南山大学

 
指定
期間
通年
単位
年次
3・4
担当者
伊藤 高義
他の科目との関連
他学科履修 不可
副題 民法の重要判例を読む。
講義内容  主として民法の財産法分野の重要判例(物権法・債権法も含みます)を素材として、判例を読む機会とする演習とします。
 争点を正しくつかみ、関連判決と学説の状況を調べます。論点についての議論を通して、民法の基本を身につけ、専門用語を正確に用いた議論に強くなること、法(社会のルール)を根拠にした煮詰めた議論をする力を身につけることを基本目標とします。
学修目標 (1) 民法の基礎知識(これには条文、判例・学説を含みます)を身につけることです。
(2) テーマとする判決についての争点(法的論点)を見いだし、関連判例・学説の状況を調べてまとめる。
(3) 専門用語を用いた議論ができるようにする。
(4) 起承転結が明晰な文章を書く。
講義計画 (1) 初回ガイダンスの際に、各回のテーマを示し、春学期分各回の報告者を決めます。
(2) 第2回以降に扱うテーマと扱う順番は、下記(3)の通り(予定)ですが、テーマ・順番とも、受講者の希望により変更や、次回への延長、繰り下がりもあり得ます。途中、小テストが入ります。
(3) 各学期最終回は、レポート概要報告回とします。
(春学期)主として、不法行為事例を通して、最高裁がどんな法理を形成していったかを探ります。
 ・名誉毀損と免責の要件(最判昭和41年6月23日民集20巻6号23頁)
 ・名誉毀損と公正な論評の法理(最判平成元年12月21日民集43巻12号2252頁)
 ・プライバシー侵害(1)モデル小説(東京地判昭和39年9月28日下民集15巻9頁2317頁、最判平成6年2月8日48巻2号149頁)
 ・プライバシー侵害(2)刑事被告人の写真、イラスト画の掲載(最判平成17年11月10日民集59巻9号2428頁)
 ・名誉毀損、プライバシー侵害と出版の差止め可否(最高裁昭和61年6月11日民集40巻4号872頁、最判平成14年9月24日判時1802号60頁、東京高判平成16年3月31日判時1865号12頁)
 ・小テスト(法律的考え方の表現力、文章力を磨きましょう。) 
 ・過失の意義(1)予見義務と結果回避義務(大判大正5年12月22日民録22輯2474頁、東京地判昭和53年8月過失の意義(2)医療機関に要求される医療水準(付・債務不履行と不法行為責任)(最判平成7年6月9日民集49巻6号1499頁、最判平成8年9月3日判時1594号32頁、最判平成13年6月8日判時1765号44頁)
 ・過失・因果関係の立証(1)(最判昭和50年10月24日民集29巻9号1417頁、最判平成11年2月25日民集53巻2号235頁、最判平成12年9月22日民集54巻7号2574頁)
 ・因果関係の立証(2)(疫学的因果関係)(名古屋高金沢支判部昭和47年8月9日判時674号25頁、新潟地判昭和46年9月22日下民集22巻9・10号別冊1頁、東京地判平成14年10月29日判時1885号23頁)
 ・公共事業と受忍限度(最大)判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁、最判平成5年2月25日民集47巻2号643頁)
 ・景観利益と受忍限度(最判平成18年3月30日判時1931号3頁)
(予備)
 ・過失相殺(最大判昭和39年6月24日民集18巻5号854頁)
 ・素因減額(最判昭和63年4月21日民集42巻4号243頁、最判平成4年6月25日民集46巻4号400頁、最判平成8年10月29日民集50巻9号2474頁)
 ・第15回はレポート報告回
(秋学期)物権法・債権法の重要問題について、判例を通して学びます。以下はテーマ案とし、春学期最終回に希望もきいて各回のテーマと報告者を確定します。秋学期最終回はレポート報告回とします。1回で終わらないときは次回に継続します。
 ・小テスト(基礎的問題の考え方と法的思考の文章表現のためのテスト〕)
 ・いわゆる転用物訴権(最判平成7年9月19日民集49巻8号2805頁)
 ・所有物返還請求権と民法708条(最大判昭和45年10月21日民集24巻11号1560頁)
 ・登記引取請求権(最判昭和36年11月24日民集15巻10号2573頁)
 ・民法177登記すべき物権変動制限説(大連判明治41年12月15日14輯1276頁)
 ・対抗の意義〜義務免奪要件(最判平成6-2-8民集48-2-373)
 ・小テスト(共同所有形態についての理解の確認)
 ・共同相続不動産の賃料債権の遺産分割前の帰属(最判平成17-9-8民集59巻7号1931頁)
 ・共同相続人の一部による賃貸の効力(最判昭和63年5月20日判時1277号116頁)
 ・共有物の分割(最判平成8年10月31日民集50巻9号2563頁)
 ・小テスト(相殺・債権譲渡制度についての理解の確認)
 ・差押えと相殺(最大判昭和45年6月24日民集24巻6号587頁)
 ・最終回はレポート報告回
(4) 報告者は、テーマについて論点を整理し、ゼミの進行をつとめます。ゼミ当日は、司会と、ゼミメンバーに発問をしながら、議論を進め、最後に、その日のまとめをします。
(5) 各学期の終わりに、民法上の重要問題(上記テーマに限らず、各自で選択します)について、判例および学説の状況を調べてまとめたレポート2000〜3000字(提出期限はゼミ開始後に説明します)を提出します。
評価方法 (1) 日常の取り組み及びレポートで評価します(出席回数、演習参加の姿勢、報告の状況50および学期ごとのレポートによる評価50)。
(2) 演習回数の3分の1以上の欠席は、単位認定をしません。
テキスト (1) テーマとする判決は、各自で読んで争点を整理し、論点を考えてきておきます。
(2) 判例解説などは、適時、指示します。全員で議論が必要なものはプリントして配布をします。
その他