南山大学

 

Ⅰ.授業の概要

①講義科目名(単位数)

ジェンダーと法(2単位)

②担当者名

柳本 祐加子

③科目の種類

展開・先端科目

④必須の有無

選択

⑤配当学年・学期

2・3年(既修者コース:1・2年)・秋学期

⑥授業の概要

 ジェンダーの視点、特に「女性の人権」の視点を持つことの意味について学びます。この授業ではまず女性の人権について、その歴史的展開、国際条約等のレベルにおける議論に関する理解と、女性の人権に関わる重要な問題、特にセクシュアル・ハラスメント、性暴力、ドメスティック・バイオレンスなど「女性に対する暴力」が争点とされた具体的な裁判例を検討する中で、ジェンダー化された現在の法体系において女性の人権が保障されるためにはどのような観点が法曹として必要とされるのかを学んでゆきます。同時に法を解釈適用するわたしたち自身もジェンダー化された存在であることに気付くことを学ぶ機会も取り入れてゆきます。

 講義形式を基本としますが、課題によっては受講者からの報告や、一定のテーマについて意見交換をしながら授業を進める形式を可能な限り取り入れてゆきたいと考えています。

 

⑦到達目標

 ジェンダー公正な社会の実現に向け、法曹として何をすべきかについて各自が一定の答えを出すこと。また自分自身がどれほどジェンダー化された存在であるかに気付くこと。

⑧成績評価の基準と方法

 期末試験を中心とし、授業への出席状況、授業に対する貢献度、参加度を加味しつつ評価します。

⑨教科書

辻村みよ子『ジェンダーと法』不磨書房、2005年

⑩参考文献・参考資料

小島妙子、水谷英夫『ジェンダーと法Ⅰ』信山社、2004年;角田由紀子『性差別と暴力』有斐閣、2001年;キャサリン・マッキノン『セクシャル・ハラスメント・オブ・ワーキング・ウィメン』こうち書房、1999年;亀井明子編著『知っていますかスクール・セクシュアル・ハラスメント一問一答』解放出版、2004年;「夫(恋人)からの暴力」調査研究会著『ドメスティック・バイオレンス[新版]』有斐閣、2002年;国際女性の地位協会編集『女性関連法データブック』有斐閣、1998年;井上輝子、江原由美子編『女性のデータブック[第4版]』有斐閣、2005年など。その他必要に応じて配付したり、お知らせします。

⑪履修条件その他の事項

このテーマについて取組もうとする意思がある者、法曹として女性の権利問題に取り組もうとする意思や希望のある者。

 

Ⅱ.授業計画

担当

①テーマ

授業内の学修活動

④授業時間外の学修活動等

②ねらい・内容

③授業方法・工夫

1

ジェンダーと法・導入1

授業展開の見通しについて説明し、女性の人権の歴史的展開について概観します。

自らの体験や考えなど率直な意見交換を行いながら進めてゆきたいと考えています。

 

2

ジェンダーと法・導入2

国際人権論において、現在の女性の人権に関する議論を概観し、それに連動して日本政府の取り組みを概観します。

 

女性の人権保障の国際的な枠組について参考資料に基づきながら予め把握しておくとよいでしょう。

3

雇用とジェンダー

男女雇用機会均等法下の雇用状況や、間接差別に関わる女性労働判例を概観します。

 

参考判例を予め読んでおくことを希望します。

4

家族とジェンダー

近代家族から現代型家族への変容を、特に日本国憲法24条制定過程などを踏まえながら概観します。憲法24条の現代における意味を改めて考えてみたいと思います。

 

参考資料を予め読んでおくことを希望します。

5

セクシュアル・ハラスメト1

 

セクシュアルハラスメント(=SH)に関する総論的な問題と、職場で発生するSHについて裁判例を見ながら、その実態や動向を概観します。

 

参考判例を予め読んでおくことを希望します。

6

セクシュアル・ハラスメント2

大学で発生するSHについて裁判例を見ながら、その実態や動向を概観します。

 

参考判例を予め読んでおくことを希望します。

7

セクシュアル・ハラスメント3

高等学校以下の教育機関で発生するSHについて、裁判例や、実際の被害者支援事例などを見ながら、その実態や動向を概観します。

 

 

8

DV1

総論

DVの実態やそのメカニスム、加害者について概観します。

 

参考資料を予め読んでおくことを希望します。

9

DV2

DV対策

DV防止法やDV基本計画を含むDVに対応する社会資源について概観します。

 

 

10

DV3

離婚と女性の自立

DV被害者の離婚とその後の自立に向けた支援の実態について概観します。

 

参考資料を予め読んでおくことを希望します。

11

DV4

離婚とこども

DVを目撃させることも児童虐待の一つであり、こどももDVの被害者です。DV被害者であるこどもの権利をどのように考えるか、両親の離婚に関連する課題について考えます。

 

 

12

DV5

デートDV

交際相手からの暴力もDVです。その実態とストーカー被害、ストーカー殺人との関係について概観します。

 

 

13

女性移住労働者とジェンダー

移住労働者である外国籍女性の問題について概観します。

 

 

14

法曹倫理とジェンダー

ある強かん事件被疑者の弁護人となった弁護士の被害者に対する働きかけをジェンダーの視点から分析することによって、法曹倫理について考えてみます。

 

参考判例を予め読んでおくことを希望します。

15

まとめ

この授業のまとめとして、ジェンダーの視点がなければ見えないものは何かを確認しながら、人権尊重に基づく多様な人々との共生が目指される現代社会における法や法曹の果たすべき役割について議論します。同時にこの授業が掲げる到達目標に関する各自の達成度についても発表してもらいます。

この授業を受けた感想や、到達目標の達成度について、受講者で意見交換をします。