Ⅰ.授業の概要
①講義科目名(単位数) |
労働法(集団紛争)(2単位) |
②担当者名 |
唐津 博 |
③科目の種類 |
展開・先端科目 |
④必須の有無 |
選択 |
⑤配当学年・学期 |
2・3年(既修者コース:1・2年)・秋学期 |
||
⑥授業の概要 |
労働契約関係の成立、展開及び終了プロセスにおいて、集団的な雇用管理や労働組合・使用者間の集団的労使関係で生じる、人事異動、人事考課、雇用差別・性差別、非典型雇用(パートタイマー、派遣労働者)、団体交渉、労働協約、不当労働行為、団体行動(組合活動・争議行為)に係る法的紛争を取り上げます。受講生に対して、予め提示した問題についての予習を前提とした発問を行い、論点を確認したうえで、当日のレクチャーを始めます。レクチャーの合間に適宜、講師と受講生、受講生間の質疑を織り交ぜて、双方向的、多方向的に法的問題の整理・分析、検討を行います。授業時間に十分議論できなかった問題については、適宜レポートを提出してもらいます。最後に、次回に扱う問題を示して、指定した教科書、参考書等で予習してもらいます。 |
||
⑦到達目標 |
毎回課題として示した問題に関するレクチャーと自由討議を通じて、雇用・労働関係の法的ルールに関する正確な知識を習得させ、労使紛争を法的観点から整理・分析する能力を養います。また、法的紛争を企業実務の観点からみた場合、労使関係に対する法規制にどのような意義があり、どのような限界があるのか、労使関係実務的な視点からする立法的規制のあり方についての複眼的視点を身につけさせます。 |
||
⑧成績評価の基準と方法 |
2回の筆記試験(中間試験・最終試験)と授業参加(発表・レポート提出)の内容によって、成績評価をします。なお、筆記試験の比重は6割、その他を4割とします。 |
||
⑨教科書 |
中窪裕也、野田進、和田肇『労働法の世界[第6版]』(有斐閣、2005年) |
||
⑩参考文献・参考資料 |
西谷敏『労働組合法』(有斐閣、1998年) 菅野和夫『新・雇用社会の法[補訂版]』(有斐閣、2004年) 同『労働法[第6版]』(弘文堂、2003年) |
||
⑪履修条件その他の事項 |
特にありません。 |
Ⅱ.授業計画
回 担当 |
①テーマ |
授業内の学修活動 |
④授業時間外の学修活動等 |
|
②ねらい・内容 |
③授業方法・工夫 |
|||
1 |
(オリエンテーション) |
・授業計画(内容・進め方)と予習の仕方を説明します。 ・労働法のアウトライン(規制対象、法領域の区分、法規制の概要、法理念等)を解説します。 |
労働法に関する受講生の知識の程度をチェックするために簡単なテストと個別的な質疑を行います。 |
指定した教科書、参考書等を利用して、毎回提示する課題について予習してください。 課題①配転、出向等の人事異動についての法的論点を整理すること。 |
2 |
人事異動の法ルール(1) |
・企業内人事異動(配転)と企業間人事異動(出向、転籍)に係る裁判例・学説上の議論を整理し、その法的問題点について検討します。 |
受講生に予習した事項を整理、発表してもらい、適宜、質疑を行います。 |
課題②昇進・昇格等に係る人事考課についての法的論点を整理すること。 |
3 |
人事異動の法ルール(2) |
・昇進・昇格、降格等の人事考課に対する法的規制の現状を踏まえて、その意義と可能性について、近年の成果主義的人事管理をめぐる議論を交えながら、検討します。 |
人事考課に対する法規制の可能性について、裁判例・学説上の議論を踏まえて、受講生間で討論してもらいます。 |
課題③雇用における差別の実情を把握して、さまざまな差別の法的論点を整理すること。 |
4 |
雇用における平等法ルール (1) |
・雇用における平等原則(憲法14条、労基法3条等)を踏まえて、信条、国籍、障害、年齢等を理由とする労働条件差別問題を整理し、その法的救済方法等について検討します。 |
受講生に予習した事項を整理、発表してもらい、適宜、質疑を行います。 |
課題④雇用における性差別についての法的救済の仕組み(救済制度)を整理すること。 |
5 |
雇用における平等法ルール(2) |
・雇用における性差別の諸相とそれに対する男女雇用機会均等法による法的救済の仕組みと裁判例・学説を整理し、性差別(セクシュアル・ハラスメントを含む)に対する法的救済制度の課題について検討します。 |
雇用における性差別としての昇進・昇格差別に対する法的救済方法について、受講生間で討論してもらいます。 |
課題⑤パートタイム労働者の労働条件について法的論点を整理すること。 |
