南山大学

 
指定
期間
春学期
単位
年次
1・2
担当者
榎本 鐘司
講義題目
開講キャンパス
授業概要  自転車に乗ることは「突然にできる」ようになる。或る時にフッと、からだ全体のスイッチが入れ替わったように「乗る」という運動感覚が発生する。あるいは「泳ぐ」という感覚の発生も同様であろう。私たちはこういった運動感覚の発生を重ねて、様々な運動感覚をわが身に内臓し、それをわが身の基底的構造として日々生きる社会的身体としてのわが身の形態発生を繰り返している。これを逆説的にいえば、現代社会に生きる現実のわが身は、はたして日々生きるに十分に有効に働くほどに運動感覚が鍛えられ、構造化されているかということである。この問題を、授業の中では実習をとおして確認して見たいということがある。そしてその自己観察の地平を他に向けることが次の課題である。例えば「姿勢」や「構え」という身体技法は、対物、対人、対社会などとの関係性の上で形態発生する。よく話題となる「レスポンスする身体」である。東洋的にいえば、「気に感応する身体」ということでもある。………というように、体験実習を織り交ぜながら授業を行う。
学修目標  身体技法といえば、一般には人類学や社会学で研究対象となる領域である。もちろんスポーツ人類学という研究分野もあって、スポーツ科学とも当然ながら関係は深い。加えて、日本の体育学(身体運動学)ではかなり以前に「技術」と「技法」のターミノロジーが問題となっていて、そして対象化された一般の身体認識に基づく運動技術の精密科学的分析ではなく、生きている身体における運動感覚−身体技法の発生とその伝承に問題意識をおいた、厳密科学としての身体運動学の研究も継続されてきた。運動感覚の即発という運動発生の問題は、教育ファシリテーション専攻における「身体技法研究」としては、中核に据えたいテーマである。
授業計画 1.身体技法研究の概要・導入         9.「気」について
2.「構え」の人間学              10.「気質」−(かたぎ)−「型」
3.ハビトスとしての「姿勢」         11.身体運動論
4.「しゃがみ姿勢」と身体           12.運動感覚に基づいた運動技術学習
5.気分と気配、身体の軸           13.運動経過の言説化
6.空間(間)と身体(気分)         14.まとめ:場における身体の位相
7.共通感覚、体性感覚について        15.試験
8.同調と合気
評価方法 試験はレポートとし、この評価を全体の60%とする。授業中の担当レポート発表、授業への取り組みに関する評価を全体の40%とする。
テキスト 『ファシリテーター・トレーニング』津村・石田編、ナカニシヤ出版
『〈身〉の構造』市川 浩
その他 参考書として以下の文献については、ここに掲載しておかなければならないであろう。
『身体』湯浅泰雄  『感性の覚醒』・『共通感覚論』・『哲学の現在』中村雄二郎  
『精神としての身体』市川 浩  『型』源 了圓
『しぐさの日本文化』多田道太郎  叢書『身体と文化』野村雅一他  『身ぶりとしぐさの人類学』野村雅一  『かくれた次元』エドワード・ホール  『私の身体は頭がいい』内田 樹  『宴の身体』松岡心平
『気の構造』赤塚行雄  『気 流れる身体』石田秀実  『学びの身体技法』佐藤 学
『からだを生きる』久保 健他、創文企画
『身体感覚を取り戻す』斎藤 孝、NHKブックス
『わざの伝承』金子明友
『五輪書』岩波文庫  『兵法家伝書』岩波文庫  『佚斎樗山集』(叢書江戸文庫13)