南山大学

 

Ⅰ.授業の概要

①講義科目名(単位数)

法曹倫理(2単位)

②担当者名

 

加藤 良夫

北川 ひろみ

③科目の種類

実務基礎科目

④必須の有無

必修

⑤配当学年・学期

3年(既修者コース:2年)・春学期

⑥授業の概要

(概要)法律実務家が職務を遂行していく上で常に自覚し自らを律しなければならない倫理規範を学ぶとともに、不祥事や違反行為の背景にある行為者の姿勢や考え方、実務上の誘因となることがら、つまづきやすい環境等の存在を摘示し、法曹倫理を高め適性に職務を遂行していくためのシステムの構築を検討します。

授業では、豊富な具体例、判例、懲戒事例等を例示しつつ、解説と双方向・多方向でのディスカッション、レポート提出により、理解を定着させた上で、法曹の社会的役割、使命は何かを深く考えるようにします。

 

(オムニバス形式)

(加藤専任教授)法曹の社会的役割と弁護士倫理に関して、弁護士自治の意義やそれを支える各種制度を理解させるとともに、依頼人との委任契約をめぐる諸問題(双方代理、利害衝突、守秘義務など)、特に依頼人との信頼関係の問題、さらに弁護過誤の問題等を検討する。

(北川兼任講師)民事・刑事における弁護士の信義誠実義務と真実義務、弁護士の公共的役割、営業活動・非弁提携、企業法務・弁護士法人・共同事務所、検察官の法曹倫理について検討します。

⑦到達目標

法曹倫理とは、あらゆる法曹実務家が常に自覚し自らを律しなければならない、法曹としての社会的役割・使命に基づく行動規範を学ぶ基本科目である。したがって、授業では、こうした法曹倫理の意義を認識させることを基本目標とした上で、さらに、富な事例検討とシミュレーションを通じて、学生が実務家として活動するようになったときに、常に法曹倫理の基本理念に立ち返って自らの行動を律することのできるような規範意識の獲得と、法曹倫理を高めるシステムの構築を目標とする。

⑧成績評価の基準と方法

加藤教授を本科目の成績評価の責任者とする。成績評価は、基本的に、授業におけるディスカッションの姿勢と授業外で個別に課すレポートの結果によって、合議の上総合的に行うものとするが、科目の性格上、法的スキルの修得度合いというよりも、法曹としての倫理観、責任感の獲得を念頭においた評価を行う。

⑨教科書

塚原英治ほか編著『法曹の倫理と責任』上、下(現代人文社、2004年)

⑩参考文献・参考資料

日本弁護士連合会弁護士倫理に関する委員会編著『注釈弁護士倫理』」(有斐閣、1995年)

日本弁護士連合会調査室編著 『条解弁護士法  第3版』(弘文堂、平成15年)

日本弁護士連合会『事例集弁護士倫理』

名古屋弁護士会研修委員会『弁護士倫理事例集Ⅱ』

⑪履修条件その他の事項

 

 

Ⅱ.授業計画

担当

①テーマ

授業内の学修活動

④授業時間外の学修活動等

②ねらい・内容

③授業方法・工夫

 

加藤

法曹の社会的役割と弁護士倫理

社会の中で実践される法曹の仕事の内容とその役割について講義をするとともに、なぜ弁護士倫理が重要とされているのかについて深く考え理解できることができるように問題を提起します。

法曹についてのイメージを語るところから始めて、法曹の仕事の内容についての理解を確認します。なぜ弁護士倫理が必要とされているかについて各人の見解を述べてもらいます。

予め指定された教科書の該当部分を読んでくることが必要です。

 

加藤

弁護士自治の意義、役割、機能。綱紀・懲戒制度

弁護士自治の概念、意義、役割、機能及び弁護士自治を維持するための各種制度とりわけ綱紀・懲戒制度について学習します。

他の士業との比較の中で弁護士会に自治が認められている意味を双方向・多方向でのディスカッションの中で考えてもらいます。

予め指定された教科書と参考書を読んでくることが必要です。(以下同様です。)

 

加藤

信頼関係① 委任契約、双方代理

弁護士業務を受任する際の留意点、委任関係をめぐる様々な問題を取り上げます。とりわけ禁止されている双方代理について学習します。

具体的な懲戒事例の中から双方代理が問題とされたケースについて検討していきます。

事前に提起した事例について予め問題点を調べてくることが求められます。

 

加藤

信頼関係② 利害衝突その他職務を行い得ない事件、特別関係の告知

弁護士が信頼関係上、職務を行うことのできない事件があることについて理解を深めます。

職務を行えない事件につき依頼を受け、懲戒となった事例をもとに、どういう場合がこれにあたるかをディスカッション形式も取り入れて検討します。

予め提起された事例を検討してくることが必要です。

 

