南山大学

 
指定
期間
春学期
単位
年次
4
担当者
高橋 広次
他の科目との関連
他学科履修 不可
副題 現代民主制の問題について
講義内容  民主制の定義は「人民のための政治」によってでなく、「人民による政治」によって与えられる。なぜなら、前者の政治目的は独裁制や貴族制とも結びつきうるからである。しかし「人民による政治」が真に「人民のための政治」に合致するかどうかは、自ずと別の問題をなすことを忘れてはならない。立法過程のみならず法適用過程を悉く「人民による政治」に従属させることが「人民のため」になるのだろうか。こうした疑問は、「純粋法学」の提唱で有名なH・ケルゼンによって提起されたが、そもそも「民衆制」なるものの恣意的危険性は古代のアリストテレスによって指摘されている。問題は歴史上の諸々の国家形態の堕落には常にその支配を担う者の倫理的腐敗が先行しているという事実である。
 本演習では、現代民主制の本質的特徴を明らかにするとともに、近時露呈しつつあるその機能的不全状態を調べ、人間の尊厳にふさわしい社会へ至る改善への道を考えることを目的とする。
講義計画  本演習において参加者は以下に掲げる諸々の問いを検討しつつ報告を重ね、最後にまとまったレポート論文を完成させる。
1.はじめに問題提起──本演習のねらいについて
2.「民主制」および「現代民主制」に関する基礎的文献を輪読する。
3.個別報告に入る。そのとき以下の問題を検討すること。
 (1)現代民主制の本質的特徴(選挙制度・代表制度・妥協・多数決)について調べる。
 (2)20世紀全体主義の国家像を調べる。
 (3)20世紀後半以降先進民主主義国にみられる制度問題について調べる。──例として「行政国家」、「福祉国家」の問題等。
 (4)現代民主制に対する批判的論評を調べる。
 (5)提案されている改革方向の妥当性を検討する。
評価方法  日常の演習への取り組みの姿勢、およびレポートで評価する。
テキスト  アリストテレス『政治学』、ルソー『社会契約論』、ケルゼン『デモクラシーの本質と価値』、メスナー『自然法』を読む。大部の書物については関連箇所の抜粋を複写して配布する。

【そ の 他】 法哲学を前もって、あるいは併せて履修することが望ましい。
その他