Ⅰ.授業の概要
①講義科目名(単位数) |
消費者法(2単位) |
②担当者名 |
石川
真司/柘植 直也/森田 茂/瀧 康暢/荻原
典子/伊藤 勤也/佐藤 浩史/平井 宏和/織田
幸二 |
③科目の種類 |
展開・先端科目 |
④必須の有無 |
選択 |
⑤配当学年・学期 |
2・3年(既修者コース:1・2年)・秋学期 |
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⑥授業の概要 |
(概要)この授業では、我国における消費者保護法制の概要と、実社会における典型的な被害類型及びその救済策について取り扱う。 我国では、頻発する消費者被害の具体的な救済は、必ずしも立法的に解決されてきた訳ではなく、多くは被害者救済に当った実務家(主として弁護士)の創意と工夫により、実現されてきたとも言える。この授業では、9名の担当者(弁護士)が被害類型ごとにオムニバス形式で行い、被害実例とその救済策を学ぶ。 (オムニバス形式) (萩原)総論として、消費者被害の現状と、その救済のため弁護士がどのような活動をしてきたかを概観する。 (石川)投資被害について各類型毎に学び、最も紛争が多いとされる商品先物取引被害につき詳しく検討する。 (石川)商品先物取引被害に関する事件処理につき、具体的事例を題材として考察する。なお、近時被害の増加している外国為替証拠金取引についても検討する。 (柘植)欠陥商品被害、欠陥住宅被害について、その問題点、解決策を考察する。 (森田)特定商取引法の適用に関連して、訪問販売やクレジット事例を取り上げ検討する。 (瀧)特定商取引法に関連して、エステや英会話教室などの役務提供の紛争を考察する。 (荻原)ベルギーダイアモンド事件などを素材として、マルチ商法被害の救済を考える。 (伊藤)消費者契約法について、その制定の経緯、概要を理解し、身近な事例を検討する。 (佐藤)割賦販売法について、ココ山岡事件等を題材に抗弁の対抗と拡張適用の可否を考える。 (平井)消費者信用および多重債務問題の現状を理解し、その救済方法を考察する。 (織田)法律実務家として、消費者問題に関わる場合の視点や今後の課題を検討する。 |
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⑦到達目標 |
受講者は、我国の消費者保護法制の概要と具体的被害実例を学習することにより、消費者保護の重要性の理解を深めるとともに、具体的被害をいかに法を適用して救済すべきかをフレキシブルに思考できる法的思考力を育成することを目標とする。そのうえで、新たな消費者被害についての具体的救済策を考案する思考力を習得するとともに、実務家としての被害者救済への取組み姿勢の体得が期待される。 |
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⑧成績評価の基準と方法 |
レポート、テスト等の総合評価による。 |
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⑨教科書 |
使用しない。各担当者においてレジュメと資料を用意し配布する予定。 |
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⑩参考文献・参考資料 |
甲斐道太郎ほか編『消費者六法』(民事法研究会、1997年) 斎藤雅弘、池本誠司、石戸谷豊『特定商取引法ハンドブック[2版]』(日本評論社、2003年) 名古屋消費者問題研究会編『Q&A消費者契約法の実務マニュアル』(新日本法規出版、2001年) |
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⑪履修条件その他の事項 |
特になし |
Ⅱ.授業計画
回 担当 |
①テーマ |
授業内の学修活動 |
④授業時間外の学修活動等 |
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②ねらい・内容 |
③授業方法・工夫 |
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1萩原 |
総論 |
①我国において消費者保護のためどのような法制度が設けられているか、②実社会において、どのような消費者被害があるのか、③被害者救済のためどのような活動がなされているかについて解説を行う。また、消費者被害救済のため、弁護士等がどのような形で被害救済弁護団やその全国的ネットワークを形成してきたかにつき、その歴史と現状を概観する。 |
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2石川 |
投資被害Ⅰ |
投資被害にはどのようなものがあるのかを証券取引、保険取引、銀行取引 商品先物取引などの各類型ごとに学び、同時に、これらの取引被害に対して投資家側の弁護士がどのように取り組み、どのような救済法理を確立してきたかを考察する。投資被害における救済のための立法の1つである金融商品販売法の内容についても考察する。 |
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3石川 |
投資被害Ⅱ |
