南山大学

 
指定
期間
秋学期
単位
年次
2〜4
担当者
杉本 一敏
他の科目との関連 刑法総論、刑事政策、刑事訴訟法
他学科履修
副題
授業概要 刑法各則(刑法典第二編「罪」)に定められている各種犯罪につき、その成立要件を概観し、理論上生ずる諸問題を検討します。秋学期は、主として「個人的法益に対する罪」のうち財産的利益に対する罪を網羅的に検討し、また「社会・国家的法益に対する罪」のうち、理論的に様々な議論のある「文書偽造罪」などを中心に取り上げます。なお授業においては、教科書・体系書に書かれている各項目についてひと通り概説するのではなく、とり上げる項目を取捨選択した上で、重要と思われる問題点について特に突っ込んだ理論的検討を加えていく、という方式を採りたいと考えています(授業で特に触れない事柄については、下掲の教科書等の該当部分を後で各自において読んでおいてもらうことになります)。
学修目標 刑法各則の各種犯罪規定につき、その保護法益や法的性格を分析することを通じて、単なる断片的・雑学的知識を得るに止まるのでなく、一定の体系的・理論的な理解に至ることを目指します。秋学期はまず、財産犯全体について何らかの体系的理解に達することを目指します。財産犯規定の解釈に際しては、民事法上の権利関係をどの程度尊重するべきか(民事法への従属性いかん)という、財産犯論全体に通底する理論的問題と、各種財産犯規定について、それらの相互関係を理論的に整理するという(より実践的な)問題とを、併せて検討する必要があります。この大きな2つの課題を同時にこなしていくというのがここでの学修目標です。その後、文書偽造罪、司法作用に対する罪(盗品関与罪と共に「犯罪の事後的庇護」に当たる犯罪類型です)について検討します。
授業計画 おおよそ以下のように進めていく予定ですが、進行状況に応じて所々項目を省いたり、予定していた検討内容を次回に持ち越したりすることがあり得ます。
1.財産犯総説
2.窃盗罪(奪取罪)の保護法益
3.占有の意義(窃盗罪と横領罪との区別)、不法領得の意思(奪取罪と毀棄罪との区別)
4.親族相盗例(可能ならば、不動産侵奪罪も検討する)
5.債権の自力執行(権利行使)と奪取罪、自救行為
6.強盗罪(恐喝罪との区別を含む)
7.詐欺罪
8.横領罪(1)(「横領」概念、諸問題(1):二重譲渡と横領、など)
9.横領罪(2)(諸問題(2):不法原因給付と横領、譲渡担保・所有権留保と横領、などを予定)
10.背任罪
11.盗品関与罪
12.文書偽造罪(1)(「偽造」概念を中心に)
13.文書偽造罪(2)(文書偽造の諸問題)
14.司法作用に対する罪
評価方法 学期末の定期試験で評価します。原則として出席はとりません。なお、場合によっては、学期中に任意提出のレポートを課すことがあり得ます(レポート課題の実施いかんは授業の進行状況などを見ながら検討するので、現時点では詳細未定です。教室での告知に注意して下さい。レポート課題を実施した場合には、提出されたレポートの内容を審査した上で、成績評価上の加点材料として考慮します)。
テキスト 西田典之『刑法各論』(弘文堂、 第4版補正版、2009)を指定します。また、毎回レジュメを配布します。講義は主として配布レジュメに沿って進め、その都度、必要に応じて教科書の参照を求めます(従って、講義の中で上記教科書の記述内容を網羅的に取り上げるということはありませんが、復習用・自習用としても、ぜひ持っておくことを勧めます)。
その他 授業には、六法、教科書、(既に配布した分の)レジュメを持参してください。授業中における教室内での私語は厳禁です。