南山大学

 

【科目コード】97536

【科目名称】経営倫理

【担当者】梅津 光弘

【単位数】2      【配当年次】1    【開講期】秋期隔週

 

【授業概要】

本科目では、80年代にアメリカを中心にして興隆した『経営倫理(Business Ethics)』という新領域の紹介をおこなう。最近では企業実務で倫理やコンプライアンス、またはCSRなどが注目を集め、担当部署や担当役員を設置するところもでてきている。授業では講義とケース・メソッドによる討論を組み合わせて、経営者としてこの問題をどうとらえ、対応していくか経営学、倫理学、哲学などの知見をまじえて21世紀の企業にもとめられる経営理念、経営倫理、社会的責任とはなにかを共に考えてみたい。

【到達目標】

将来組織のトップに立つ経営者として、自分の価値観や倫理観を考え直し、確固とした確信と判断力が参加者の中に与えられること、また組織の倫理観を浸透・徹底させるための制度化や手法を学ぶことを目的とする。

【授業計画】

1. 企業倫理の成立

企業倫理成立の歴史的成立過程をたどり、規範倫理学の概要を説明する。

2. 組織における倫理の役割
     ケース:インスピーチ社

3. 帰結主義の諸理論
     倫理的利己主義と功利主義の理論について説明する。

4. 顧客関連の企業倫理
     ケース:シアーズ自動車センター

5. 非帰結主義の諸理論 その1
     カントの義務論とその後の展開としてのステイクホルダー理論等を説明する。

6. コンプライアンス型の企業倫理
     ケース:マーティン・マリエッタ社

7. 非帰結主義の諸理論 その2
     社会契約説としての権利論とその後の展開を説明する。

8. 価値共有型の企業倫理
     ケース:AES社の蜂の巣システム

9. 非帰結主義の諸理論 その3
     John Rawlsの正義論と現代社会への応用を説明する。

 

10. 企業と情報倫理
     ケース:ロータス・マーケットプレイス

11. その他の規範理論
     アリストテレスの特論、ケアの倫理など現代倫理学の諸理論を説明する。

12. 製品の安全性
     ケース:ダウ・コーニング社

13. 多国籍企業をめぐる論理的課題事項

     ケース:中国におけるリーバイス社

14. 企業倫理の制度化 その1
     さまざまな制度化の試みを紹介しつつ、その日本的応用について考える。

15. 企業倫理の制度化 その2
     企業倫理の民間支援制度、および公的支援制度について考察する。

 

「ハーバードのケースで学ぶ企業倫理」リン・シャープ・ペイン著(慶應義塾大学出版会)を使用して、誠実な組織を構築する方法、戦略と倫理との関係、企業倫理の制度化とその管理・運営、を中心に講議を進めていく。はじめの数回の授業は「ビジネスの倫理学」の理論編を中心にして規範倫理学を概説し、その後はケースを中心に授業をすすめる。参加者の問題意識や希望によって、ケースの差し換え、補充も考慮する。

 

【評価方法】

中間試験(理論紹介が終わった時点で行う。形式は後日指示)30%

期末レポート(具体的なケースとその分析、政策提言、A4X1 締切TBA50%

クラス参加度20%

【テキスト】

「ハーバードのケースで学ぶ企業倫理」リン・S. ペイン著(慶大出版会、1999)

「ビジネスの倫理学」梅津光弘著(丸善 2002)

【参考文献】

「企業倫理と経営社会政策過程」E.エプスタイン著 (東京:文真堂、1996)

「企業倫理」 D.ステュアート著 企業倫理研究G訳(東京:白桃書房 2001)

「企業倫理学 2」T.ビーチャム,N.ボウイ著 梅津光弘監訳 (京都:晃洋書房,2001) 

 Thomas Donaldson, Pat Werhane.  Ethical Issues in Business. Prentice Hall1994.

 Tom Beauchamp, Norman Bowie. Ethical Theory and Business. Prentice Hall, 1993.

 このほか参考資料は教室でその都度紹介する。

【備考】

このクラスは基本的に土曜日午後に二コマずつまとめて行う。ケースはあらかじめ熟読しておく

こと。