Ⅰ.授業の概要
①講義科目名(単位数) |
民法(契約法)(4単位) |
②担当者名 |
松浦 以津子 |
③科目の種類 |
法律基本科目・民事系 |
④必須の有無 |
必修 |
⑤配当学年・学期 |
1年(既修者コース:免除)・春学期 |
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⑥授業の概要 |
法学未修者を対象とする基礎科目の一つです。売買契約を典型例として、契約締結から履行までに発生する法的問題について、時系列に沿って学習します。たとえば、未成年は単独で不動産の売買契約を結ぶことができるかという問題は、従来の法学部の講義では「民法総論」のなかで説明されてきましたが、契約締結主体の重要な問題としてこの授業のなかで説明します。自然人や法人の権利能力や行為能力から、契約の成立、契約の有効・無効・取消、契約の拘束力、契約の効力、履行などの法的問題を理解することを目的とします。講義方式とケース・メソッドを組み合わせて授業を進めます。ケースは最高裁判例を中心としますが、当該判例を下級審判決から全てGoingSyllabusの「授業の記録」に貼り付けて履修者全てが予め読んでブリーフしてくることを前提として講義をします。講義中にソクラテスメソッドを取り入れることもありますが、むしろ講義前に「予習・復習ノート」を使用してケースブリーフをしていただくことによって双方向授業を成立させたいと考えています。 |
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⑦到達目標 |
目標はいくつかの段階で考えたほうがいいと考えます。 ① 基礎的な法概念(法律専門用語)を正確に理解できること 法概念は法的な効果を伴うので厳格に定義されています。法概念のなかには「契約」という概念のように日常生活で使われてものと、「瑕疵」というように日常生活では耳にしないものがあります。いずれの場合にも概念の定義と法律効果が理解できること ② 何のためにそのような概念がつかわれているか理解できること ③ 法的トラブル(紛争)に遭遇した場合にどの概念を使ってトラブルを解決することが可能であるかを考えることができること ④ ③が妥当であるか、他の選択肢はないのかを考えることができること ⑤ ③④をわかりやすく説明することができること |
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⑧成績評価の基準と方法 |
中間試験(20%)・定期試験(60%)の結果に日常の講義への参加程度(20%)を加味して評価します。法的知識の理解度だけではなく、問題についての分析力、多角的に解決を模索する力、わかりやすい文章力、論理性も評価します。 |
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⑨教科書 |
遠藤浩他編「民法(1)総則 第4版増補補訂2版」(有斐閣双書) 遠藤浩他編「民法(4)債権総論 第4版増補補訂版」(有斐閣双書) 遠藤浩他編「民法(5)契約総則 第4版」(有斐閣双書) 遠藤浩他編「民法(6)契約各論 第4版増補補訂版」(有斐閣双書) 遠藤浩他編「民法(7)事務管理・不当利得・不法行為 第4版」(有斐閣双書)(民法(不法行為法)でも使用します。) |
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⑩参考文献・参考資料 |
補助教材「2005年民法(契約法)予習・復習ノート」 |
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⑪履修条件その他の事項 |
説明に使用したPowerPointファイルを個人で復習に利用できるようにしています。パソコンを購入するときにソフトとしてOfficeのProfessionalも入れておくと便利だと考えます。 |
Ⅱ.授業計画
回 担当 |
①テーマ |
授業内の学修活動 |
④授業時間外の学修活動等 |
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②ねらい・内容 |
③授業方法・工夫 |
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1 |
はじめに |
講義の対象、授業の進め方、専門用語の学び方等法律学を学ぶための基礎的な知識を身につけます。民法の基本的な構造を理解し、それとの関係で講義計画を理解します。 条件、期限、期間 |
民法の構造についてのパワーポイントファイルを使用して説明します。 |
(1)1頁〜32頁。(1)244頁〜257頁。予習・復習ノ−ト第1章にしたがって予習・復習します。 |
2 |
契約を締結できる主体は? 契約の対象となるものは? |
判断能力のない者や未成年者や高齢者は独自に契約を結ぶことができるでしょうか?法人などの人為的に作った団体は契約を結ぶことができるでしょうか? 法人格なき社団に関する最高裁判例を検討することによって判例の読み方を学習します。 |
予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討します。 |
(1)33頁〜142頁。予習・復習ノ−ト第2章にしたがって予習・復習します。 |
3 |
代理 |
代理制度の社会経済的役割を理解して、次の法律的論点について知識を得ます。 無権代理 無権代理と相続による本人の地位の承継 表見代理 |
予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討します。 |
(1)192頁〜226頁。 予習・復習ノ−ト第3章にしたがって予習・復習します。 |
4 |
契約の自由の原則と信義誠実の原則 |
民法典に書かれていない基本原則である契約自由の原則について学びます。民法典に書かれている基本原則である信義誠実の原則について学びます。 法律に書かれていることがらと書かれていないことがらとの関係について考えます。 任意規定と強制規定との違いを理解します。 |
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(4)1頁〜46頁。(1)25頁〜30頁。 予習・復習ノ−ト第4章にしたがって予習・復習します。 |
