南山大学

 
指定
期間
春学期
単位
年次
2〜4
担当者
田中  実
他の科目との関連
他学科履修
副題 ローマ法と法学基本概念の検討
授業概要  古代ローマは、財産をめぐる紛争解決にあたって、たとえば民主的な多数決原理などを採用する議会とは距離をおき、論拠を限定しつつも開かれた議論を許容する法や裁判制度の構築に成功しました。そこで作られた概念、議論の枠組、法制度は、今日でも、諸国の、そして西欧法を継受した我国の法制度・法律学の基盤をなしていると言われています。はたしてそうかはともかく、過半数の支持さえ獲得すればいいというメカニズムや何か超越的な価値を直接に援用する思考とは距離をおいた「法の支配」を実現するには、ローマ法の知識は不可欠です。この講義では、総論としてローマ法の意義やその基本構造、歴史的展開を説明し、各論として、現行民法の基本的な考え方を意識しながら、相続法を含む広い意味でのローマ財産法のいくつかの制度を解説します。
学修目標  ローマ私法の基本的な知識を習得し、イングランドの武力支配を経験したことのない世界の大部分の地域に共通の大陸法の基礎的素養を身につけ、法的思考能力の向上をはかること。
授業計画 総論
 1 プロローグ ローマ法の意義
 2 ローマ市民社会=国(res publica=societas civilis)の基本構造
 3 ローマ法の歴史 公法史と私法史 訴訟法の変遷
各論
 4 民法総則から 付加的性質の訴権 奴隷の特有財産
 5 物権法から 絶対的所有権をめぐる様々な観点
 6 物権法から 占有概念 使用取得と特示命令
 7 債権法から 問答契約 合意と契約
 8 債権法から 有名契約(典型契約)と方式書
 9 債権法から 無名契約と前書訴権
 10 債権法から 不法行為 罰訴権と損害填補
 11 相続法から 相続の基本概念
 12 相続法から 相続人指定と近親者保護
 13 相続法から 遺贈と相続人保護
 14 エピローグ ローマ法文へのアプローチ
 15 定期試験
評価方法 出席・平常点10%、筆記試験90%
テキスト なし
その他 配付資料(史料の邦訳を含むハンドアウト)を教材とします。配布資料は、あくまで聴講の補助資料の性格を持つもので、他の講義で配布されることが常であるような見通しのきいたレジュメスタイルのものではありませんので留意して下さい。邦語参考文献としては、ゲオルク・クリンゲンベルク著(瀧澤栄治訳)『ローマ債権法講義』『ローマ物権法講義』(大学教育出版)、原田慶吉著『ローマ法—改訂—』(有斐閣)を挙げておきます。欧文参考文献として、新書スタイルの優れたものとして、Ulrich Manthe, Geschichte des roemischen Rechts, 2. Aufl., 2006およびMichele Ducos, Rome et le droit, 1996を挙げておきます。