南山大学

 
指定
期間
春学期
単位
年次
2〜4
担当者
高橋 広次
他の科目との関連
他学科履修
副題 法思想史概説
講義内容  本授業は、わが国の基本法の基礎をなすと思われる近代および近現代の欧米法思想ならびにその世界観の歩みを歴史的に跡づける。これまでの集団主義的・形而上学的傾向の法思想に対し、「法とは実定法以外の何ものでもない」という近代合理主義に基づく法思想は、ドイツ歴史法学に端を発した法実証主義において典型的に展開されるが、この学派はやがて奇妙なねじれを起こして別展開を遂げ、自然法論復活の準備もしている。われわれは、この近代以降に起こった法思想の流れを追いつつ、どのような形で世界における現代法の核心をなすに到るかその経路を探ってみよう。
学修目標  現代に生活している我々は、現代の法思想のみ知っていれば、それで十分ではないかと言われるかもしれない。しかし、現代の新奇に見える法的議論といえども、実は過去の遺産を受け継いでいる。「悪法問題」や「法の妥当根拠」、「自由と平等の対立」や「強者と弱者の対立」などの法哲学上の主要問題は,古代ギリシアの法思想の中で提起されており、形を変えながらも、あらゆる時代を貫く人類共通のテーマとなっている。我々は、近代以降の法思想に現れている先人たちの思想的格闘を学ぶ中で、より広い視野において現代の尖端的な法的議論をその延長上に眺めうるであろう。
講義計画 本授業の流れは以下の通り。
1.序論 近代思想史とは何か  文献紹介
2.イギリス近代法思想
 1)ブラックストーンの自然法論 2)ベンサムの功利主義法理論
3.歴史法学派の誕生 サヴィニーとメインの歴史法学
4.法実証主義の展開(1) ドイツ概念法学、 前期イェーリング
5.法実証主義の展開(2) フランス注釈学派
6.法実証主義の展開(3) イギリス分析法理学:オースティン
7.法実証主義の展開(4) ドイツ一般法学
8.法実証主義の変容(1) ドイツ自由法運動、後期イェーリング
9.法実証主義の変容(2) 法社会学派 M.ヴェーバー
10.法実証主義の変容(3) 利益法学派 ヘック
11.法実証主義の変容(4) フランス法科学学派 サレイユ、ジェニー
12.歴史法学におけるロマニステンに対するゲルマニステンの対抗
 1)ベーゼラーの団体法論 2)ギールケのドイツ社会法論
13.社会主義の法思想  マルクス、法曹社会主義
14.アメリカの法思想  プラグマティズム法学、ネオリアリズム法学
15.定期試験
評価方法 成績の評価に際しては、定期試験の結果を重視するが、中間期を見計らって実施する小テストの結果をも併せて考慮する。
テキスト 三島淑臣『法思想史』(新版) 青林書院新社 1993年
三島淑臣『法哲学入門』 成文堂 2003年(第2刷)
その他 法思想の歴史は、人間社会の歩みと思想一般の歩みを反映している。「社会史」や「思想史」(哲学史)の学習を並行して行うことが望ましい。