南山大学

 
指定
期間
通年
単位
年次
3・4
担当者
高橋 広次
他の科目との関連
他学科履修 不可
副題 現代における司法制度の問題性について
授業概要 現在わが国で進められている司法制度改革の基本理念は、「法の支配」である。この理念は、歴史的には「人の支配」と対立する原理として理解されるが、この区別にはさほど明確には識別し難い面もある。なぜなら、「法が支配する」ことはありえず、支配するのは必ず生身の「人間」を通してであるからである。問題なのは、「法」を司る裁判官のあり方である。本演習では、この「法の支配」という理念を、法哲学、日本国憲法の文脈において検討する。
学修目標 基本的人権は擁護されねばならないが、これを阻むものに対する最後の砦は裁判所である。問題を公正に処理せねばならない裁判が、外的圧力や、特定イデオロギーの偏向によって左右されてはならないが、「法の支配」の完成を目指して、今日では、立法過程のみならず、司法過程についても民主主義化が主唱される。いわゆる「裁判員制度」である。これらを含め、三権分立制の中で司法機構における裁判の機能の正当範囲と限界を考えてみる。
授業計画 以下に掲げる基本的諸問題につき、受講者は自分の関心のあるものを選び、報告を重ねて、学期末ごとにレポートを提出する。担当者はレジュメを作成して報告し、ゼミで行う討論のための問題提起を行う。演習のテーマはさしあたり、以下のとおり。連関するテーマは受講生と相談して増減し得る。
     (1) 事実認定の問題の困難・・・精神障害者の「精神鑑定」の不一致;
       刑法39条「心神喪失者の行為は、罰しない」をめぐって
     (2) 「被害者なき犯罪」をどう捉えるか?
       わいせつ、薬物犯罪、賭博等の処罰の可能性をめぐって
     (3) 司法判決における「主文」と「傍論」の相違について;
       靖国訴訟、在日外国人の地方参政権訴訟等
     (4) 裁判官による破産免責制度の活用;
       消費者金融利用による破産の急増。その実態はどうかを調べる。
     (5) 司法改革の路線にある「法の支配」の理念が、民主主義と結合する場合;
       【例】裁判員制度導入の問題点について
     (6) 裁判官は判決を下すに当たって、積極的(政策形成的)であるべきか、それとも消極的であるべきか?・・・司法積極主義と司法消極主義
評価方法 平素の演習への取り組みの姿勢、及びレポートで評価する(出席日数、報告準備の周到さ、学期ごとのレポート査定に基づく総合評価による)。
テキスト 中村治郎『裁判の客観性をめぐって』(有斐閣)、佐藤幸治『日本国憲法と「法の支配」』(有斐閣)。その他は選択したテーマに応じて指示する。
その他 特になし