5 |
契約の種類 |
民法典上の13の典型契約についてその特徴と違いを理解します。 なぜ分類するかについて法的効力との関係で理解します。 |
最後に、ショートテストをします。 |
(5)46頁〜53頁。予習・復習ノ−ト第5章にしたがって予習・復習します。 |
6 |
契約の成立
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意思表示の合致による契約の成立について学びます。 申込と承諾によって契約はいつ成立するか? 契約の成立時期を問題とするのはなぜか?について考えます。 証約手付・契約書について考えます。 解約手付について学びます |
参加者から送られた質問に答える形で説明します。 |
(5)54頁〜86頁。予習・復習ノ−ト第6章にしたがって予習・復習します。 2日前までに質問を送ります。 |
7 |
契約の効力
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契約が成立すると債権債務関係の発生します。売買契約を例として、どのような関係が成立するかを理解します。売主がどのような義務を負い、買主がどのような義務を負うかを理解します。 |
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(5)86頁〜90頁。(1)143頁〜164頁。(6)34頁〜41頁。予習・復習ノ−ト第7章にしたがって予習・復習します。 |
8 |
契約の無効 |
公序良俗違反による契約の無効と、意思の欠缺のために契約の効力が否定される場合について学びます。 契約が無効になるのはどのような場合か?無効とはどのような効果なのか?意思の欠缺のために無効になる場合、心裡留保・虚偽表示・錯誤について学びます。 |
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(1)164頁〜184頁。予習・復習ノ−ト第8章にしたがって予習・復習します。 |
9 |
契約の取消
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取消になるのはどのような場合かについて、詐欺・強迫・制限行為能力のそれぞれの場合ごとに理解します。取消の効果について学びます。そして、取消と無効はどのように違うかについて考察します。 |
前回の復習問題の検討から始めます。
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(1)184頁〜191頁。(1)227頁〜243頁。予習・復習ノ−ト第9章にしたがって予習・復習します。 |
10 |
無効・取消の効果
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無効と取消の効果として、債務が履行済みの場合における法律関係の清算方法について理解します。 不当利得返還請求権について学びます。 |
設例についてソクラテスメソッドで検討します。 |
(7)30頁〜76頁。予習・復習ノ−ト第10章にしたがって予習・復習します。 |
11 |
債権の種類と契約の種類 |
債権の種類について学びます。 売買とそれ以外の契約の比較をすることによって契約の種類について学びます。 特定物債権と不特定物債権 金銭債権・利息債権 双務契約と片務契約 有償契約と無償契約 |
復習のため、最初にショートテストをします。
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(4)8頁〜28頁。(5)46頁〜53頁。予習・復習ノ−ト第11章にしたがって予習復習します。 |
12 |
契約の履行
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契約の履行について特に次のことを学びます。 履行期・履行の場所 弁済・弁済の提供 債権の準占有者への弁済 |
予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討します。 |
(4)255頁〜291頁。予習・復習ノ−ト第12章にしたがって予習・復習します。 |
13 |
債権の消滅時効
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時効について特に次のことを学びます。 時効制度の目的 援用権者 時効と除斥期間の違い |
予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討する。 |
(1)260頁〜300頁。予習・復習ノ−ト第13章にしたがって予習・復習します。 |
14 |
双務契約の履行
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同時履行の抗弁権 履行の提供と遅滞 |
同上 |
(5)89頁〜104頁。予習・復習ノ−ト第14章にしたがって予習・復習します。 |
15 |
債務者が任意に履行しない場合の措置 |
債務者が任意に履行しない場合に債権者はどのような手段をとることができるかについて学びます。 自力救済の禁止 物的担保、人的担保の必要性 履行の強制 民事執行法 |
同上 |
(4)29頁〜46頁。予習・復習ノ−ト第15章にしたがって予習・復習します。 |
16 |
履行遅滞
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履行遅滞とはなにか?「履行できない」というのは履行遅滞か履行不能か?履行遅滞による損害賠償について学びます。 金銭債権の履行遅滞 同時履行の抗弁権との関係
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同上 講義時間外に中間試験を行います。 |
(4)46頁〜95頁。予習・復習ノ−ト第16章にしたがって予習・復習します。 |
17 |
履行不能な場合
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履行不能な場合の当事者関係の修復方法について学びます。 原始的不能と後発的不能との違い 危険負担とはどのような制度か? 履行不能による損害賠償 |
