南山大学

 
指定
期間
秋学期
単位
年次
3・4
担当者
川島 正樹
他の科目との関連 「歴史研究の基礎(アメリカ)」を受講しておくことを強く希望する
他学科履修
副題 市民権運動の時代のアメリカ(America in the Civil Rights Era)
講義内容  この授業では、今日わが国ともっとも関係が深い国の一つとなっており、近現代世界史においてもっとも中心的な役割を演じてきた国の一つでもあるアメリカ合衆国の歴史に関する概括的知識をもとに、特に「人種」や富の分配をめぐる問題を中心軸にすえながら、より深い理解を目指します。より具体的には、奴隷制および大西洋貿易システムと英領北米植民地および初期共和国の発展の関係、市民権運動(公民権運動とも言われる)へと至る奴隷制解体以降の「人種」をめぐる問題、北部を含めた大都市中心部の貧困と不平等の問題などのテーマを中心に授業を構成します。この授業では、1950年代後半から60年代にかけて高揚した市民権運動(the Civil Rights Movement、公民権運動とも訳される)の歴史的意義を、南部での運動にとどまらず60年代後半から70年代にかけての北部での運動まで含めて、検討します。なおこの授業は留学生別科の学生も受講し、講義は基本的に英語で行われますが、日本語の説明も適宜加えます。
学修目標  現在のアメリカ合衆国は他国の「非民主主義的行為」に対して軍事制裁をも辞さない、「自由」や「機会均等」といった普遍的価値観を重視する国と思われています。ですから、第二次大戦後も長らく国内の南部に少し前の南アフリカ共和国のアパルトヘイトとあまり変らない人種差別体制を持つ国だったという事実に関しては、キング牧師の「私には夢がある」演説を高校の英語の時間に学んだ学生諸君でさえ、にわかには信じ難いちがいありません。この授業では適宜ビデオ教材も利用しながら、市民権運動の前半局面(第二次世界大戦後から1965年まで)と、「自由市場」の名の下で実質的に「人種」で隔離された居住区に由来する北部の都市ゲットーのより困難な問題への取り組みに運動が拡大する第二局面を含む市民権運動の全史を概観し、今日のアメリカ社会の価値観や諸制度の確立に大きく寄与した「市民権運動時代のアメリカ」の歴史的意義の確定を目指す授業とします。受講生には質疑応答など、積極的な参加が要請されます。
講義計画  具体的には次のような要領で授業を進める予定です(原則的に各項で1回の授業を充当)。途中で小テストを3回、ビデオ鑑賞を数回行う。
1.はじめに:ジムクロー体制の起源と動揺の文脈/2.「ブラウン」判決とモントゴメリー・バス・ボイコット/3.リトルロック事件/4. 学生達の決起/5. オールバニー闘争/6.バーミングハム闘争/7.ミシシッピ運動/8. 法の下での平等の達成/9.シカゴ自由運動/10.バス通学論争/11.「アンダークラス」の苦境/12.むすびに:南部の北部化
評価方法  授業中に3回行う小テスト(必ず2回以上受験すること)および期末「まとめレポート」(日本語または英語で、日本語の場合の分量が4000字程度)の評点の合計値とします。またビデオの感想文等を適宜加点します。
テキスト  テキストではなく参考書として次を挙げます。川島正樹編『アメリカニズムと「人種」』(名古屋大学出版会、2005年)。
その他