南山大学

 
指定
選必
期間
春学期
単位
年次
2〜4
担当者
坂下 浩司
他の科目との関連
履修対象学科
副題 人間の尊厳と「考えること」そして「意志すること」
講義内容  本講義では「人間の尊厳」を哲学的に考察する。そのために、古代から現代に至るまでの世界の主要な哲学思想のなかに見出される人間理解、すなわち、人間存在のあり方や生と死の意味をめぐる様々な思想や観念を参考にしつつ、人間的生の諸相に注目して、人間の固有性や価値とは何か、あるいは人格的存在としてあるべき姿とは何かについて考察する。
講義計画 この講義は大きく前半と後半の2つの部分に分かれます。

(1)人間の尊厳を守るために必要な「考える」ということについて。

 前半では、人間の尊厳を侵したナチズムの問題に哲学的に取り組んだ現代の女性哲学者ハンナ・アーレントの「考える」ということの哲学を考察します。どこにでもいそうな平凡な人間が「考える」ということをしないことによって、いかに人間の尊厳を侵してしまったか、またそれを防ぐにはどうしたらよいか、考えることの達人・古代ギリシアのソクラテスに学びつつ考えていきます。(関連するビデオも鑑賞する予定です。)最後に、考えることと行うことをリンクさせる話題として、現代のライルという哲学者の「やり方を知っている」(傾向を持っている)の哲学を取り上げ、その原点である古代ギリシアの「徳」(アレテー)の倫理を確認して前半を終わります。

(2)考えたことを実際に行う障害の一つ「意志の弱さ」について。

 後半では、「正しいと知っていても、それができない」という、みなさんもよく経験する、いわゆる「意志の弱さ」を考察します。まず、例として、ギリシア悲劇の「メーデイア」(女王メディア)を取り上げます。メディアは、自分を裏切った夫への復讐心に駆られて、悪いことだと知りつつ、我が子殺しをした人物として知られています。このメディアを古代の哲学者たちはどのように見てきたかを紹介します。(関連するビデオも鑑賞する予定です。)そして、ソクラテス(初期プラトン)の考えを勉強します。次に「意志の弱さ」から「意志」そのものの問題へと転じて、「意志」についてユニークな考えを展開した(意志なるものは存在しないのではないかとか、やはりあるのではないかという議論をしている)現代の哲学者たち(有名なウィトゲンシュタインを含む)を紹介します。ここで、いわゆる「意志の弱さ」の問題に、「意志」の概念をもたずに(!)取り組んだ古代の哲学者アリストテレスの「実践的三段論法」による分析にもどって考えてみます。最後は、再びアーレントに登場してもらって、「意志」はキリスト教(パウロ、アウグスティヌスなど)によってはじめて「発見」されたという話で、後半を終わります。
評価方法 毎回短い感想を書いてもらいます。したがって出席が前提となります。また、学期末に筆記試験を行います。
テキスト プリントを配布します。
その他