南山大学

 

Ⅰ.授業の概要

①講義科目名(単位数)

国際人道法(2単位)

②担当者名

岡田 泉

③科目の種類

展開・先端科目

④必須の有無

選択

⑤配当学年・学期

2・3年(既修者コース:1・2年)・春学期

⑥授業の概要

現代世界で多発する武力紛争(国際戦争および内戦)に対して国際法はさまざまな角度から規制を加えています。国際人道法は、戦時国際法とよばれていた時代から、戦争の惨害を軽減するための法規則を蓄積してきました。講義では、主として「国際人道法の適用」、「戦争手段の規制」、「武力紛争犠牲者の保護」、および「履行確保の手段」という4つの分野の比較的新しい問題について、条約規則や国際機構の決議、裁判事例などを手がかりにしながら議論します。

①簡潔な説明を含む教材(配付)を事前に読んだ上で授業に臨みます。授業では、これを前提にして、質問応答(双方向)形式で理解度を確認します。②教材に掲載された応用的設問(主として具体的な事例問題)に対して、実際に起きた紛争事例の要約や参考文献を参照して、レポートを作成します。レポート作成にあたっては、主に論理構成力を重視します。何人かが教室でレポートにもとづき発表し議論します(ケースメソッド)。この方法は、理論的考察を深化させるというよりは、むしろこの講義分野での弁論能力の陶冶を主な目的とします。

⑦到達目標

展開・先端科目分野のなかで、国際的視野に立って国際社会の共通問題につき法律的な議論ができる能力を養成します。そのため、(a)現代国際法の重要課題となっている「武力紛争における人道性の確保ないし人権の尊重」の問題状況について正確に理解します。(b)とりわけ1970年代の「国際人道法の再確認と発展」の成果である第1追加議定書の評価と、冷戦後の今日浮上している諸課題の把握をめざします。

⑧成績評価の基準と方法

中間試験(10%)、授業時の発言(20%)および期末試験(70%)。以上を総合評価します。

⑨教科書

テキストに代わる教材を配付します。

⑩参考文献・

参考資料

松井芳郎ほか共著『国際法[第4版]』(有斐閣、2002年)

藤田久一『国際人道法[新版増補]』(有信堂高文社、2000年)

竹本正幸『国際人道法の再確認と発展』(東信堂、1996年)

田畑、竹本、松井〔編集〕『判例国際法[第2版]』(東信堂、2006年)

各種の条約集(東信堂・有斐閣・三省堂)

⑪履修条件その他の事項

若干の授業計画の変更はあり得ます。

 

Ⅱ.授業計画 (以下、「国際人道法」は単に「人道法」といいます。)

担当

①テーマ

授業内の学修活動

④授業時間外の学修活動等

②ねらい・内容

③授業方法・工夫

国際法の体系と人道法の基本枠組み

国際法の体系構造を把握した上で、法源(ハーグ条約とジュネーヴ条約)、および現代戦への対応としての人道法の発展を理解します。

質問応答方式

 

平等適用と国連軍(人道法の適用問題(1))

制裁を加える側と制裁を受ける側の間で、法の平等適用が認められるかどうかの問題を考えます。国際軍事裁判所判決、第1追加議定書、国連軍モデル協定案、国連要員等安全条約、国連事務総長布告について検討します。

質問応答方式

 

内戦、民族自決闘争と人道法(人道法の適用問題(2))

内戦、民族自決闘争に人道法がどのように適用されるかを把握します。1949年ジュネーブ諸条約、第1、第2追加議定書を検討します。

質問応答方式

 

事例問題「湾岸戦争に人道法は適用可能か」

 

「国連安保理決議にもとづく武力行使の場合に、人道法はどの範囲で適用可能か」という設問について議論します。これまでの授業(とくに第2回の)授業内容をふまえて考えを進める必要があります。

設問にもとづく議論方式

 

大量破壊兵器の使用規制〜核兵器(戦争手段の規制(1))

東京地裁原爆判決、ICJ核兵器使用の合法性事件の勧告的意見を検討します。

質問応答方式

 

大量破壊兵器の使用規制〜生物・化学兵器(戦争手段の規制(2))

人道法アプローチと軍縮アプローチを比較し、人道法アプローチの限界について議論します。地雷の規制も視野に入れます。

質問応答方式

 

事例問題「無差別攻撃とはなにか」

 

原爆判決、第1追加議定書、ICC規程と同規程の解釈宣言を参考に、無差別攻撃禁止規定の適用範囲について議論します。

事例についての議論方式

 

戦闘員と文民の区別(武力紛争犠牲者の保護(1))

ハーグ条約、ジュネーヴ条約、第1追加議定書を検討します。議定書未批准国の態度も視野に入れます。

質問応答方式

 

捕虜と文民の保護(武力紛争犠牲者の保護(2))

ジュネーヴ条約と第1追加議定書の適用基準について検討します。最近の「対テロ戦争」を視野に入れ、人道法だけでなく、「国際人権法」の適用も議論します。

質問応答方式

 

10

人道法の履行確保の手段(履行確保の手段(1))

さまざまな手段を比較検討します。

 

質問応答方式

 

11

事例問題「復仇は人道法の適用を阻害するか」

 

 

人道法の規定と、第2次世界大戦時の戦争犯罪裁判事例、および人道法の禁止規定に対する留保を対比させて検討し、議論します

議論方式

 

 

12

刑事制裁としての戦争犯罪裁判(履行確保の(2))

国内裁判による人道法違反の刑事処罰の方法について検討します。

質問応答方式

 

13

ICCが人道法の将来において果たす役割:バラ色か、それとも混乱の元か?

ICCの仕組み、とくに管轄権に関する補完性原則について検討します。ICCに対する反対国の態度を視野に入れ、また日本のとるべき対応も議論します。

質問応答方式

 

14

戦後補償の問題

 

最近の日本の裁判所の事件(捕虜・抑留者訴訟など)をとりあげ、武力紛争犠牲者の損害賠償請求の認容の可否について議論します。

積極・消極両立場に分かれた討論方式

 

15

人道法の可能性と限界

人道法の諸問題について残された課題を整理して提示し、将来を展望します。軍縮、軍備規制、国際人権法も視野に入れて、考えます。

意見発表と議論。