南山大学

 

【科目コード】97837

【科目名称】ジェンダー論

【担当者】藤本 哲史

【単位数】2                    【配当年次】1秋・2    【開講期】春学期

 

【授業概要】

本科目では、「ジェンダー」と「ワーク・ライフ・バランス」をキーワードに、日本とアメリカ社会における家族生活と雇用労働の統合に関する問題を取り上げ考察する。第一に、両国における現代家族の現状を把握し、働く人々の家族生活に影響を与える企業の組織風土やジェンダー・イデオロギー、また家庭内労働や性役割分業等の問題を取り上げ、働く親たちの葛藤の現状を分析する。第二に、日米両国の企業による家族支援政策の展開過程、現状、また問題点等を考察する。特に90年代以降の研究から、ワーク・ファミリー・インターフェイスに貢献する企業制度の可能性や限界に焦点をあて分析を進める。

【到達目標】

社会学を基盤に、現代社会における雇用労働と家族生活のふたつの生活領域の相互関係、およびその相互関係とジェンダーの関連性を理解すること。また、ふたつの生活領域の役割間葛藤が働く人々に与える影響、および組織が講じることができる葛藤緩和策を理解すること。アメリカの経験をもとに、日本社会が抱える労働と家族に関する諸問題を分析すること。

【授業計画】

1.アメリカにおける女性労働の現状

                   (1)労働参加率(2)参加のパターン(3)フルタイム労働とパートタイム労働(4)

職業分布(5)賃金

   2. 日本における女性労働と生活時間の現状

                   (1)労働参加率(2)フルタイム労働とパートタイム労働(3)賃金(4)1日の

生活時間(5)夫婦の生活時間

   3. アメリカにおける仕事時間の諸問題 --- 概観

                   (1)労働時間に関する論争(2)働き過ぎ(overwork)の問題(3)理想の労働時

間(4)ファミリー・フレンドリー制度(5)政策の可能性

   4. アメリカ人の労働時間

                   (1)”Overworked Americans” 論争の内容(2)仕事時間の測定方法(3)1970

代以降の週間労働時間のトレンド(4)誰が長時間働いているのか(5)Overwork

Underworkの問題

   5. 家族の視点から見た労働時間

                   (1)家族、世帯、労働時間(2)夫婦の労働時間の測定(3)世帯形態別労働時間

のトレンド(4)学歴と労働時間(5)共働き夫婦と労働時間

 

 

   6. アメリカ人は働き過ぎか?

                   (1)働く人々の理想労働時間(2)実際の労働時間(3)理想と実際のギャッ

プとその説明(4)学歴や職業との関連性(5)婚姻状況や子どもの有無との関連性

   7. 仕事の家庭生活への影響

                   (1)仕事と家庭生活の間の役割葛藤(2)多重役割を負う労働者(3)仕事から家

庭へののスピルオーバー(4)家庭から仕事へのスピルオーバー

   8. 職場の構造とワーク・ファミリー・コンフリクト

                   (1)仕事の柔軟性(2)職種と柔軟性の関連性(3)仕事の自律性と自己裁量(4)

ファミリー・フレンドリー制度の実際(4)ファミリー・フレンドリー制度利用が労

働者に及ぼすコスト

   9. 労働時間に関する欧米比較

                   (1)労働時間と対応策の国際比較(2)Luxemburg Income Study (3)欧州の社

会的および政治的コンテキスト(4)学歴や性による労働時間比較

   10. ワーク・ファミリー問題の考え方

                   (1)個人的アプローチ(2)セルフ・ヘルプとタイム・マネジメント(3)文化的

アプローチ(4)消費主義と働き過ぎの文化

   11. Time Divide の諸相

                   (1)Work-Family Divide (2)Occupational Divide (3)Aspiration Divide (4)

Parenting Divide (5)Gender Divide

   12. 政策に関わる諸問題(その1)

                   (1)時間のジレンマの解消策 (2)労働者の多様なニーズ (3)ファミリーサポ

ートのあり方 (4)チャイルドケアを通じたファミリーサポート(5)賃金とファ

ミリーサポート(6)労働者の子育て権の保護

   13. 政策に関わる諸問題(その2)

(1)      労働柔軟性とファミリーサポート (2)ファミリー・フレンドリー施策の限

界(3)労働時間の規制について

   14. 政策に関わる諸問題(その3)

                   (1)残業の規制(2)労働時間と労働生産性との関連(3)夜勤と週末労働(4)

21世紀における仕事と家庭生活のあり方

 

【評価方法】

   出席 30%、宿題と授業内での口頭報告 40%、期末レポート 30%

【テキスト】

   Jacobs, Jerry A., & Kathleen Gerson. (2004) The Time Divide: Work, Family, and Gender Inequality. Cambridge, MA: Harvard University Press.

 

 

【参考文献】

   Newman, David M. & Liz Grauerholz. 2002. Sociology of families (2nd edition). Thousand Oaks, CA: Pine Forge Press.

  Stebbins, Leslie F. 2001. Work and family in America. Santa Barbara, CA: ABC-Clio

  Hocschild, Arlie. 1989. The second shift: Working parents and the revolution at home. New York: Viking.

  『現代のエスプリ No.429 仕事と家庭の両立 ライフスタイル・フレンドリーな社会をめざして』至文堂 2003