南山大学

 
指定
期間
秋学期
単位
年次
3・4
担当者
川島 正樹
他の科目との関連 「歴史研究の基礎(アメリカ)」を受講しておくことを強く希望する
他学科履修
副題 奴隷制と「人種」差別
授業概要  植民地時代初期の、後のアメリカ合衆国となる英領北米植民地の歴史を、奴隷制の成立過程に焦点を当てて、考察します。具体的にはアメリカの大学の300番台ないし400番台の学部授業で教科書として使用されるシリーズ本の一つである有名な研究者の論文のアンソロジーをテキストとして、購読と内容説明の講義とを合わせながら、授業を進めます。
学修目標  この授業では、今日わが国ともっとも関係が深い国の一つとなっており、近現代世界史においてもっとも中心的な役割を演じてきた国の一つでもあるアメリカ合衆国の歴史に関する概括的知識をもとに、特に「人種」や富の分配をめぐる問題を中心軸にすえながら、より深い理解を目指します。より具体的には、奴隷制および大西洋貿易システムと英領北米植民地および初期共和国の発展の関係、市民権運動(公民権運動とも言われる)へと至る奴隷制解体以降の「人種」をめぐる問題、北部を含めた大都市中心部の貧困と不平等の問題などのテーマを中心に授業を構成します。この授業では特に、アメリカ合衆国の繁栄の基礎を形成した植民地時代に関して、奴隷制と「人種」主義(racism)の相互関係に焦点を絞ります。アメリカ合衆国は現在においても「人種」をめぐる未解決の問題に苦悩しています。その根源を探るのがこの授業の真の目的です。
授業計画  イギリス社会に既に存在したと思われる根強い「人種」偏見のゆえに、アフリカ人だけを奴隷とする制度が13植民地、とりわけ南部に確立されたのか。それとも経済的な理由によってアフリカ人奴隷制が同地方に導入されたために、その後に「人種」差別体制がつくられていったのか。この解き難い問題に挑んだ著名な歴史家たちの主要論文を読みながら、自分自身の解答を模索してゆきたいと思います。
 授業で取り上げるのは、下記の「授業概要」に示した1〜5の研究者たちの論文です。「はじめに」と「おわりに」を除く各章を2回ずつの授業を使って説明します。受講生はできるだけ予め目を通し、分からない箇所を質問できるように準備しておくことが望まれます。なお( )内に示したのは論文の本文のページ数です。最終的に通算100ページほどの英文を集中的に読むことになりますが、テキストはアメリカ合衆国の学部3・4年次生用に編集されたものです。多くの学生諸君にチャレンジしてほしいと思います。
授業概要
はじめに♢♢社会的構築物としての「人種」(奴隷制と「人種」差別のどちらが先か?)
1.Ira Berlin(黒人奴隷と白人自由人の中間に位置した「クレオール」の歴史的役割)(30pp)
2.Margaret Washington(西アフリカの諸王国の盛衰と奴隷狩り、「近代」化の意味)(14pp)
3.A. Leon Higginbotham, Jr.(ヴァージニアの裁判記録に見る奴隷制確立への諸段階)(10pp)
4.Winthrop D. Jordan(13植民地で「混血児」が社会的に存在しなかった理由)(12pp)
5.Edmund S. Morgan(「自由」と「不自由」が同時期展開した13植民地と初期共和国の歴史)(19pp)
おわりに♢♢「近代」とは何だったのか?
評価方法  「はじめに」と「おわりに」を除く、各章を終えるごとに合計5本提出する「個別レポート」(各章A4版1枚以内)、および最後に提出する授業全体の「まとめレポート」(A4版3枚以内)の評点の合計値。
テキスト  Edward Countryman, How Did Amerigan Slavery Begin?(Bedford/St. Martin's, 1999)(ISBN:0-312-18261-9)
その他