南山大学

 
指定
選必
期間
春学期
秋学期
単位
年次
2〜4
担当者
柳澤 田実
他の科目との関連
履修対象学科
副題 チャーリー・カウフマンの作品にみるポストモダンの「人間」観
授業概要 私たちは人間をいかなる仕方で捉え、人間として生きるための倫理をいかなる仕方で言い表すことができるのでしょうか。「ヒト」が他の動物とは異なる理性的な判断主体であり、それぞれが固有のアイデンティティ(自己同一性)に基づく価値や尊厳を持っていることは、今日、必ずしも自明なことではありません。このような前提に立ち、二〇世紀以降のいわゆるポストモダンの哲学や様々な芸術作品は、「人間」という概念そのものの問い直しを繰り返し行って来ました。この講義では、現在最も注目されている脚本家・映画監督の一人、チャーリー・カウフマン(1958〜)の映画作品を出発点に、かつて道徳や倫理の基盤となっていた人間の人格やアイデンティティへの疑念やそうした自己同一的な人間理解に代わる生物学・生態学的な人間理解について、現代哲学のテキストを参照しながら検討します。カウフマンの脚本を映像化したスパイク・ジョーンズやミシェル・ゴンドリーの映像作品についても付随的に扱う予定です。
学修目標 映画として表現された具体的なドラマを通じて、二〇世紀以降の哲学が提示した人間観を理解し、今日より生態学的(エコロジカル)な観点に基づく人間の実情に即した倫理が求められていることを学ぶ。また、映像を分析する作業を通じて、具体的な現象から抽象的・一般的な議論を構成し、それを自分自身の言葉で説得的に表現する力を養う。
授業計画 1.イントロダクション:チャーリー・カウフマンと彼の協働者たち
2.私が私である根拠はどこにあるのか?:「マルコヴィッチの穴」
3.他者になることについて:同
4.操作に曝される人間:同
5.猿に育てられたヒトは人間なのか?「ヒューマン・ネイチュア」
6.文化によって動物は人間になるのか?:同
7.脚色(アダプテーション)と脱構築:「アダプテーション」
8.進化における適応(アダプテーション)と共進化:同
9.入れ子化する世界と「私」の生:同
10.記憶と喪失:「エターナル・サンシャイン」
11.断片化する物語的自己同一性:同
12.仮想空間:「コンフェッション」から「シネクドキー」へ
13.消費社会におけるシミュラークルと創造性
14.まとめ:生きられる倫理のために
評価方法 期末レポート60%と出席40%。毎回部分的に作品鑑賞を行い、講義を聴いた上で、各自に分析をして頂きます。その内容に対する評価も最終評価に加えます。
テキスト 毎回プリント資料を配布します。また、参考文献は講義中に紹介します。
その他 多少刺激の強い描写を含む映像作品を観賞することになりますので、その点を了承の上、受講して下さい。また扱う作品は多少変更される可能性があります。