南山大学

 
指定
期間
春学期
単位
年次
1・2
担当者
岩野 一郎
講義題目 アメリカ連邦制度の成立と展開
開講キャンパス
授業概要  アメリカ合衆国の政体の特徴は連邦制度にある。合衆国憲法制定時に採用されたこの制度は、その後のアメリカ政治の枠組みを決定したが、連邦政府成立以降の歴史の流れにあって、州権に対し連邦権限が拡大して行く傾向が見られた。本講義においては、植民地時代に遡り、連邦制度の起源を探り、憲法の成立を経て、その後主として「マーシャル・コート」の判例を眺めて、連邦権限の拡大を跡付け、さらには南北戦争に至る過程での連邦制度の展開を考察し、南北戦争後の分裂した国家の再統一においても、司法部の果たした役割を検証する。
学修目標  アメリカ合衆国の構成単位である州はstateであり、合衆国は合州国と書くべきとする考え方も見られる。本講義では、stateが本来の意味である「国家」の側面を持ちながら、連邦制度を採用することによって「国家連合」から「連邦国家」へと移行したことにより、中央集権国家とは如何に異なった政体となったのかを、歴史的事例を挙げながら考察する。連邦制度の特質を十分に理解することが目標となる
授業計画  アメリカ合衆国政府が発足する以前から、既に各植民地政府が樹立されており、イギリス本国からの独立に際して、独立した13の植民地が如何なる政体を取るのかは、重要な問題であった。「独立宣言」を熟読することによって、先ずどのような政体が想定されていたのかを検証する。次いで、「危機の時代」をまとめていた「連合規約」を検討し、何故「憲法」制定が必要であったかを「建国の父祖達」の書き残したものを読みながら検証する。
 1787年の「憲法制定会議」によって起草された「合衆国憲法」によって、現在につながる「連邦制度」が確立されたが、この草案を巡るフェデラリストとアンタイフェデラリストの対立を眺め、『ザ・フェデラリスト』の果たした役割を検討する。次いでワシントン政権誕生以降のフェデラリストが連邦権限拡大に用いた合衆国憲法第1条の「州際通商条項」(8節3項)および「必要適切条項」(8節18項)、それに「国家最高法規」(第6条)の果たした役割を検討する。
 19世紀に入り、「マーシャル・コート」は連邦権限の拡大に重要な役割を果たしたが、それらをいくつかの判例を眺めながら検証する。さらには、奴隷問題が重要なイッシューとなり、1860年のリンカンの大統領当選により、南部11州は「分離・独立」するが、この理論を眺めた後、南北戦争後の重要な最高裁判決であるテキサス対ホワイト事件を読み、合衆国は不可分の国家であることを理解して、本講義を終えることとしたい。
評価方法  出席および討論への参加・貢献の度合い、それに期末に課すレポートで成績評価を行いたい。
テキスト  特に一冊のテキストは指定しないが、上記の記述から見ても分かるように、種々の原典資料をプリントして配布する。原典は英語ではあるが、アメリカ学会編訳『原典アメリカ史』全7巻(東京:岩波書店,1950〜1982)のとりわけ1・2・3巻には、原点の解説および日本語訳がまとめられており、重要な参考文献である。
その他