南山大学

 
指定
選必
期間
春学期
秋学期
単位
年次
2〜4
担当者
高橋 広次
他の科目との関連
履修対象学科
副題 自然法論における人間の尊厳
講義内容  本授業では、「人間の尊厳」を伝統的自然法論で理解される意味において説明する。その出発点は、リベラリズムのように、いきなり、自由・平等といった観念的な理想を掲げるのでなく、実際の人間本性が有する倫理的傾向の観察に基づく。この意味で、本学の建学精神が根ざすアリストテレスとトマス・アクィナスに基づいて陶冶されてきた自然法論は、自然本性衰退あるいは転倒の傾向を示す現代社会にあって今なお顧みられるべき意義を有している。本授業は、「人間いかに生きるべきか」に関する哲学思想と、それを可能にする様々な具体的制度条件について説明する。
学修目標  基本的人権の尊重は、近世における絶対王政や教会の圧制に対抗した啓蒙期自然法論者や自由主義者の活躍によってはじめてもたらされたと言われるが、それでは、それ以前に「人間は尊い」という意識は、存在しなかったのであろうか。あるいは、表現こそ違え、東洋にこれに類した意識はなかったであろうか。もし、人間の尊厳が人類の普遍的な意識であるならば、それは何に基づいているのだろうか。近代的な「個人の尊重」とは異なった文脈から、伝統的自然法論に即した「人間の尊厳」の理解に努める。
講義計画  授業の流れは以下の通り。
1.  序論 「人間は万物の霊長である」ことの正しい意味
2〜3.自然法思想とそれに反対する思想の争いについて
4〜5.自然法はどのような根拠に基づいて妥当するのだろうか?
6.  自然法はどのようにして認識されるであろうか?
7.  アリストテレス・トマスの著名な正義論とはいかなる主張だろうか?
8.  自然法論は婚姻制度をどのように捉えているのだろうか?
9.  自然法論は私有財産制をどのように捉えているのだろうか?
10.  自然法論は国家の起源をどのように説明するのだろうか?
11.  国家の追求する基本的諸目的について
12.  国家の基本原理とされる補完性原理と共同善原理の重要さについて
13.  道徳に反した国法に対し人々は服従の義務を負うのだろうか?
14.  国際人道法の理念としての「人間の尊厳」について
15.  定期試験
評価方法  成績の評価に際しては、中間期を見計らって実施する小テストと、定期試験の成績結果、及び、毎回の授業への出席を重視し、総合的に判断する。
テキスト  予め講義全体の内容を示す詳細なレジュメを配布する。なお、参考書として主要なものを最初の講義時に掲げる。
その他