11321 地域文明論C(ヨーロッパ)
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選必 |
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秋学期 |
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2 |
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1〜 |
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丸岡 高弘 |
他の科目との関連 | |
他学科履修 | 可 |
副題 | フランス──多文化主義とEU統合のはざまで |
講義内容 | スカーフを着用したために学校から退学処分を受ける──これは学校生活に規制が多い日本の出来事ではなく、「自由の国」フランスでの出来事である。イスラムの戒律では女性は男性の前で身体を露出することが禁止され、スカーフを着用することが義務づけられている(とされている)。それに対してフランスではとりわけ公立学校において政教分離原則が厳格に守られ、宗教的信仰の印を着用することが禁じられている(とされている)。どうしてこのような事態が生じたのか。ここには伝統を異にした集団が共生することの困難さが集約的にあらわれている。フランスでは高度成長時代にとりわけ北アフリカのイスラム教国から多くの移民が導入され、フランスに定着するようになって様々な軋轢がしょうじている。本講義ではこのスカーフ事件を中心的なトピックスに据えて、こうした問題が発生した背景をフランスの文明概念をめぐる議論の中に探っていきたい。 |
学修目標 | ヨーロッパにおける多文化共生の状況と困難さを、フランスの実例をとおして具体的に検証する。扱われるテーマは以下のとおりである。 1.三度繰り返されたスカーフ事件 2.文明と文化 3.多文化主義をめぐる論争──普遍主義か個別主義か 4.政教分離原則 5.マイノリティーはいかにしてマジョリティーのなかで自己のアイデンティティを確立するか 6.EU統合を前にした国民国家の危機意識 |
講義計画 | 1)はじめに、2004年のフランス人記者誘拐事件 2)フランスの政体、フランスの外国人、フランスのイスラム 3)フランスの政教分離原則と第一のスカーフ事件 4)第一のスカーフ事件でどんな議論がされたか 5)第二のスカーフ事件、第三のスカーフ事件、禁止法成立 6)スカーフの象徴的意味 7)国籍法論争 8)ロン委員会、二つの「国民」観、「想像の共同体」 9)フィヒテとルナン、文明と文化 10)同化・挿入・統合、自文化中心主義、共同体主義 11)スカーフ問題の整理、植民地主義の評価の問題 12)ヨーロッパ内部に発生した「文明の断層線」? 13)政教分離の歴史(フランスと日本) 14)ヨーロッパ統合と新しい「アイデンティティ」の形成 15)試験 ただしフランスでおこった新しい事件も積極的にとりいれて、アクチュアルな授業にしたいので、授業内容が一部変更される場合があることは念頭にいれておいていただきたい。 |
評価方法 | 定期試験による。(欠席過多を適用する) |
テキスト | 特に指定しないが、次のものを参考文献としてあげておく。 梶田孝道『統合と分裂のヨーロッパ』岩波新書 西川長夫『国境の越え方』平凡社ライブラリー ミュリエル・ジョリヴェ『移民と現代フランス』集英社新書 |
その他 |