南山大学

 
指定
期間
春学期
単位
年次
2〜4
担当者
藤本 武
他の科目との関連
他学科履修
副題 民族植物学の世界
授業概要 民族植物学あるいはエスノボタニーという名前をきいてピンとくる学生は多くないかもしれない。民族植物学とは、狭義には西洋の植物分類学の対概念として、非西洋社会の人びとが植物をいかに分類し利用を行っているかを研究する学問である。しかし、より広義には、人類の諸文化を植物とのかかわりを手がかりに幅広く考察していく学問分野でもある。ここでは後者の立場にたって、民族植物学の醍醐味を伝えていきたい。
学修目標 巷には食物に含まれる栄養成分や効用などに関する断片的な情報があふれている。しかしそもそもそうした食物はどのように成立してきたのかといった議論は少ない。本講義でとりあげる題材は、下記の授業計画にも示されているように、私たちの日常に身近なものばかりである。それらについて関心をいっそう深めるとともに、民族植物学の考え方を体得していってほしい。
授業計画 およそ以下の内容を予定している。
まず人類進化史における植物利用の変遷から始める。具体的には果物や木の実、野生のイモなどの利用をとりあげる(二回)。ついで植物のドメスティケーションという人類史上重要なイベントを説明し、世界の主要な主食作物をみていく。すなわちイモ類(オセアニア、南米)、コメ(アジア)、ムギ類(西アジア〜ヨーロッパ)、雑穀(アフリカ)などについて地域の食文化と関連させながらみていく(五〜六回)。酒類についてもその中でとりあげる。また主食作物ではないが、マメ類についてもとりあげたい(一〜二回)。
これらはヨーロッパ人の大航海時代以前にすでにほぼ築かれていたものだが、その後、大きく変容しているばあいもある。たとえば、現在アフリカでは、在来の雑穀類よりアメリカ大陸からもたらされたトウモロコシとキャッサバが重要となっている。こうしたグローバル化に伴う変化の例として、茶をとりあげる(二回)。食べるお茶から飲むお茶へ、さらに緑茶から紅茶へという、ダイナミックな変化がおこってきている。
人類と植物との関わりは食用や飲用に限られるわけではない。そのため、それら以外の利用としてタバコや繊維の利用もとりあげる予定である(二回)。
最後に近年民族植物学などの領域で議論となりつつある、植物の遺伝子資源は誰のものか、といった話題や今後の課題についても述べてみたい(一回)。
いずれも、映像・画像資料をできるだけ用いて講義していく予定である。
評価方法 学期末に実施する試験により評価する予定である。その方法については講義時に説明する。
テキスト 特に指定しない。講義時に内容に関連した文献を適宜紹介していく。
その他 昨年度の反省をふまえ、今年度は授業の最後に質問や感想を記してもらう時間をできるだけ設け、学生の積極的な関与を引き出すことを試みるつもりである。