南山大学

 
指定
選必
期間
通年
単位
年次
担当者
赤壁 弘康
講義題目
開講キャンパス
授業概要  学部でファイナンス関連科目を修得した既修者もいるでしょうが、このたび初めてファイナンスを学ぶことになった未修者もいると思われます。本講義は、ファイナンス関連科目未修の受講者を想定して、金融工学の基本的な考え方を学習することを目的とします。
 金融工学は、(現時点では結果が確定していない)将来に発生する利得=ペイオフのリスクをどのように把握すればよいのか、どのようにすればリスクをコントロールできるのかを考察する研究分野で、マーコヴィッツのポートフォリオ・セレクションに始まり、ブラック・ショールズ・マートンの連続時間におけるオプション評価法によって大きく変貌したと言われています。近年ではさらに、マルチンゲール測度の下での(デリバティブを含む)証券価格へと分析の中心を移しています。リスクは金融市場だけでなく社会生活のいたるところに存在するので、金融工学の考え方は、企業が発行する証券だけではなく、天候に左右される事業や環境問題、天然資源や観光資源の評価にも応用されるようになっています。
 「将来の不確実性に起因するリスク」を分析するためには、時間と不確実性を(同時に)扱うことのできる道具立て(=数学モデル)の準備、このような道具を経済学の問題に適用するための概念の構築、問題に対する適切で論理的に矛盾のない処理、得られた結果の経済学的な解釈、等々のステップを一段ずつ登っていくことが必要です。本講義では、いくつかの具体的なトピックス(デリバティブ評価、金利の期間構造、リアル・オプション評価)を金融工学がどのように分析・解決してきたのかを、ステップ・バイ・ステップで見ていこうと考えています。
 金融工学は数理的な研究分野なので、数学をまったく使わずに済ませることはできません。受講者は、微分・積分をはじめとする初等解析や確率・統計が出てくるだろうということは了解しておいてください。テキストは、いくつかある候補の中から受講者の皆さんと相談の上で決定したいと思います。
学修目標  現代ファイナンスの中心的考え方である資本資産評価モデルCAPMを詳細に論じ、次にCAPMの考え方を基礎として他のファイナンス理論(オプション評価理論、資本構成とMM理論、金利の期間構造、etc)を体系的に学ぶことを目標とします。
授業計画 《春学期》
1. 金融工学とは
2. 不確実性とリスク 確率変数と確率分布
3. 不確実性とリスク 期待値、平均・分散・標準偏差
4. ポートフォリオ理論 ポートフォリオ収益率
5. ポートフォリオ理論 リスクとリターン
6. ポートフォリオ理論 CAPM、市場の均衡価格、ベータ公式
7. ポートフォリオ理論 バリューアットリスク
8. 価格変動のモデル 二項価格モデル
9. 価格変動のモデル 収益率のモデル化
10. 価格変動モデル 証券価格と確率微分方程式
11. 価格変動モデル ブラウン運動
12. デリバティブと無裁定理論 デリバティブとは
13. デリバティブと無裁定理論 オプションの合成
14. デリバティブと無裁定理論 無裁定価格と複製ポートフォリオ
《秋学期》
1. デリバティブと無裁定理論 二項価格モデルによるオプション評価、複製ポートフォリオ
2. デリバティブと無裁定理論 二項価格モデルによるオプション評価、マルチンゲール確率
3. ブラック・ショールズのオプション評価理論 リスクの市場価格
4. ブラック・ショールズのオプション評価理論 リスクプレミアムとリスク調整
5. ブラック・ショールズのオプション評価理論 ブラック・ショールズの公式
6. ブラック・ショールズのオプション評価理論 オプションのリスク
7. ブラック・ショールズのオプション評価理論 リスク中立化法
8〜14. 債券価格、信用リスク、リアル・オプション(1)〜(7)
評価方法 授業中に課す小テスト、宿題ならびに学年末のレポートによって評価します。
テキスト 未定(受講者と相談のうえ決定したいと思います)
参考までに、過去の採用実績を列挙します。
2004年度
 Lamerton, D. and B. Lapeyre (1997) Introduction to Stochastic Calculus Applied to Finance. Chapman & Hall.(森平爽一郎監修『ファイナンスへの確率解析』朝倉書店)
 Capinski, M. and T. Zastawniak (2004) Mathematics for Finance, Springer.
2005年度
 Luenberger, D. G. (1998). Investment Science, Oxford.(今野 浩他訳『金融工学入門』日本経済新聞社)
2006, 2007年度
 木島正明 (2002)『金融工学』日経文庫
2008年度
 Kijima, M. (2003) Stochastic Processes with Applications to Finance. Chapman & Hall.
その他