南山大学

 

Ⅰ.授業の概要

①講義科目名(単位数)

刑事実務演習(2単位)

②担当者名

多田 元

③科目の種類

実務基礎科目

④必須の有無

必修

⑤配当学年・学期

3年(既修者コース:2年)・秋学期

⑥授業の概要

刑事実務とは、刑事手続において被告人・被疑者の人権を保障しながら真実を解明し、合理的な問題解決をめざす法曹の実務です。授業も常に人を人として認める人権感覚を共に磨い合える場になるように心がけたいと願っています。

この授業では、刑事実務において実際上出会い、取り扱うような諸問題をテーマに、実務的な基礎知識・技法の習得に加え、裁判官、検察官、弁護士がそれぞれの立場から刑事司法の担い手としてどのような役割を果たすべきであるか、法曹の役割のあり方を主体的に考察する態度を養うことを目的とします。

授業で取り扱う主なテーマは、捜査・裁判の手続に関する実務上の諸問題、事実認定論(尋問・面接技術の基礎、鑑定を含む)、量刑の考え方(量刑の資料、執行猶予・保護観察制度など)、刑事司法における被害者の権利保障の制度と運用などを取り上げます。

実際のケース記録を素材にして、捜査に関しては令状主義と司法審査のあり方、裁判に関しては、経験則に基づく科学的な事実認定のあり方(鑑定の活用法、尋問・面接技術の基礎など)、量刑の科学化、犯罪被害者の権利保障と適正手続のあり方を考えます。

授業の進め方は、ゼミ形式による双方向性と多方向性をもつ学習とし、テーマと資料を事前に提供し、判例、事例などを素材にして討論をします。随時、報告書や小論(判決理由、弁論要旨、論告要旨なども含め)を起案添削して討論の素材とします。

⑦到達目標

法律基本科目や実務基礎科目で学習したことを前提に、実務的な応用問題について色々な角度から考えるセンスや、社会的事象として幅広い視点から犯罪の原因、背景をも考察するセンスを学ぶことを目標とします。

また、論点について簡潔に文章(判決理由、論告要旨、弁論要旨など)にまとめることを通じて分析・思考・論理的構成・表現の能力を養います。

⑧成績評価の基準と方法

実務と理論の架橋という観点から、受講生が実務に従事する際に必要な専門的基礎的知識を修得できたか否かを判定する単位認定試験(筆記試験)を実施します。

成績評価については、その修得のレベルを明らかにすることにより、受講生自身が達成度を自己評価し、自ら学ぶモチベーションを高めることを目的とし、合格をA,B,C の3段階評価とします。

⑨教科書

実際のケースを素材とした演習教材を使用します。

⑩参考文献・参考資料

竹澤哲夫、渡辺保夫、村井敏邦編『刑事弁護の技術』(第一法規、1994年)など随時紹介します。

⑪履修条件その他の事項

特になし

 

Ⅱ.授業計画

担当

①テーマ

授業内の学修活動

④授業時間外の学修活動等

②ねらい・内容

③授業方法・工夫

はじめに

授業計画の説明をします。

演習教材、参考文献などの紹介、受講者の希望についても話し合います。

 

捜査①

逮捕と令状審査

逮捕状請求の適否、勾留の要件、準抗告についてケースを素材に考察します。

演習教材ケース研究

演習教材の予習とレポートの事前提出。

捜査②

勾留と令状審査

少年事件の勾留請求の要件、接見禁止などについてケースを素材に考察します。

演習教材ケース研究

同上

裁判①

起訴

起訴状の訴因の構成、釈明、公訴事実に対する弁護人の意見など第1審冒頭手続についてケースを素材に考察します。

演習教材ケース研究

同上

裁判②

証拠法

証拠の争い方、自白の任意性、信用性に関する立証のあり方について考察します。

演習教材および判例学説についてレポートします。

同上

裁判③

証拠法

5の論点をケース研究により具体的に考察します。

5をふまえて意見交換をします

授業後に小論をまとめます。

裁判④

訴訟運営

6をふまえて、自白の任意性、信用性に関する証人尋問の方法(反対尋問)について考察します。

否認事件の証人尋問調書などの検討をします。

演習教材の予習。

裁判⑤

訴訟運営

子どもの虐待事件を素材に立証の方法、証人尋問の方法、被害者の権利保障などについて考察します。

講義、ビデオリンクなどの見学

裁判所見学

裁判⑥

訴訟運営

裁判の科学化と鑑定の活用について考察します。

講義、鑑定人尋問調書について意見交換。

演習教材の予習。

10

裁判⑦

事実認定

事実認定における経験則と自由心証主義について考察します。

演習教材の問題点について意見交換。

演習教材を予習し、レポートを事前提出。

11

裁判⑧

事実認定

同上

論点別に判決理由を起案し、講評と意見交換。

10の意見交換をふまえて論点別に判決理由を起案し、事前に提出。

12

裁判⑨

事実認定

同上

レポートに関する講評と意見交換。

11の意見交換をふまえてレポートを事前提出。

13

裁判⑩

量刑のあり方

量刑資料、情状立証のあり方、量刑の科学化の問題と刑事政策に関する基礎知識について学習します。

講義と意見交換。

演習教材の予習。

14

まとめ①

刑事実務の問題点

これまでの授業をふまえて、刑事司法のあり方について考察します。

受講者からの問題提起と意見交換。

刑事司法の問題点についてのレポート

15

まとめ②

新しい刑事司法のあり方について考察します

小論文に対する講評と意見交換。

まとめ。

14の意見交換をふまえて小論文を事前提出。