南山大学

 

Ⅰ.授業の概要

①講義科目名(単位数)

商法(会社法)(4単位)

②担当者名

黒田 清彦

③科目の種類

法律基本科目・民事系

④必須の有無

必修

⑤配当学年・学期

1年(既修者コース:免除)・秋学期

⑥授業の概要

会社とはどのような組織であり、どのように運営され、そしてそこからどのような問題が生ずるのかの理解が眼目です。導入部分は別として、株式会社を主な対象とします。基本的には講述が中心となりますが、ほぼ毎回宿題を課すことによって講義理解のための予習をしてもらった上で、宿題の論点につき全員参加の質疑応答を交え、コメントを付しながら講義を進めます。特に授業期間中にマスメデイアで取り上げられた事件や問題提起は、必ず全員で討論する対象にします。他方、教室で学んだ論点や指摘された問題点を整理し、前以て質問書を送付した上で、教室に会社経営者を招き、あるいは会社を直接訪問して、役員や使用人との面談・質疑応答の機会を作ります。

⑦到達目標

我々が日々の生活を送るためには、必要な製品を作りサービスを提供してくれる企業という経済活動の存在が不可欠であるという意味で、我々は企業社会に生きているという認識から出発して、その企業社会の主人公である会社、特に株式会社に関する基礎的にして実践的な知識を身に付けましょう。その上で、株式会社が国境を越えて進展する企業経済と密接な関係を持つことを理解し、常に将来を見据えたグローバルな発想を育むことを目標とします。

⑧成績評価の基準と方法

1)授業中の質疑応答における発言内容の評価(20%)、2)重要な基礎知識に関する複数回の小テスト(20%)、3)定期試験(50%)。以上の合計で評価します。

⑨教科書

黒田清彦ほか『レクチャー会社法[第2版補訂]』(法律文化社、2004年)

⑩参考文献・参考資料

適宜参考書や判例をはじめとする文献を紹介し、新聞記事コピーなどのプリントも数多く用意します。

⑪履修条件その他の事項

特にありません。

 

Ⅱ.授業計画

担当

①テーマ

授業内の学修活動

④授業時間外の学修活動等

②ねらい・内容

③授業方法・工夫

会社の意義(1)

1)「企業」と「会社」はどう違うのか、言葉本来の意味および会社の沿革を認識し、2)会社の定義における三つのポイントである営利・社団・法人の意味を理解することを目的とします。

会社概念の把握のため、一部ヴィデオを利用します。

 

会社の意義(2)

 

我が国ではどのような会社形態があり、各々どのように違うのか、合名会社はなぜ名を合わせたのかという理由から人的会社の本質を把握することによって、会社類型の違いを理解しましょう。

 

我が国ではどのような会社形態があるかを調べてきて下さい。

 

会社の意義(3)

会社は営利社団法人と言われるが、1)「社団」が人の集まりを意味するのであれば「一人会社」は認められないのではないか。2)「法人格否認の法理」とは何か。判例ではどのように説かれているか。これらの課題と取り組みながら、会社の本質を理解することを目的とします

平成2年改正前後における、一人会社をめぐる議論を紹介するとともに、法人格否認の法理を採用した判例を取り上げます。

一人会社をめぐる議論と法人格否認の法理に関する判例を予習しておいて下さい。

 

株式会社の基本概念

出資の結果与えられる株主の資格ないし地位が株式であることを理解した上で、一般の誤解(たとえば「株主責任」)を解きつつ、株式会社に関する基本概念を把握することを目的とします。

株主概念の把握のため、東京証券取引所が作成したヴィデオを利用します。

 

株式会社の特質

 

1)「所有と経営の分離」とは何か。2)「経営と指揮の分離」とは何か。以上に関する議論を通じ、これらの分離現象が制度としてどのような形で現れるか、すなわち株主総会・取締役会・代表取締役・監査役(会)という機関の分化を理解することを目的とします。

図表を多用して理解に役立てます。

 

 

株主総会の開催と議事運営(1)

 

前以て配布された資料(株主総会招集通知・貸借対照表・損益計算書)に基づき関連規定を学習し、貸借対照表および損益計算書に関しては、収益状況の読み方やこれら財務諸表を株主に開示することの意義を理解しましょう。

株主総会の開催および議事についてヴィデオ学習を行います。

資料を事前に検討しておいて下さい。

株主総会の開催と議事運営(2)

 

