【科目コード】97663
【科目名称】国際人事管理(東アジアでの実践と課題)
【担当者】
【単位数】2 【配当年次】1秋・2 【開講期】春学期
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【授業概要】
本科目は、生産現場に焦点をあて、日本的なヒューマン・リソース・マネジメントの海外移転のための実践的能力を深化させることを目的としている。
トヨタ自動車を事例として、先ず、その生産現場における高いパフォーマンスと生産労働者のモチベーションを実現するヒューマン・リソース・マネジメントシステムを明らかにする。次に、東アジアの生産拠点を事例に、そうしたマネジメントシステムの移転プロセスを解析する。その上で、主要国における文化・社会慣習との融合を含む日本的ヒューマン・リソース・マネジメントの実践にむけた課題を抽出し、併せて課題解決にむけた道筋を提示する。
【到達目標】
日本的ヒューマン・リソース・マネジメントシステムの海外での実践に際して、とるべきスタンスと実践に向けた課題解決能力を身につける。
【授業計画】
1.
トヨタ生産システム (イントロダクション)
トヨタの生産現場における高いパフォーマンスを実現する「トヨタ生産システム」の基本的考え方と仕組みを概観する。
2.
生産現場における労務管理システム
労務管理の視点から、トヨタ生産システムの高いパフォーマンスの基礎を成すマネジメントシステムについて解明を試みる。
3.
労働組合の参加的関与と労使関係
どうすれば高いパフォーマンスが持続されるのか、とくに労働組合の機能に焦点を当て、その参加的関与の機能と意義を考える。
4.
応用演習(1)
トヨタ生産システムのもたらす高いパフォーマンスの源泉、すなわち労務管理あるいは労使関係については様々な批判がある。第1回から3回の検討を受けて、受講者が、こうした批判について論評を試みる。
5.
マネジメントシステム移転のための条件整備
タイへのシステム移転の課程を観察する中から、システムの移転に関わって現地サイドでどのような苦労があったのか、システム移転の受皿づくりとも言うべき意識改革さらには企業風土改革の実体を明らかにする。
6.
移転プロセスの解明
意識改革、風土改革を経て、どのようなプロセスを経てマネジメントシステムの移転は実践されていったのか。現場の目線からその生々しい現実へのアプローチを試みる。
7.
応用演習(2)
トヨタ生産システムの移転は決して容易ではないと言われる。それはなぜなのか、受講者が海外における成功例あるいは失敗例を持ち寄り、その失敗あるいは成功要因について、全員でディスカッションを行う。
8.
現地におけるマクロ労働組合運動の実体
海外における労働組合は、果たして日本におけるような参加的関与を期待すべき主体であろうか。マクロ的視点からタイにおける労働運動の特徴を分析する。
9.
企業内労使関係の実体
同上の問題意識からタイにおける企業内労働組合の実体を明らかにするとともに、労使関係に関わるリスクをレビューする。
10.
応用演習(3)
受講者がタイの経営責任者であれば、どのような労務政策(ヒューマン・リソース・マネジメント)を採るべきかを検討。全員でディスカッションを行う。
11.
仕入先における労使関係の実体
タイにおける製造事例を取り上げ、T1、T2仕入先における労働組合の存在を前提としない広域の労使関係の実体を明らかにする。
12.
海外における労務管理の基本
タイトヨタとその仕入先にて明らかにされた労使関係と労務管理の実体から、組織形態(例えば労働組合の有無)に関わらず経営者としてとるべき「労務管理の基本」を確認するとともに、外部からの組織化攻勢への対応戦略にも言及する。
13.
日本本社労使の役割
現地での高いパフォーマンスを支える健全な労使関係の形成に向けて、本社サイドがとるべきスタンスと役割について考える。
14.
応用演習(4)
アジア地域での労使紛争の事例をもとに、労務政策(ヒューマン・リソース・マネジメント)の視点から受講者がその問題点を明らかにし、もし自分が経営責任者であればどのように対応すべきであったのかを簡潔にまとめ、全員でディスカッションする。
15.
総括ディスカッション
【評価方法】
授業計画に示す4回の応用演習レポートと試験に代わるレポートにて評価。
(応用演習当日業務等で出席できない場合にも、演習課題に関わるレポートを提出すること)
配点:(応用演習課題レポート内容10点 + 発言など参加態度5点)×4回
試験に代わるレポート40点
【テキスト】
その他、授業の都度必要な資料をレジメとして配布
【参考文献】
必要に応じて最新の文献を指示
【備考】
受講者の研究課題、関心の所在および理解度に即して、授業の進度ならびに各項目への重点配分等については、柔軟に調整見直しを行う。