6 |
非典型雇用と法ルール(1) |
・短時間労働者法(いわゆるパートタイム労働法)を素材として、パートタイム労働者の労働条件紛争に係る裁判例・学説を整理し、パートタイム労働者の労働条件保障のための法規制のあり方について検討します。 |
パートタイム労働という雇用・就労形態のメリット・デメリットを指摘してもらい、それに対する法的規制のあり方について、受講生間で討論してもらいます。 |
課題⑥派遣労働者の労働条件について法的論点を整理すること。 |
7 |
非典型雇用と法ルール(2) |
・最近の法改正を踏まえて、労働者派遣法の仕組みと特徴を整理して、派遣労働者の労働条件保障のための法規制のあり方(労働市場における労働力需給システムの整備の観点も含めて)について検討します。 |
派遣労働という雇用・就労形態のメリット・デメリットを指摘してもらい、それに対する法的規制のあり方について、受講生間で討論してもらいます。 |
これまでの講義内容を整理し、各自の疑問点(質問事項)をまとめること。 |
8 |
(中間試験) |
・受講生からの疑問点に対して説明します。 ・復習のための小テスト(中間試験)を行います。 |
受講生に疑問点を発表してもらいます。 |
課題⑦労働組合の結成・運営・活動についての法的論点を整理すること。 |
9 |
労働組合・団体交渉の法ルール(1) |
・小テストの結果についてコメントします。 ・労働組合の法的地位、内部統制、組織強制(ユニオン・ショップ)等に係る裁判例・学説を整理し、労働組合に対する法的規制のあり方について検討します。 |
労働組合の組織率の低落傾向に歯止めがかからない現状のもとで、労働組合の機能・役割、課題について、受講生間で討論してもらいます。 |
課題⑧労働組合との団体交渉についての法的論点を整理し、労使協議制との異同について調べること。 |
10 |
労働組合・団体交渉の法ルール(2) |
・団体交渉についての法的論点(不当労働行為制度に関連するものを含む)に係る裁判例・学説を整理し、併せて、労使協議制の意義と課題について検討します。 |
受講生に予習した事項を整理、発表してもらい、適宜、質疑を行います。 |
課題⑨労働協約による労働条件規制についての法的論点を整理すること。 |
11 |
労働協約の法ルール |
・労組法における労働協約制度を踏まえて、労働協約による労働条件の集団的規制(決定・変更)にさいして生じる紛争に係る裁判例・学説上の議論を整理し、その法的問題点について検討します。 |
労働協約の規範的効力論、一般的拘束力(拡張適用)論を確認したうえで、労働協約による労働条件の不利益変更の問題について、受講生間で討論してもらいます。
|
課題⑩不当労働行為制度についての法的論点を整理すること。 |
12 |
不当労働行為制度(1) |
・労組法における不当労働行為制度の内容と特徴を説明したうえで、不当労働行為の態様、不当労働行為の主体等に係る紛争や複数組合併存の場合等に生じる紛争に係る裁判例・学説上の議論を整理し、検討します。 |
受講生に予習した事項を整理、発表してもらい、適宜、質疑を行います。 |
課題⑪不当労働行為救済制度の仕組みを理解し、解釈論的、立法論的な課題を探ること。 |
13 |
不当労働行為制度(2) |
・不当労働行為に対する行政救済の担い手である労働委員会組織、労働委員会における救済手続き、労働委員会命令の内容と限界および不当労働行為の司法救済について説明し、救済の実効性確保の問題等について解釈論的、立法論的に検討します。 |
受講生に、愛知県労働委員会における行政救済の現状と問題点等について報告してもらい、受講生間で意見交換をしてもらいます。 |
課題⑫労働組合の団体行動(組合活動・争議行為)についての法的論点を整理すること。 |
14 |
団体行動(組合活動・争議行為)の法ルール |
・組合活動・争議行為に係る近年の主要な論点に係る裁判例・学説上の議論を整理し、検討します。 |
受講生に予習した事項を整理、発表してもらい、適宜、質疑を行います。 |
これまでの講義内容を整理し、全体討議のためのテーマ、論点をまとめること。 |
15 |
まとめ |
・受講生各自から提示されたテーマ、論点を整理し、これを素材として自由に討議します。 ・定期試験(最終試験)のねらい・内容等について説明します。 |
まず、グループ別に受講生間で討論してもらい、その討論状況を整理して全体討論を行い、テーマ、論点についての理解を深めてもらいます。 |
最終試験のために論点整理を行うこと。 |