投資被害の中で最も紛争が多いとされる商品先物取引被害について、その被害実態と、投資家側の弁護士がこれまで被害の予防、救済のためにどのように取り組んできたか、その足跡を考察する。あわせて、現時点までに確立されてきた救済法理の内容を考察する。 |
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4石川 |
投資被害Ⅲ |
商品先物取引被害に関する被害救済のための事件処理について、具体的事例を題材として考察する。なお、近時被害の増加している外国為替証拠金取引についても検討する。 |
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5柘植 |
欠陥商品被害 |
製造物責任法が制定された経過、背景、製造物責任法の考え方を学んだ上、実際の欠陥商品被害事件においてどのような点が問題となり、消費者側代理人がどのような点を考慮して活動しているかを考察する。 |
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6柘植 |
欠陥住宅被害 |
欠陥住宅被害の問題は、現在訴訟実務においても大きく変化し、発展しつつある分野である。欠陥住宅被害がどのような問題であるかを理解した上、実際の欠陥住宅被害事件においてどのような点が問題となり、どのように紛争が解決されていくかを考察する。 |
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7森田 |
特定商取引法Ⅰ |
訪問販売・電話勧誘販売等の具体的な事例をもとにクーリングオフが適用される場面や法を逸脱するためになされる事業者の工夫にどう対処するかについて考える。クレジットの抗弁の対抗の基礎についても取扱う。 |
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8瀧 |
特定商取引法Ⅱ |
エステ、英会話教室などの題材をもとに、特定継続的役務取引や内職モニター商法など業務提供誘引販売取引の適用される場面と、法を逸脱するためになされている事業者側の工夫(エステなのにクレジット契約は単なる化粧品の販売等)にどう対処するかを具体的事例をもとに考える。 |
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9伊藤 |
消費者契約法 |
なぜ、消費者契約法の制定が必要とされたのか、消費者取消権、不当条項の無効がどのような場面で適用されるのかを具体的な事例(入学金・授業料返還請求訴訟の現状等)で考える。身の回りにある約款で不当条項といえるものはないか、を検討する。 |
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10荻原 |
特定商取引法Ⅲ |
ベルギーダイヤモンド事件(大阪地判H4.3.27、大阪高判H5.6.29、東京高判H5.3.29、広島高判H5.7.16外)、全国八葉物流事件等を題材にマルチ商法の救済をどう図るかについて考える。 |
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11佐藤 |
割賦販売法 |
割賦販売法における抗弁の対抗の問題を中心に考える。最高裁H2.2.20、大阪高裁H16.4.16(ダンシング事件)等の判例やココ山岡事件の和解事案を題材に、信販会社の加盟店管理責任についても考察する。 |
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12平井 |
消費者信用及び多重債務問題の現状 |
消費社会の構造と消費者信用の現状、および、多重債務の原因と多重債務問題の現状を理解し、あわせて、消費者信用に関係する法制度(利息制限法、出資法、貸金業の規制等に関する法律、割賦販売法等)、多重債務者救済に関する法制度として、特定調停法、民事再生法(個人)、破産法(同時廃止及び免責)等の概要を理解する。 |
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13平井 |
多重債務者の救済Ⅰ |
多重債務者救済方法(自己破産、個人再生、特定調停、任意整理)の概要を理解した上で、それぞれの方法のメリット、デメリットを理解し、選択基準を考察する。 |
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14平井 |
多重債務者の救済Ⅱ |
多重債務の救済に関係して、利息制限法に関する最高裁判例の変遷、商工ローン問題における利息制限法の解釈、いわゆる「ヤミ金」被害の現状と対策、過払い金返還請求における問題点、統一消費者信用法について、考察する。 |
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15織田 |
まとめ |
21世紀における消費者は,「保護の客体」ではなく「権利の主体」であるという観点から、情報公開制度、団体訴権制度、公益通報者保護制度など、法律実務家として消費者問題に関わる場合の視点や今後の課題を考察する。 |
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