加藤

信頼関係③ 守秘義務、辞任

弁護士が職務を行ううえで守らなければならない守秘義務について理解を深めます。また、信頼関係が築けない事態となった場合には辞任することもありえます。その際の留意点についても学びます。

守秘義務違反の事例についてディスカッションもしながら検討します。

予め守秘義務違反の事例について調査検討してくることが必要です。

 

加藤

報酬、金品の管理、精算、業務上横領

インフォームド・コンセントの理念に照らし、報酬についての事前説明の重要性、報酬契約の結び方、金品管理の大切さを具体的に学びます。

委任契約書乃至報酬契約書の起案を通して、どういう内容の契約となるのかを考えます。金銭を預かったり立て替えたりした場合の費用の精算の仕方を学びます。金銭上のトラブルの背景についても検討し、トラブルを防止するための方策についても学びます。

事前に委任契約書乃至報酬契約書を起案してもらいます。業務上横領の懲戒事例を予め調べてくることが求められます。

 

加藤

説明責任、事件処理、弁護過誤

インフォームド・コンセントの視点から事件の見通しについての事前説明の重要性、受任者の報告義務の視点から、随時説明をすること及び結果報告することの重要性について学びます。

弁護過誤訴訟の実例についても学び、弁護過誤が生じやすい要因についても検討します。

弁護士業務に対する依頼者からの苦情の実例を踏まえて何が問題であったか、またどうしたらそのようなことが防げるかについてディスカッションもしつつ考えていきます。

事前に弁護過誤訴訟について事例を調査してきてもらいます。

 

北川

民事・刑事における弁護士の信義誠実義務

民事・刑事における弁護士の信義誠実義務について、その意義、依頼者の利益擁護と弁護士の公益的役割が衝突する場面の問題点等について検討します。

判例・懲戒例などの事例について、ディスカッション形式も取り入れて理解を深めます。

授業で扱えなかった判例・懲戒例を読んでおいてください。レポート提出もあります。

 

北川

民事・刑事における弁護士の真実義務

民事・刑事における弁護士の真実義務について、その意義、依頼者の利益擁護と弁護士の公益的役割が衝突する場面の問題点等について検討します。刑事弁護における倫理については、他の問題についても触れます。

判例・懲戒例などの事例について、ディスカッション形式も取り入れて理解を深めます。

授業で扱えなかった判例・懲戒例を読んでおいてください。レポート提出もあります。

10

 

北川

弁護士の公益的役割

 

弁護士のアクセス保障、弁護士過疎、広報活動、広告宣伝、公益活動(プロボノ)、弁護士会活動、政策形成への寄与などの検討を通じて、弁護士の公益的役割について考えます。

現実に、社会において、どのような活動がなされているか、どのような活動・役割が求められているのかを、事例を通じて考えます。

レポート提出があります。

11

 

北川

弁護士の非弁提携・営業活動

弁護士の法律事務独占、非弁提携問題、広告宣伝のあり方、営業活動・兼業の規制等を検討します。

判例・懲戒例などの事例を、ディスカッション形式も取りいれて検討します。

授業で扱えなかった判例・懲戒例を読んでおいてください。

12

 

北川

企業法務・弁護士法人・共同事務所の諸問題

企業内弁護士や顧問弁護士の倫理、弁護士の取締役・監査役就任に関する問題を検討するとともに、弁護士法人や共同事務所における諸問題を検討します。

具体的にどのような問題がありうるのかについて、ディスカッション形式も取りいれて検討します。

レポート提出があります。

13

 

北川

検察官の職務と法曹倫理

 

検察官の地位と役割、倫理、責任等について、現役検察官または検察官経験者の体験談を通して、検討します。

現役検察官または検察官経験者をゲストスピーカーに招いて、自己の体験をふまえた講義を通して、検察官の倫理について学びます。

ゲストスピーカーからの課題があれば、それを検討してください。

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加藤

裁判官の職務と法曹倫理

裁判官の職務遂行上求められる法曹倫理に関し学習します。

現職裁判官をゲストスピーカーに招いて、過去の事例をもとに教訓を学びます。

予習として憲法上の裁判官の地位役割を振り返ります。ゲストスピーカーから課題が出されることがあります。

15

 

加藤

まとめ:法曹倫理と研修

法曹倫理の基本理念を踏まえて、法曹倫理の内実を高めていくための制度的な枠組みについて考えます。

これまでの授業を踏まえて、法曹倫理の重要性を総括するとともに不祥事等を防止するための具体的な方策についてディスカッションします。

法曹倫理を高め守るためのシステム構築に関し、事前にレポートの提出が課されます。