南山大学

 

【科目コード】97651

【科目名称】組織とメンタルヘルス

【担当者】高橋 弘司

【単位数】2                    【配当年次】1秋・2    【開講期】秋学期

 

【授業概要】

近年の組織において人的資源管理上の大きな問題となってきている従業員のメンタルヘルス管理について、様々なトピックについて制度的・測定的側面から学ぶ。メンタルヘルスが特に損なわれやすい従業員として、新入社員、女性および中間管理職が挙げられるが、彼らに限らずメンタルヘルス向上のための諸施策とその導入、メンタルヘルス状態の測定法とアセスメントについて、グループワークや事例研究を通じて理解を深める。

【到達目標】

   組織における従業員のメンタルヘルスの問題は、本質的に人的資源管理における「維持機能」に関するものであり、状況が悪化しているにも関わらず放置すれば後々大きな組織上の問題に発展するおそれがある。したがって、従業員のメンタルヘルス維持について人的資源管理担当部署が限られた予算範囲で、将来のフェイルセーフも含めて具体的にどのような制度を策定し、一定水準以上のサービスを提供し、さらにその質を評価していくのかも含めて受講者の実践的・理論的理解を深めていくことを目標として設定する。

【授業計画】

  

1.          組織におけるメンタルヘルス

(1)イントロダクション (2)従業員のメンタルヘルス概観 (3)職場におけるメンタルヘルスと人的資源管理との関連性

2.        メンタルヘルスのインパクト

(1)パフォーマンスに与える影響 (2)組織の生産性に与える影響

3.          メンタルヘルス制度の問題点と改善点

(1)これまでのメンタルヘルス制度:事例紹介 (2)メンタルヘルス制度設計における基本ポイント

4.        メンタルヘルスの諸相(1):ストレス

(1)ストレス・モデル (2)ストレスの身体症状 (3)ストレスの精神症状

5.          メンタルヘルスの諸相(2):精神科診断

(1)気分障害:大うつ病を中心とする抑うつ性障害 (2)精神病圏の諸疾病 (3)事例研究

6.        メンタルヘルスを中心とした企業内カウンセリング(1):方法論

(1)ロジャースによる「来談者中心アプローチ」 (2)コンサルテーションもしくはアドバイス (3)実証

7.          メンタルヘルスを中心とした企業内カウンセリング(2):プロセス実習

(1)いわゆる「インテーク」 (2)問題点の開示と同定・明確化 (3)カウンセリング方針 (4)問題解決 (5)実証

8.        評価(1):定量評価

(1)定量評価の諸概念 (2)妥当性と信頼性

9.        評価(2):定量評価の諸尺度

(1)諸尺度解説 (2)中間テスト

10.       評価(3):定性評価

(1)定性評価の諸概念 (2)定性評価の諸基準 (3)妥当性と信頼性

11.       メンタルヘルス評価における倫理的問題

(1)プライバシーと個人情報保護 (2)緊急時の対応 (3)事例研究

12.       メンタルヘルスに関する諸制度事例(1):偏見への対処

(1)周囲の偏見 (2)家族の偏見 (3)対処者の立場となすべきこと (4)事例研究

13.       メンタルヘルスに関する諸制度事例(2):通院・休職・復職

(1)通院が必要な場合 (2)休職への根回し (3)人事評価上の問題点 (4)復職制度とその効果

14.       メンタルヘルスに関する諸制度事例

(1)うつ病の再発 (2)家族・周囲の理解不足 (3)失敗例

15.       まとめ

(1)重要ポイントの再点検

 

【評価方法】

筆記試験 50

  期末試験 25

  中間テスト 25

提出物 20

  レポートなど

クラスへの貢献度 30%

   ディスカッション・ケーススタディ分析への参加度

【テキスト】

   本講義にとって単体で必要十分な日本語テキストが出版されていないため、未定とする。指定の際には、企業のメンタルヘルス制度、ストレスを扱った日本語文献をおおむね2冊程度参考文献として指示する予定である。必要な補足資料は講義中に配布する。

【参考文献】

  講義前・講義中に適宜紹介する。

【備考】

   受講者は、自分の所属先組織におけるメンタルヘルス制度について、差し支えない程度に開陳しなければならない。また、各回の講義に際しては必ず事前に予習(リーディング・アサインメントの読解、事例の分析など)を行い、講義中のディスカッションに備えておくことが大前提である。したがって、講義中の発言量が少ないと判断される受講者に対しては単位を与えない。実務経験の有無に関わらず実際の組織やマネジメント現場に即した発言は必須であり、実務経験のない受講者はさらに詳細な予習をすることが望まれる。