Ⅰ.授業の概要
①講義科目名(単位数) |
環境法(2単位) |
②担当者名 |
伊藤
高義 丸山
雅夫 岡田
正則 |
③科目の種類 |
展開・先端科目 |
④必須の有無 |
選択 |
⑤配当学年・学期 |
2・3年(既修者コース:1・2年)・秋学期 |
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⑥授業の概要 |
(概要)環境問題(公害問題を含む)の法的解決の可能性およびその具体策について、民法、刑法、行政法からアプローチするオムニバス方式の講義です。公害・環境裁判、公害対策・環境保護法制の検討を中心として、現代社会が直面する環境問題への法的対応の可能性と限界を解明するとともに、「環境権」といった考え方の是非にも言及します。 多くの具体的事例や論文をも素材としたソクラテス・メソッドによることから、受講生の積極的関与が必要となります。 (オムニバス形式) (伊藤兼担教授)不法行為の基礎的な知識を前提として、公害、環境の侵害に対する民事救済制度(差止め、損害賠償)の要件・効果についての裁判例の展開を、学説を含めて基本的な状況を把握します。 (丸山教授)公害問題に対する古典的な法制度・裁判制度の限界を確認したうえで、新たな法理論による「公害の克服」過程と残された問題を確認します。環境の積極的保護という観点から、環境裁判の現状と環境保護法制を検討したうえで、法的対応の「後追い的性格」を明らかにし、現代的問題に対する法の「一般的限界」、さらに主権を超えた「地球環境」の保護について、主権を前提とする法の一般的限界をも確認します。 (岡田教授)都市計画と廃棄物処理事件を例として、環境法制の意義と問題点および今後の改善方向を考察します。 |
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⑦到達目標 |
民事法・刑事法・行政法の総合的な理解に基づいて、環境事件の法的な主張を構成したり、環境法の諸制度を活用したり、環境問題の法的な解決を展望できるようにすることにあります。 |
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⑧成績評価の基準と方法 |
丸山教授を本科目の成績評価の責任者とします。成績は、毎回の講義におけるパフォーマンスと、民法、刑法、行政法の各分野における各1回のレポート結果について、合議のうえで総合的に評価して評点を決定します。 |
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⑨教科書 |
町野朔編『環境刑法の総合的研究』(信山社、2003年) |
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⑩参考文献・参考資料 |
淡路剛久・大塚直・北村喜宣『環境法判例百選』(有斐閣、2004年)。その他、必要に応じて、参照すべき論文等を指示します。 |
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⑪履修条件その他の事項 |
特にありませんが、刑法Ⅱを履修していることが望ましい。 |
Ⅱ.授業計画
回 担当 |
①テーマ |
授業内の学修活動 |
④授業時間外の学修活動等 |
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②ねらい・内容 |
③授業方法・工夫 |
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1 伊藤 |
民事救済制度概観 |
基本的な設例をもとに、民事救済上の要件(故意・過失、違法性、因果関係、共同不法行為)および効果(金銭賠償、原状回復・差止め)に関して生ずる解釈上の基本的な問題点を把握します。 |
学説の展開を含めた民法上の基本知識を確認します。 |
左記③の設例(事前配布)に基づき、民法による救済の要件・効果上の問題点を整理する。 |
2 伊藤 |
受忍限度論 |
右④欄記載の判決を素材とし、環境権論も含めた公害訴訟の保護法益と判断要素を検討します。 |
過失ないし違法性一元論、新受忍限度論の位置づけと、これに対する裁判実務の取扱いに目を向けます。 |
大阪国際空港訴訟騒音訴訟、国立景観訴訟の各解説(事前配布)を読む。 |
3 伊藤 |
因果関係の認定 |
東京大気汚染訴訟判決を素材に、関連判決の状況も把握しながら、公害訴訟における因果関係の認定上の問題を把握します。 |
証明負担軽減の視点からまとめます。 |
判決該当部分と、関連判決の判例百選解説から概要を把握する。 |
4 伊藤 |
共同不法行為 |
四日市公害訴訟判決とその後の公害訴訟判決における共同不法行為論の展開を把握します。 |
