南山大学

 
指定
期間
通年
単位
年次
3・4
担当者
高橋 広次
他の科目との関連
他学科履修 不可
副題 現代における「法の支配」の可能性について
講義内容  現在わが国で進められている司法制度改革の基本理念は、「法の支配」である。この理念は、歴史的には「人の支配」と対立する原理として理解されるが、この区別にはさほど明確には識別し難い面もある。なぜなら、「法が支配する」ことはありえず、支配するのは必ず「人間」を通してであるからである。問題なのは、「法」を司る人間のあり方である。本演習では、この「法の支配」という理念を、法-政治思想史、法哲学、日本国憲法の文脈において検討する。
学修目標  「法の支配」をめぐっては多くの学説理解があり、また法系ごとに特色が異なっているが、それらの比較によって、究極的には、それは「人間の尊厳」の社会的実現に仕える制度的理念であり、これを外れると形式的手続きに空洞化される惧れがあることを理解する。
講義計画  以下に掲げる基本的諸問題につき、受講者は自分の関心のあるものを選び、報告を重ねて、学期末ごとにレポートを提出する。担当者はレジュメを作成して報告し、ゼミで行う討論のための問題提起を行う。演習のテーマはさしあたり、以下のとおり。連関するテーマは受講生と相談して増設し得る。
1.  春学期最初にテーマの選択を行い、レポーターを決める。
2〜14.レポーターの報告をもとに質疑応答を行う。
15.  秋学期最初にテーマの選択を行い、レポーターを決める。
16〜28.レポーターの報告をもとに質疑応答を行う。
29.  定期試験。
(1).法・政治思想史の文脈で「法の支配」を理解する。
 1)プラトン、アリストテレス、キケロ、トマスの該当文献を調べる。
 2)イギリス法を貫く「法の支配」に関してはコークの関連文献を調べる。
 3)フランス革命・ロシア革命の人民主権と「法の支配」について調べる。
(2).法哲学の文脈で「法の支配」を理解する。
 ナチス体制の合法性をめぐる議論に端を発するハート・フラー論争
(3).わが国の憲法制定の文脈で「法の支配」を理解する。
 1)明治憲法に見られる「法の支配」について調べる(立憲君主制)
 2)日本国憲法制定当初に起きた「法の支配」論争を理解する。
    【例】宮沢—尾高論争(ノモス主権論)
 3)変貌した現在のわが国にあって、司法改革の路線にある「法の支配」の理念がいかなる目標と内容をもつかを理解する。【例】裁判員制度
評価方法  平素の演習への取り組みの姿勢、及びレポートで評価する(出席日数、報告準備の周到さ、学期ごとのレポート査定に基づく総合評価による)。
テキスト  プラトンをはじめとする古典的伝統、及びイギリス・フランスの「法の理念」、現代のフラー等のそれについても報告者には関連文献指示。日本の憲法に関しては、文献として、尾高朝雄『国民主権と天皇主権』(岩波書店)、佐藤幸治『日本国憲法と「法の支配」』(有斐閣)。
その他 特になし