南山大学

 

Ⅰ.授業の概要

①講義科目名(単位数)

家庭・少年問題と法(2単位)

②担当者名

多田 元

③科目の種類

展開・先端科目

④必須の有無

選択

⑤配当学年・学期

2・3年(既修者コース:1・2年)・春学期

⑥授業の概要

今日、子どもの人権にかかわる諸問題は重要な社会問題であると同時に法曹にとっても新しい活動分野になっています。

授業では少年非行に関する科学的理解、少年保護関係機関等の機能や少年の更生を援助するソーシャル・ケースワークに対する実践的な理解、子どもの虐待・いじめその他子どもの人権にかかわる現代的な諸問題を取り扱います。

授業の方法はゼミ形式による双方向性と多方向性をもつ対等に意見を交換しながら学びあうものとし、事例研究などを通じて、少年司法の担い手、あるいは子どもの人権にかかわる民事、刑事の各分野の司法の担い手としての法曹の役割に関する問題意識をもって主体的に考察する態度を養いたいと思います。

少年院、児童自立支援施設、少年刑務所、児童養護施設等関係施設視察や、児童精神医学、心理学等を含めて各種分野の専門家ゲストと交流し、人間関係の科学的理解の基礎的素養を養うための試みも行います。

⑦到達目標

展開・先端科目の一つとして、現代生起している子どもの虐待・非行・いじめなどの問題の社会的背景をも理解し、司法の果たすべき機能について考える基本的な素養を習得します。とりわけ、国連・児童の権利に関する条約および国連の子どもの権利委員会の勧告の趣旨に基づき、子どもの権利に関する法曹の役割などについて基本的で実践的な知識、技法などを理解することとします。

⑧成績評価の基準と方法

実務と理論の架橋という観点から、受講生が実務に従事する際に必要な専門的基礎的知識を修得できたか否かを判定する単位認定試験を実施します。成績評価については、その修得のレベルを明らかにすることにより、受講生自身が達成度を自己評価し、自ら学ぶモチベーションを高めることを目的とし、合格をA,B,C の3段階評価とします。

⑨教科書

服部朗他『ハンドブック 少年法』(明石書店、2000年)

澤登俊雄『少年法入門』(有斐閣ブックス、1994年)など

⑩参考文献・参考資料

重大少年事件の実証的研究(家庭裁判所調査官研修所監修)

日弁連編『検証・少年犯罪』(日本評論社)

加藤幸雄ほか『司法福祉の焦点』(ミネルヴァ書房、1994年)など

⑪履修条件その他の事項

特になし

 

Ⅱ.授業計画

担当

①テーマ

授業内の学修活動

④授業時間外の学修活動等

②ねらい・内容

③授業方法・工夫

はじめに

 

授業計画の説明をします。

演習教材、参考文献などの紹介、施設見学などに関する受講者の希望などについても話し合います。

 

少年法の基礎知識①

少年法の特色・基本理念、少年非行の推移と現状の概要を学びます。

講義と意見交換。

演習教材の予習

少年法の基礎知識②

少年審判手続の概要、少年審判の司法的機能とケースワーク的機能のあり方について学びます。

講義と意見交換。

簡単なケース研究も含めます。

家庭裁判所見学、調査官のとの懇談など。

少年法の基礎知識③

少年審判と附添人(弁護士)の役割について学びます。

ケース研究

演習教材の予習

少年法の基礎知識④

凶悪事件の非行原因、少年の生育史における被虐待体験など暴力の連鎖、家庭の機能

などについて学びます。

被虐待体験をもつ少年のケース研究。

演習教材の予習

少年法の基礎知識⑤

少年法の保護処分と児童福祉の関係について学びます。

講義と年少少年のケース研究

児童自立支援施設見学または児童相談所専門職員との懇談など

少年法の基礎知識⑥

少年法の保護処分と刑事処分との関係について学びます。

少年の刑事事件のケース研究

演習教材の予習

少年法の基礎知識⑦

少年審判における非行事実の認定手続の運用、証拠法に関する判例などについて学びます。

否認事件のケース研究

演習教材の予習

少年法の基礎知識⑧

同上

同上

前回のケース研究をふまえて事実認定の問題点についてレポート提出

10

少年法の運用上の問題

少年非行と犯罪被害者の権利保障との関係について考察します。

リストラティブ・ジャスティス(修復的司法)の理念について資料に基づいて意見交換をします。

演習教材の予習

11

同上

同上

受講者のレポートの講評と意見交換

前回の討議をふまえて事前にレポート提出。専門家などへのインタビューなど。

12

子どもの人権にかかわる問題

非行以外のいじめ、虐待、体罰その他の子どもの人権にかかわる問題について学びます。

子どもの人権相談事例を素材に意見交換をします。

相談事例に関する資料を予習。

13

同上

子どもの人権にかかわる問題に関する相談活動、面接技法の基礎知識などを学びます。

専門的なカウンセラーを招いて講義と意見交換をします。

相談活動に関する資料を予習。

14

少年の更生援助や児童福祉にかかわる人々

少年の更生の援助や児童福祉にかかわる各職種や民間の社会資源に関する基礎知識と、それらとの連携の方法などについて学びます。

専門職を招いて講義と意見交換をします。

これまでの授業をふまえての疑問や質問を事前に提出。

15

まとめ

子どもの人権・少年非行などの問題と法曹の役割などについて考察します。

小論文の講評と意見交換。

これまでの授業を通して考えたことを小論文にまとめ事前に提出。