南山大学

 

Ⅰ.授業の概要

①講義科目名(単位数)

民事法総合研究(2単位)

②担当者名

加藤 良夫

③科目の種類

法律基本科目・民事系

④必須の有無

必修

⑤配当学年・学期

3年(既修者コース:2年)・春学期

⑥授業の概要

医療過誤訴訟を題材として、実体法としての民法と手続法としての民事訴訟法を総合して実務上の能力の基礎を学ぶことができるように授業を行います。

医療過誤事件の事例に即して、そこに含まれる契約法上又は不法行為法上の論点を明確にした上で、証拠方法、立証責任を念頭に、民事裁判の第一審手続の展開を学びます。そのためには、受講生に予め参考資料と共に具体的事例を示し、問題点を把握させ、実体法上及び手続法上の論点について予習させ、その成果を発表させる等して理解の深化を図ります。

⑦到達目標

理論と実務の架橋をめざすものとして法律基本科目群の民法と民事訴訟法の理解の上に、これらが実務上どのように関連し機能しているかを裁判手続を通して学ぶものです。この授業を通して有能な法曹としての基礎となる力を身につけて貰いたい。

⑧成績評価の基準と方法

この授業に必要とされる知識の習得のレベル、理論を実務に生かす能力の有無を評価の基準とします。具体的には、授業時間内の討議の内容、予備知識を問う小テスト及びレポートにより評価します。

⑨教科書

加藤良夫ほか著『患者側弁護士のための実践医療過誤訴訟』(日本評論社、2004年)

⑩参考文献・参考資料

福永有利ほか著『新民事の訴訟』(悠々社、2000年)

⑪履修条件その他の事項

 

 

Ⅱ.授業計画

担当

①テーマ

授業内の学修活動

④授業時間外の学修活動等

②ねらい・内容

③授業方法・工夫

法律相談、調査

民事裁判における法律相談と調査の意義を認識します。特に聴き取り調査のコツとポイントを学習します。

聴き取り調査のための「調査カード」の実物を示し、イメージを持たせます。

事前に教科書、参考書の該当部分を読んでくることを前提とします。(以下同じ)

証拠保全①

カルテ等の証拠保全の必要性、申請手続の要点を学びます。事案の検討(事実経過の把握)のための証拠収集活動の概要を具体的に学習します。

証拠保全の申立書をもとに、民訴法の証拠保全の手続のイメージを持たせます。

証拠保全手続の存在意義について予め考えてくることが必要です。

証拠保全②

様々な証拠物についての検証手続を学びます。検証当日の具体的な手続と、検証対象となる証拠物の種類、内容を学びます。

検証調書等を見せ、検証手続のイメージが持てるように工夫します。

様々な証拠物の検証方法について予め考えてくることが必要です。

示談交渉

紛争解決の重要な手段としての示談の申し入れを学びます。示談解決の鍵を握っている損保会社、医師会の存在と役割を踏まえ、示談交渉する際のコツとポイントを学習します。

内容証明郵便による示談の申し入れ書を示しつつ、示談交渉の場面が目に浮かぶように工夫します。

陳述書等を基にして内容証明郵便の文面を起案してくることも求められます。

訴提起

過失論、因果関係論、損害論の法的構成を学びます。民法第709条と第415条及び「相当因果関係」の考え方を踏まえ、過失の建て方等について学習します。

訴状の具体例を示しつつ、過失論等のイメージがつかめるように工夫します。

陳述書等を基にして過失主張を組み立てる課題が求められます。

争点整理①

準備書面で主張すべき事実主張と法律論を学びます。併せて準備書面の内容とそれを書くべき時期、書き方についても学習します。

工夫された準備書面の具体例を示しつつ、イメージがもてるようにします。

陳述書等を基にして準備書面の骨子を作成する課題が課されます。

争点整理②

争点整理の方法を学びます。原告の主張と被告の主張を対比させて、争点整理表を作成できるように学習します。

原告と被告双方の準備書面から争点整理をしていく方法を具体的に学びます。

予め対立する準備書面から争点整理をする課題が課されます。

証拠調①

書証の証拠調の要点を学びます。どのような書証が提出されるのか、それぞれの証拠説明書の書き方、証拠調の方法を学習します。

実際の証拠説明書を示し、書証がどのように証拠調されているかについてイメージか持てるように工夫します。

予め証拠についての証拠説明書を起案することが求められます。

証拠調②

人証の証拠調(主尋問)を学びます。併せて、主尋問と有機的関連を持つ陳述書の作成ポイントも学びます。主尋問の構成、尋問方法にも及びます。

主尋問のよい例、悪い例について興味深く考えることができるように工夫します。

予め陳述書を示し、尋問メモを作成することが求められます。

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証拠調③

人証の証拠調(反対尋問)を学びます。民訴規則の定める尋問に対する異議が相手方より出されない方法も学びます。反対尋問の構成の仕方や専門家に対する尋問方法にも及びます。

反対尋問のよい例、悪い例の具体例を示し、興味深く考えることができるよう工夫します。

争点ならびに主尋問の例を予め示し、反対尋問のメモを作成することが求められます。

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鑑定①

鑑定事項の立て方について学びます。民事訴訟における鑑定手続を概説するとともに、争点との関係で鑑定事項を的確に組み立てることの重要性を学習します。

鑑定申請書の具体例を示し、鑑定制度、鑑定事項の重要性が理解できるようにします。

争点整理表を基にして鑑定事項を起案することが課されます。

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鑑定②

鑑定人尋問について学びます。鑑定書についての評価基準も示しつつ、補充鑑定及び鑑定人尋問の方法を学習します。

鑑定書や鑑定人尋問調書の具体例を示し、鑑定人尋問のイメージが持てるように工夫します。

鑑定書集の中のいくつかの鑑定を読んでくることが求められます。

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和解

裁判上の和解をめぐる諸問題を検討します。インフォームド・コンセント、自己決定権の観点から依頼者が和解によって事件の終結を図る際の留意点を学びます。

和解調書の具体例を示し、和解条項の内容、書き方にも関心が向くようにします。

争点整理表及び陳述書を基に和解条項を起案する課題が課されます。

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判決①

自由心証、心証形成ならびに判決の構成について学びます。判決に熟するとはどういう段階か、心証形成プロセス及び判決書の構成を理論的に学習します。

判決書の具体例を示し、判決書の構成等が解るようにします。

民訴法の判決手続を予め学習しておく必要があります。

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判決②

割合的認定、期待権侵害論、過失相殺、損益相殺等を学びます。損害論の中で理論的に進化している分野について学習します。

それぞれの考え方、現実に適用される場面を示し、興味がもてるようにします。

参考書等でこれらについて予め学習してくることが必要です。