学期
秋学期
単位
年次
1〜4
担当者
高畑 祐人
他の科目との関連
履修対象学科
副題
講義内容  本講義では、倫理の観点から、最近クローズアップされている環境問題を取り上げる。今日の憲法体制を規定しているさまざまな近代的市民法原理は、社会的福祉国家の理念の下に大きな変貌を遂げようとしている。しかし、環境問題に直面するとき、自ずと別の相貌をも示している。こうした側面を考えるとともに、伝統的な概念にも溯って検討し、環境問題を射程に含めうるような法や倫理の体系の可能性について考察する。
講義計画  環境問題が今や確実に解決を迫られていることは間違いない。しかし、何がほんとうに問題であるのかを正しく把握していなければ間違った対応をすることになり、かえって環境を悪化させることになりかねない。また、実際に環境問題を解決するのは技術的・制度的取り組みであるが、その前提には自然環境を保護することは「善」であるという価値判断が置かれている。自然環境の保護を善とするそうした価値判断の根拠について論じるのが環境倫理学という学問である。本講義では、まず、環境保全活動を行なう直接的根拠とされている「持続可能な発展」「自然の権利」の意味を説明し、それをふまえて自然環境の保護を善とする価値観についてどんな議論があるか、を概説する。そこでは「自然中心主義的立場」(自然それ自体のもつ価値のために自然環境を保護する)と「人間中心主義的立場」(人間にとっての自然の価値のために自然環境を保護する)が対立しているが、それぞれの立場の中もさらにさまざまな議論に分かれている。それらの議論の長所と問題点を検討し、自然環境保護にとって適切な倫理的根拠はどんなものかを考えてみたい。
講義の主な論点
 環境問題の構造・背景、現在の環境倫理学的議論の原点(60〜70年代の英語圏における議論、リン・ホワイト・Jr.、ジョン・パスモア、ピーター・シンガー、クリストファー・ストーン、アルネ・ネス)、「自然中心主義的立場」の議論の問題点(環境ファシズム、自然それ自体の価値という考え方)、「人間中心主義的立場」の議論(人間の基本的欲求に訴える議論、人間の生理的・心理的健全さに訴える議論、自然の美的・文化的価値に訴える議論etc.)
評価方法 筆記試験またはレポート。出席状況も加味する。
テキスト 特に指定はしないが参考文献を挙げておく。『環境倫理学のすすめ』(加藤尚武、丸善ライブラリー)、『環境と倫理』(加藤尚武、有斐閣アルマ)、『自然保護を問いなおす』(鬼頭秀一、ちくま新書)。講義の中でも適宜紹介していく。
その他