1)平成13年の法改正により認められた株主総会の電子化につき理解した上で、IT時代の今後のあり方について考えます。他方、2)前以て配布された最近の判例資料に基づき、議決権を委任できる相手方を制限することの是非につき議論しましょう。

 

事前に配布された判例文献を予習しておいて下さい。

株主総会の開催と議事運営(3)

第7講で明らかにされた、我が国特有の事象である同日開催の慣行・総会屋の存在について議論します。

意見交換に主眼を置きます。

総会屋の沿革について事前に調べておいて下さい。

取締役および取締役会(1)

従来型の経営機構の中に位置付けられる取締役および取締役会の制度に関する基本的知識を得ることを目的とします。

ビデオ教材を利用します。

 

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取締役および取締役会(2)

実務上、社長・専務・常務などの役付取締役、業務担当取締役、平取締役、従業員兼務取締役などが存在するが、法的には、取締役は、代表権の有無で2種類に区別されるに過ぎず、いやしくも取締役たる者は会社経営の一翼を担う重要な役職であることを理解することを目的とします。

ビデオ教材を利用します。

 

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取締役の責任と株主代表訴訟(1)

株主代表訴訟の事例研究報告と議論を通じて取締役の義務と責任の理解を深めましょう。

判例研究に主眼を置きます。

事前に配布された判例文献を予習しておいて下さい。

12

取締役の責任と株主代表訴訟(2)

株主代表訴訟制度との関連において、①いわゆるD/O保険に関する報告に基づく議論、および②平成13年の改正における取締役の責任制限は是か非かの議論を行います。

 

 

13

代表取締役

従来型の経営機関としての代表取締役の制度を理解した上で、表見取締役に関する判例を検討します。

 

事前に配布された判例文献を予習しておいて下さい。

14

監査役

監査役が会社経営者による業務執行の適正を確保するために設けられた機関であることを理解しましょう。業務執行の適正確保という意味で、検査役についても説明します。

ビデオ教材を利用します。

 

15

危機管理と監査役

監査の具体的な実践例を学ぶことにより、監査役の存在意義と重要性を認識することを目的とします。

ビデオ教材を利用します。

 

16

委員会等設置会社(1)

新たな制度が従来型の経営機構とどのように違うのかを理解することを目的とします。

 

 

17

委員会等設置会社(2)

この制度のメリットおよびデメリットを考え、かつこれを採用した会社における実態を踏まえて、意見交換を行います。

 

事前に新制度採用の状況を調べてきて下さい。。

18

株式会社の設立(1)

株式会社の設立手続の概要を理解することを目的とします。株式会社を設立する相談をしましょう。

 

どのような会社にするかを皆で決めて、次回の定款作成に備える。

19

株式会社の設立(2)

各自持ち寄った基本的な定款記載事項を皆で検討します。

 

 

20

株式会社の設立(3)

一人会社および最低資本制に関する諸国の立法例を検討し、これに関する意見交換を通じて株式会社の本質に関する理解を深めることを目的とします。

 

一人会社および最低資本制に関する諸国の立法例を前以て調べてきて下さい。。

21

株式(1)

4回で学んだ株式の意義を再確認した上で、現在および将来株券が廃止された場合に株式はどのように譲渡されるのか、全員で考えましょう。

 

株券廃止の動向を確認した上で講義に臨むこと。

22

株式(2)

自己株式規制および株式相互保有規制について理解することを目的とします。

 

予習項目:金庫株、単元株、親子会社の判断基準および相互保有株式の判断基準。

23

株式会社の資金調達(1)

新株発行について理解することを目的とします。

 

 

24

株式会社の資金調達(2)

新株発行の第三者割り当てにつき訴訟となった事例に基づく議論を通じて、問題処理のスキルを学ぶことを目的とします。

 

事前に指定された判例を予習してきて下さい。。

25

株式会社の資金調達(3)

社債について理解することを目的とします。

 

 

26

株式会社の計算

決算手続を説明し、第6回で扱った計算書類の内容を復習するとともに、利益配当および株主の経理検査権を理解することを目的とします。

 

 

27

株式会社の基礎の変更(1)

定款の変更および資本の減少について理解することを目的とします。

 

 

28

株式会社の基礎の変更(2)

合併、株式交換・株式移転および会社の分割について理解することを目的とします。

 

 

29

株式会社の基礎の変更(3)

株式会社・有限会社間の組織変更および解散と清算について理解することを目的とします。

 

 

30

会社役員と語る

株式会社の実態の理解に資するため、役員や使用人を招くか訪問して、質疑に応じてもらいます。