四日市大気汚染訴訟とその後の都市複合汚染事例を対比します。 |
配布解説を読んで問題の所在と学説の概要を把握する。 |
5 伊藤 |
差止め |
名古屋南部公害訴訟判決を素材に、関連判決の状況も把握しながら、差止め要件に関する判例・学説の状況を把握します。 |
抽象的差止請求の可否を中心に検討します。 |
判決該当部分を読み、差止めの方法について検討しておく。 |
6 丸山 |
公害犯罪処罰法とその運用実態 |
公害犯罪への実効的な対応を期待されて成立した公害犯罪処罰法について、その画期的な内容を確認したうえで、ほとんど発動されることなしに象徴的立法に終わってしまった背景と限定解釈を確立した最高裁判例を分析・検討します。 |
解説型の講義形式ではなく、基礎的な知識があることを前提として、頻繁な質問とそれへの対応という双方向型の講義とします。 |
公害犯罪処罰法の立法過程と内容を確認するとともに、最高裁判例を読み込んでおくことが必要とされます。 |
7 丸山 |
行政取締法規の犯罪構成要件とその運用実態 |
直罰主義、横出し基準・上乗せ基準などによる効果的な規制を期待しうる構造・内容の各種行政取締法規について、消極的な運用実態を確認したうえで、刑事的制裁の一般的限界と具体的要因を分析・検討します。 |
7と同様の方法で行います。 |
大気汚染防止法および水質汚濁防止法の罰則の内容を知っていることが前提となります。 |
8 丸山 |
過失論における危惧感説とその問題性 |
公害・薬害問題を契機として主張された危惧感説(不安感説)について、その内容と射程を確認し、それにもとづく裁判例を検討したうえで、それが一般的な過失論として定着しなかった要因を解明します。 |
7と同様の方法で行います。 |
過失(犯)の本質をめぐる学説の状況を確認しておくとともに、危惧感説を前提とする判例を読み込んでおくことが必要とされます。 |
9 丸山 |
企業組織体責任論と管理・監督過失 |
公害・環境犯罪の企業犯罪的側面に着目して、企業トップの責任を追及する理論として主張された企業組織体責任論の内容を検討するとともに、従来の過失論における管理・監督過失の位置づけ、対応可能性について検討します。 |
7と同様の方法で行います。 |
企業組織体責任論および管理・監督過失の考え方を確認しておくとともに、管理・監督過失に関する判例を読み込んでおくことが必要とされます。 |
10 丸山 |
「環境刑法」の成立可能性 |
「環境権」を憲法上の権利として明示するドイツ法制を手がかりとして、ドイツ環境犯罪対策法(環境刑法)の内容を検討するとともに、刑法の「最終手段性」をも考慮しながら、刑法典による積極的な環境保護の可能性と限界を考えます。 |
7と同様の方法で行います。 |
ドイツ環境法制についての確認が必要とされます。 |
11 岡田 |
環境行政法総論 |
廃棄物処理施設の許可事件を題材として、行政法総論の論点が環境事件の中でどのように現れてくるのかを検討します。 |
適宜ディスカッションを入れながら、設問に答えることで、行政法総論の復習を行います。 |
資料に掲載されている設例と資料を読み、設問を検討してくること。 |
12 岡田 |
環境問題にかかわる行政組織と行政上の環境保護法制 |
環境省その他の国の組織および自治体の組織の所掌事務について概観した後、環境基本計画、環境基準、環境アセスメント、公害防止計画など枠組み的な法制度を解説します。 |
法制度のフローチャートや図表などの基礎資料を用いて、基本的知識を確かめます。 |
廃棄物処理場事件をふまえて、実際の適用関係を確かめながら、基本法令を概観してくること。 |
13 岡田 |
環境保護のための行政上の手段 |
行政上の諸規制(許可、届出、勧告、命令、制裁、その他)、負担の賦課、助成などの法的・非法的な環境保護手段、および行政争訟を通じた解決を解説し、これらにおける法的論点を検討します。 |
規制手段・実効性確保手段を分担して、各々の有効性と限界等について討論を進めます。 |
長期的・広域的な環境保護手段として、立法・基準設定・計画などの策定方法を知っておくこと。 |
14 岡田 |
環境行政救済法 |
民事法・刑事法による環境問題ヘの対応と比較しながら、行政訴訟・国賠訴訟等の行政的救済方法の意義と限界を検討します。 |
実際の事件について、どのような争訟が可能であるのかを、ディスカッションによって検討します。 |
資料掲載の事例を検討してくること。 |
15 岡田 |
地方分権と環境保護 |
地方自治体による条例、協定、指導要綱(行政指導)、計画策定と住民参加、公害紛争処理機関の活動等を通じた環境問題の解決を解説し、これらにおける法的論点を検討します。 |
立法技術・計画策定技術の概略を示します。 |
上記事案について、分担した論点に関する準備書面を作成すること。 |