南山大学

 

【科目コード】97661

【科目名称】組織イノベーション(理論と成果測定)

【担当者】岸田 民樹

【単位数】2                        【配当年次】1秋・2                        【開講期】秋学期

 

【授業概要】

 本科目では、組織(Organization)は、組織化(Organizing)と構造化(Organized)からなるという立場に立って、この繰り返しの中から、組織のイノベーションが生じるプロセス(革新のプロセス)を分析する視点について、基礎的な理解を得ることを目的とする。

 そのために、第1に、組織学説を展望して、そこに、合理的モデルvs.自然体系モデル、およびクローズド・システム・アプローチvs.オープン・システムズ・アプローチというパラダイムの対立があることを明らかにする。第2に、こうしたパラダイムから見た「事実」がどのように違うかを、キューバ・ミサイル危機の事例によって分析する。第3に、こうした「諸事実」間の関連をどう解釈するかについて、多元的パラダイム論の立場から分析する。第4に、ゴミ箱モデル—進化モデル—状況適合理論という経時的なパラダイム変化を通じて、事例を分析する。すなわち、日本鉄鋼業における純酸素上吹き転炉(BOF)の導入と、3Mにおけるポスト・イット・ノート・パッド開発の事例を通じて、革新のプロセスの理論を模索する。第5に、多元的パラダイムを統合する2つの視点—経時的統合と共時的統合—を提示する。

【到達目標】

 上記の講義を通じて、多元的な視点から「事実」のさまざまな側面を観察し、第1に、イノベーションが正当化され、神話化されるプロセスがあること、を理解して、自分なりのケース作りに挑むことを目指す。

【授業計画】

  

1.  組織論のパラダイム(1)

(1)      合理的モデル (2)自然体系モデル (3)討論

2.  組織論のパラダイム(2)

(1)      クローズド・システム・アプローチ (2)オープン・システムズ・アプローチ

(3)討論 

3.  組織化—構造化とイノベーション

 (1)組織化のプロセス  (2)革新のプロセス (3)討論

4.キューバ・ミサイル危機の分析

 (1)合理的モデル (2)組織過程モデル (3)政治的モデル (4)討論

5.あいまい性

 (1)ゴミ箱モデル (2)討論

6.多義性

 (1)組織化の進化モデル  (2)ルースリー・カップルド・システム (3)討論

7.状況適合理論(1)

 (1)技術と組織構造  (2)討論

8.状況適合理論(2)

 (1)課業環境と組織過程 (2)討論

9.状況適合理論(3)

 (1)課業の不確実性と組織デザイン (2)討論

10.テンパスとホラ—組織の編成原理

 (1)テンパス=ファンクショナル組織 (2)ホラ=ライン組織

 (3)集権と分権   (4)討論

11.日本の鉄鋼業とBOFの導入のプロセス

 (1)ゴミ箱モデルによる解釈  (2)進化モデルによる解釈  (3)状況適合理論による解釈

12.3M社のポスト・イット・ノート・パッド開発のプロセス

 (1)ゴミ箱モデルによる解釈  (2)進化モデルによる解釈  (3)状況適合理論による解釈

13.組織化—構造化と革新のプロセス

 (1)組織論の枠組み  (2)討論

14.多元的主義的アプローチと解釈モデル

 (1)多元主義的アプローチ  (2)解釈モデル  (3)科学哲学

 (4)討論

15.統合の枠組みについて

 (1)経時的統合   (2)共時的統合   (3)討論

 

【評価方法】

講義への出席   30%

討論への参加   30%

レポート     40%

【テキスト】

授業時に文献・資料を配布する。

 

【参考文献】

山倉健嗣・岸田民樹・田中政光『現代経営キーワード』 有斐閣 2001年.

【備考】

 毎回講義60分、討論30分の予定で、授業を行う。講義を聴いて討論を行い、各自の理解度を、自分自身で確かめてもらいたい。レポートでは、各自でイノベーションに関する事例を選択して、どのようにそのイノベーションが正当化されていったか、その他の可能性はなかったのか、新しいイノベーションの可能性はあるのか、を考えてもらいたい。