南山大学

 
指定
期間
通年
単位
年次
2
担当者
伊藤 高義
他の科目との関連
他学科履修 不可
副題 民法判例を通して民法の基礎を学ぶ
講義内容 生きた法を知るには判例を読むことが欠かせません。判例は、事件の争点を適格に把握してはじめて、形成された判例法の把握が可能になります。当該判決の関連判決や学説を調べ、事案に即した議論をすることを通して、民法の基本的な知識と思考法(リーガル・マインド)が身についてゆきます。テーマと素材は、主として『民法判例百選I総則・物権〔第五版〕』・『民法判例百選II債権〔第五版〕』(有斐閣刊)及び最高裁の新判例から選択しますが、重要な下級審裁判例からも選択します。
学修目標 次の5点を目標として、3年次演習に進む基盤を作ることを目指します。
(1) 事件の争点(論点)を見つけ出すことから始めます。
(2) 文献を探す(学説・判例の動向と、問題の状況を把握する)。
(3) 相手の主張や考えを聞く(異なった意見や価値観は、社会に存する権利利益の反映ともいえます)。
(4) 法律的根拠を示し、専門用語を用いて議論する(反論可能性のある議論も大切です)。
(5) 生き生きした文章を書く〜論点・法的根拠・結論の流れ(起承転結)を明解に書く。
講義計画 (1) 初回ゼミ時に各回のテーマを示し、春学期分の報告者を各回2名決めます。
  各テーマと順序は次の通りです(予定)。第1回演習時にテーマ等の希望もきいて確定します。
 (春学期)
  (1)共同相続不動産の賃料債権の遺産分割前の帰属(最判平成17-9-8民集59巻7号1931頁)
  (2)動機の錯誤〔最判昭和32年12月19日民法判例百選I〔17〕事件)
  (3)空クレジット立替金支払債務への保証人の責任(最判平成14-7-11判時1805号56頁)
  (4)民94条2項類推適用(最判昭和45-9-22百選I〔22〕)
  (5)民94(2)、110の法意による第三者保護(拡張適用)〜最判昭和45-11-19百選I〔23〕
  (6)民94(2)類推適用否定例(最判平成15-6-13判時1831号99頁)
  (7)小テスト(物権変動に向けての基礎的設問と法的思考の文章を指導)
  (8)法律行為の取消と登記の要否(大判昭和17-9-30〜百選I〔52〕)
  (9)詐欺による取消と善意第三者の登記の要否(最判昭和年49-9-26百選I〔19〕)
  (10)時効取得と登記の要否(最判昭和46-11-5〜百選I〔53〕)
  ⑪共同相続・遺産分割と登記の要否(最判昭和38-2-23百選I〔54〕)
  ⑫遺産分割と登記の要否(最判昭和46-1-26百選I〔55〕)
  ⑬不法占拠者と登記の要否(最判25-12-19、百選I〔59〕)
  ⑭賃貸不動産譲受人の賃料請求・解除と登記の要否(最判昭和49-3-19百選I〔58〕)
  ⑮レポート報告回と秋学期テーマ等の再検討
 (秋学期)
  (1)背信的悪意者からの転得者(最判平成8-10-29、百選I〔57〕)
  (2)時効取得後の背信的悪意者判断基準(最判平成18-1-17民集60巻1号27頁、判時1925号3頁)
  (3)裏返しの対抗問題?(最判平成6年2月8日民集48巻2号373頁)
  (4)中間省略登記の効力、中間省略登記請求の可否(最判昭和40-9-21百選I〔50〕)
  (5)相続と民185「新権原」(最判平成8年11月12日〔百選I〔63〕)
  (6)小テスト(抵当権に向けての基礎的設問と法的思考文章を指導)
  (7)抵当権に基づく妨害排除請求・損害の範囲(最判平成17-3-10民集59巻2号356頁)
  (8)抵当権の物上代位(最判平成10-1-30民集52巻1号1頁)
  (9)動産売買先取特権に基づく物上代位と債権譲渡の優劣(最判平成17-2-22民集59巻2号314頁)
  (10)法定地上権の要件(最判平成2-1-22百選I〔89〕
  ⑪法定地上権と共同抵当建物の再築(最判平成9-2年14百選I〔90〕)
  ⑫小テスト(相殺制度理解のための小問)
  ⑬差押えと相殺(最判昭和45-6-24百選II〔43〕)
  ⑭抵当権物上代位と第三債務者の相殺合意の優劣(最判平成13-3-13日民集55巻2号363頁)
  ⑮レポート報告回
(2) 報告者は、ゼミの進行をつとめます。ゼミ当日は、事案と判決の内容・判決の論点について、ゼミメンバーに発問をしながら、議論を進め、最後にその日のまとめをします。
(3) 各学期の終わりに、1000〜2000字のレポート提出をします(テーマ設定・提出期限はゼミ開始後に説明します)。
評価方法 (1) 日常の取り組み、およびレポートで評価する(出席回数、演習参加の姿勢、報告の状況50および学期ごとのレポートによる評価50)。
(2) 演習回数の3分の1以上欠席は単位認定しません。
テキスト (1) 教材は上記『民法判例百選I総則・物権〔第五版〕』および『民法判例百選II債権〔第五版〕』(有斐閣刊)とし、その他は、必要によりプリントで配布します。
(2) 判例解説などは、適時、指示します。全員で議論が必要なものプリントを配布します。
その他