南山大学

 
指定
選必
期間
春学期
秋学期
単位
年次
2〜4
担当者
友岡 敏明
他の科目との関連
履修対象学科
副題 ナショナリズムと人間の尊厳
授業概要  人間の尊厳とナショナリズムは密接な関係にある。ナショナリズムといえばユダヤ人を迫害したナチズムや神社参拝を強制した戦前日本の軍国主義を連想しがちであるが、実は、「人間の尊厳」に根ざす部分があることを認識する必要がある。本講義ではこの連関を学習する。先ず、国家のプラスの価値を、福沢諭吉、夏目漱石、国連憲章、国際人権規約等で確認し、続いて、日本、チェコスロヴァキア、ユーゴスラヴィア、アイルランドなどを例にとって、他国支配から脱却して自己決定を達成した悩み多き現実の国家の歩みを歴史的に俯瞰する。
学修目標  世界的に認知された原則——「すべて人民は、その自決の原理を有する」(All peoples have the right of self-determination”)ことは人類社会のすべての構成員の固有の尊厳に由来するという原則——をよく理解し、次に、しかしながら、不確かな歴史進行の中で、人間の尊厳に基づくこの原則を追求することは、必ずしも幸福な事態の連続になるとは限らず、かえって人間の尊厳との抵触もありえることを認識し、もって人間存在の複雑さと人間の尊厳の実現過程に潜む逆説的なリアリティを理解する。
授業計画 具体的な講義のスキームは以下のようである。
(1)講義全体の方向の説明
(2)人間の尊厳と人権との違い
(3)人間の尊厳と国家の存在
(4)占領された日本の実態
(5)日本の独立の仕方(単独講和と全面講和)
(6)吉田茂の苦悩と先見の明
(7)チェコスロヴァキアの悲劇—冷戦構造の中に閉じ込められた“氷河期”—
(8)チェコスロヴァキアの“独立”—二つの革命とベラ・チャスラフスカ—
(9)ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の分解と泥沼—「自己決定」を求めたボスニアの場合—
(10)ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の分解と和解—クロアチアからのヒント—
⑪アイルランドと英国支配の成立(ユニオンまで)—
⑫アイルランドの要求への英国の不十分な対応(蜂起と自治法案)—
⑬アイルランド問題の潮目の変化—マイケル・コリンズの抵抗と苦悩—
⑭残された北アイルランド問題(国境確定から自治政府まで)
評価方法  問題意識への真摯な取り組み、したがって授業への取り組みにおける誠実度(20%)、および出席状況(10%)を参照し、定期試験における達成度(70%)で見る。
テキスト 無料配付の資料で進める。
その他  授業中携帯ばかり眺めている学生や私語する学生は受講しないよう望む。机にうつ伏して眠りこける学生も歓迎しない。