予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討する。 |
(4)74頁〜80頁。(5)104頁〜122頁。予習・復習ノ−ト第17章にしたがって予習・復習します。 |
18 |
不完全な履行 |
不完全な履行とは 安全配慮義務違反・説明義務違反・善管注意義務違反 不法行為との関係——請求権競合 不完全な履行と瑕疵担保責任との関係 |
予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討する。 |
(4)80頁〜89頁。予習・復習ノ−ト第18章にしたがって予習・復習します。 |
19 |
売主の担保責任 |
担保責任とは何か 債権譲渡の目的物に瑕疵があった場合に |
予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討する。 |
(6)38頁〜63頁。予習・復習ノ−ト第19章にしたがって予習・復習します。 |
20 |
債務不履行による損害賠償
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16、17、18で学んだ履行遅滞、履行不能、不完全履行について復習しながら効果を統一的に学ぶ。 金銭賠償の原則 通常損害と特別損害 相当因果関係 精神的な損害についてまで請求が認められるか 解除との関係 |
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(4)58頁〜73頁。(4)76頁〜80頁。(4)83頁〜87頁。予習・復習ノ−ト第20章にしたがって予習・復習します。 |
21 |
損害賠償請求額の算定方法 |
損害賠償請求額の算定方法について学びます。特に、以下のことについて考えます。 過失相殺・賠償額の予定・金銭債権 違約手付・損害賠償額の予定としての手付 |
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同上。 予習・復習ノ−ト第21章にしたがって予習・復習します。 |
22 |
契約の解除の要件 |
債務不履行による契約の解除についてその要件を学びます。 |
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(5)137頁〜176頁。予習・復習ノ−ト第22章にしたがって予習・復習します。 |
23 |
解除権の行使方法および解除の効果 |
解除の効果をどのように説明するかについての直接効果説と間接効果説について学習します。 原状回復と第三者の関係について考えます。 |
予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討する。 |
(5)176頁〜213頁。予習・復習ノ−ト第23章にしたがって予習・復習します。 |
24 |
解除の効果 |
取消・無効とどのように違うか 原状回復と不当利得請求権との関係について学習します。
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予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討する。 |
(5)185頁〜213頁。(7)30頁〜76頁。予習・復習ノ−ト第24章にしたがって予習・復習します。 |
25 |
指名債権の譲渡 |
債権の譲渡の経済的役割について理解します。 譲渡できる債権と譲渡できない債権 第三者への対抗 |
予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討する。 |
(4)212頁〜244頁。予習・復習ノ−ト第25章にしたがって予習・復習します。 |
26 |
贈与契約 |
贈与契約は売買契約とどのように違っているか 贈与契約をしたらそのとおり履行しなければならないか 贈与契約の解除 |
予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討する。 |
(6)3頁〜12頁。予習・復習ノ−ト第26章にしたがって予習・復習します。 |
27
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消費貸借契約
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利息制限法との関係 返還請求をめぐる問題
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予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討する。 |
(6)74頁〜88頁。(4)18頁〜25頁。予習・復習ノ−ト第27章にしたがって予習・復習します。 |
28 |
賃貸借契約 |
賃貸借契約の特徴 宅地の賃貸借と建物の賃貸借 賃貸借と第三者への対抗
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(6)96頁〜184頁。予習・復習ノ−ト第28章にしたがって予習・復習します。 |
29
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賃貸借契約の終了 |
賃貸借の終了をめぐる法律関係について学習します。 敷金返還義務の承継 敷金返還と修繕義務 同時履行の抗弁権
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予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討する。 |
同上。 予習・復習ノ−ト第29章にしたがって予習・復習します。 |
30 |
請負契約
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為す債務である請負契約について、以下の問題を中心にして学びます。 請負契約が途中で終了した場合の所有権の帰属について |
予習対象の判例についてソクラテスメソッドで検討する。 |
(6)208頁〜224頁。予習・復習ノ−ト第30章にしたがって予習・復習します。 |