南山大学

 

【科目コード】97829

【科目名称】環境の経済評価

【担当者】薫 祥哲

【単位数】2                    【配当年次】1秋・2    【開講期】秋学期

 

【授業概要】

環境資源管理あるいは環境政策が議論される中で、環境改善がどの程度の経済便益を一般消費者にもたらすのかを客観的に分析しようという試みはあまり進んでいない。その主な理由は、水資源や大気汚染の改善、あるいは動植物の保護問題に見られるように、消費者が価値を見出す環境資源を直接売買する市場が存在しない所にある。したがって環境財からの便益は多くの場合、市場の均衡価格や均衡消費量といった情報なしに推定されなければならない。本科目では、トラベル・コスト法、ヘドニック価格評価法、そして仮想評価法など、環境便益を非市場データから間接的あるいは直接的に評価するための手法を学ぶ。実際に環境便益を推定した事例を豊富にレビューし、受講生がこれらの手法を活用できるようにする。

【到達目標】

 環境の価値評価をすることの重要性を理解し、どのような評価手法が存在するのかを学ぶことによって、それぞれの手法の長所と短所を理解できるようになること。また、事例研究を通して、人々がどのように環境から価値を見出しているのかを理解する能力を獲得する。

【授業計画】  

1.         環境経済評価手法の概観

(1) 非市場評価法とは何か (2) 非市場評価法の必要性 (3) どのような手法があるのか

  2.  トラベル・コスト法

(1) 基礎理論 (2) トラベル・コスト法の適用例

  3.  トラベル・コスト法

(1) トラベル・コスト法の課題 (2) 観光行動の周遊特性 (3) 代替施設の存在 (4) 滞在時間の取り扱い

  4.  ヘドニック価格評価法

(1) ヘドニック価格法の理論 (2) ヘドニック価格法による計測例

  5.  ヘドニック価格評価法

(1) 便益計測モデル (2) 地価関数 (3) ヘドニック価格法の課題

  6.  仮想市場評価法(CVM

(1) CVMの理論 (2) CVMによる計測例

  7.  仮想市場評価法(CVM

(1) WTPWTAの乖離 (3) バイアス問題 (4) スコープ・テスト (5) 包含効果

  8.  コンジョイント分析

(1) コンジョイント分析の理論 (2) コンジョイント分析による計測例

 

  9.  コンジョイント分析

(1) コンジョイント分析の適用可能性 (2) コンジョイント分析の課題

  10. 離散選択分析

(1) 離散選択分析の理論 (2) 離散選択分析による計測例

  11. 離散選択分析

(1) ロジットモデルの適用 (2) 離散選択分析の課題

  12. 統計分析手法

(1) 回帰分析 (2) 統計的有意性

  13. 統計分析手法

(1) ロジットモデル (2) 統計プログラム

  14. 環境経済評価手法の展望

(1) 社会資本整備の費用対効果分析 (2) 存在価値 (3) 公平性と補償原理

  15. まとめと今後の課題

 

【評価方法】

クラスディスカッションへの参加・貢献度 20%

中間レポート 30%

期末試験 50%

【テキスト】

  大野栄治(編著)『環境経済評価の実務』勁草書房、2000

【参考文献】

  吉田文和・北畠能房(編)『環境の評価とマネジメント』岩波書店、2003

  鷲田豊明『環境評価入門』勁草書房、1999

  竹内憲司『環境評価の政策利用』勁草書房、1999

  肥田野登(編著)『環境と行政の経済評価−CVMマニュアル』勁草書房、1999

  肥田野登『環境と社会資本の経済評価』勁草書房、1998

栗山浩一『環境の価値と評価手法−CVMによる経済評価』北海道大学図書刊行会、1998