南山大学

 
指定
期間
秋学期
単位
年次
1・2
担当者
吉田 竹也
講義題目
開講キャンパス
講義内容  この講義では、理論面ではマックス=ウェーバーの宗教社会学的研究と、これを人類学的研究に援用したクリフォード=ギアツの研究を踏まえながら、社会の近代化ないしはグローバル化の中で、特定地域の宗教がどのような変容過程をたどるのかという問題を、文化人類学や社会人類学の研究成果に依拠しながら、検討する。具体的には、インドネシアのバリ島の事例を中心とし、これに適宜他地域のデータをも加味しながら、特定社会における「宗教」表象枠組みの成立過程を明らかにすることを目指す。
学修目標 「宗教」とその変容に関する人類学的まなざしの涵養を目標とする。
講義計画  この講義では、「宗教」という意味システムの構築とその変容を、インドネシアのバリ島のケースを具体例とし、検討する。すでにそこにあるものとしての宗教(一般論的視点から定義しうる)の変化を論じるのではなく、特定の歴史的社会的状況下において立ち上がり/立ち上げられ、変容していくものとしてのある特定の宗教のあり方(それは定義によってではなく、記述によって明確化しうる)を捉えようとする人類学的まなざしについて、理解を深めることを目的とする。授業は、基本的に発表・討論形式で進める。なお、受講生のおおくが初心者であれば、比較的平易なテキストを用いた講義とする可能性もある。

1.序論
 本講義の問題関心を端的に示す論文を取り上げ、講義での議論の見通しについて触れる。
 テキスト:『日本近代文学の起源』
2.宗教とは何か
 ギアツの宗教論を検討し、その問題点を指摘することから、「宗教」概念をめぐるこの講義の視点を明確にする。
 テキスト:ギアツ「文化システムとしての宗教」、拙稿「ギアツの文化システム論」
3.マックス・ウェーバー
 序論で示した問題枠組につらなる議論の出発点はウェーバーである。そこでまずウェーバーの『プロ倫』および「中間考察」をテキストとしてもちい、その議論のアウトラインを把握する。
4.ギアツのバリ宗教変動論
 ギアツの「現代バリ宗教の内面的改宗」をテキストにし、ギアツの議論のポイントについて整理する。当該論文は、戦後のインドネシアの宗教変化について論じる上で、おそらく最も重要な基本文献だと考えられる。
5.インドネシア宗教変動論
 前回に検討したギアツのバリ宗教論の議論枠組を、インドネシアの諸地域の宗教の分析一般に当てはめようとした研究に触れ、バリ宗教論とインドネシア宗教論の関係を整理する。
 テキスト:Indonesian Religions in Transition. とくにその序論
      可能であれば、AtkinsonとTsingの論文も取り上げたい。
6.現代バリ宗教の変容論
 ギアツのバリ宗教変動論とは異なるバリ宗教の変容過程の理解の可能性について検討する。
 テキスト:「現代バリ宗教の変容論」「現代バリ宗教と祈り」
7.バリ宗教の誕生
 植民地時代に遡って、バリにおける「宗教」の構築過程について概観する。
 テキスト:「バリ島の観光・伝統・バリ研究」「バリ宗教の誕生」
8〜13.バリ宗教の構築と変容(1)〜(4)
 6・7で指摘した論点を、最近の民族誌的研究をリヴューすることによって確認する。
 いまのところ、Howeの著作の1章・5〜7章・10章をテキストとしてとりあげる予定である。ハウの著作の当該箇所の議論は、現状ではこの講義の主題にもっともマッチした研究だと考えられる。
 テキスト:Leo Howe 2001 Hinduism & Hierarchy in Bali.
14.総括討論
 あらためて宗教とその変容に関する人類学的な視点について、できれば各自が研究対象とするフィールドの実情について意見交換・討論しながら、総括する。
評価方法 評価の割合は、出席3割、発表・討議3割、レポート4割とする予定である。
テキスト
その他 毎回予習がたいへんかもしれないが、覚悟して授業に望んでほしい。