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Ⅰ．授業の概要

①講義科目名（単位数）	法と人間の尊厳(政治の視点)（2単位）	②担当者名	友岡敏明
③科目の種類	「法と人間の尊厳」科目	④必須の有無	選択
⑤配当学年・学期	1〜3年（既修者コース：1・2年）・　春学期
⑥授業の概要	法曹に期待されるバックグラウンドとしての視野の涵養を政治分野における「人間の尊厳」の視点から目指す。多岐にわたる政治学上のテーマのうち、政治と「人間の尊厳」が出会う「民主政」をテーマに取り上げ、「民主政」の進展過程の同時代的な認識・追体験を基礎として、「民主政」一般およびわが国の「民主政」の課題の考察を三段階に分けて行う。第一段階では、「人間の尊厳」がいかにして政治の象面で「民主政」となるか（「人間の尊厳」と「民主政」との意味連関）を考える。第二段階では、「民主政」の原理的および制度的発展の過程と課題を、「民主政」先進地域である欧米について考え、第三段階では、「民主政」のわが国における応用を、①明治期におけるわが国の「民主政」との劇的な遭遇、②戦前と戦後を通じた民主政の曲折に満ちた進展の実態、③冷戦構造の崩壊と前後して始まったわが国政治史上の大きな屈折点である、政治改革期以降の「民主政」の展開と課題、の順序で考察を進める。
⑦到達目標	政治において人は「なぜ民主政を語るか」を「人間の尊厳」との意味連関で理解するとともに、 (1)欧米における「民主政」の先駆的な制度化過程、および (2) わが国における「民主政」の展開の実態と課題を理解し、わが国政治の将来を展望する知見を養う。
⑧成績評価の基準と方法	定期試験を基本とし（80％）、授業に臨む積極性（出欠＆受講態度）を勘案して（20％）、総合的に判定する。
⑨教科書	なし。
⑩参考文献・参考資料	プリントで配付する。
⑪履修条件その他の事項	なし。

Ⅱ．授業計画

回担当	①テーマ	授業内の学修活動			④授業時間外の学修活動等
回担当	①テーマ	②ねらい・内容		③授業方法・工夫	④授業時間外の学修活動等
1	「民主政」と「人間の尊厳」	「政治」と「人間の尊厳」が出会うところ「民主政」がある、の意味を考える。→ デカルト、カント、リンカーン、国際人権規約をつなぐ黄金糸は何か。		資料と解説による。時宜に応じてＱ&Ａ。	事前準備は不要。関連資料は席上配付する。
2	「永久革命」としての「民主政」	「民主政」は「永久革命」。→ ルソーとリンゼイの食違、ベルグソンと丸山真男の一致面を手掛りに。		資料と解説による。時宜に応じてＱ&Ａ。	各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。
3	「民主政」の陥穽	民主政の不成功例の教訓を考える。→ プラトン、西部邁、オルテガ・イ・ガゼットから。		資料と解説による。時宜に応じてＱ&Ａ。	各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。
4	「民主政」を支える柱（ⅰ）（人権）	人権とヘブライズムの伝統について考える。→ 聖書、ワットタイラーの一揆、アメリカとフランスの革命宣言、世界人権宣言を貫く線。		資料と解説による。時宜に応じてＱ&Ａ。	各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。
5	「民主政」を支える柱（ⅱ）（憲政の起源）	ヘブライの伝統に劣らず西洋に広がったゲルマン民族の政治原理（権力の有責性）→ 憲政論の大家モンテスキューと文明研究家ドーソンの説をパラフレーズしてみる。	資料と解説による。時宜に応じてＱ&Ａ。		各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。
6	「民主政」を支える柱（ⅲ）（憲政の展開）	ゲルマニズムの史的展開の概観（基本法と議会）→ スタッブスの所説とタキトゥス『ゲルマニア』、ヘンリー一世の憲章、マグナ・カルタ、権利の請願、権利章典、アメリカ独立宣言、日本国憲法に至る線。	資料と解説による。時宜に応じてＱ&Ａ。		各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。
7	「民主政」を支える柱（ⅳ）（政党）	「政党」制が「議会制民主主義を支える不可欠の要素」について。→ 古い殻を破った「産業革命」が生み出した仕組み。政党の本来の意味に照らして見えてくる民主政とそれを鑑にして分る似非（えせ）民主政。	資料と解説による。時宜に応じてＱ&Ａ。		各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。
8	英国における政党制の進展	「民主政」＝「政党政治」の等式が成立している典型例としての英国。→ 政党と政策中心の政冶、二大政党制と政権交代、政党政冶を支える諸要件（候補者選定、選挙資金、一票の重み、投票率、マニフェスト）。	資料と解説による。時宜に応じてＱ&Ａ。		各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。
9	英国政党政治の実際	作家にして保守党政治家ジェフリー・アーチャーは、英国政治をどう描いたか。	ビデオを参考に観る。		各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。
10	わが国における「民主政」受容の大方向	西洋モデルによる近代化に乗り出した明治維新以後の富国強兵ばかりに目を奪われず、これと併進した「民主政」の進行を理解する。	ビデオを参考に観る。		各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。
11	わが国における「民主政」受容の具体的事績	民主政受容の具体的進行→ 「五箇条の御誓文」から憲法制定と議会開設を貫く発展の線、そのキーワード「万機公論に決すべし」。	資料と解説による。時宜に応じてＱ&Ａ。		各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。
12	わが国における「民主政」の高揚と頓挫	民主政の進展とその失速 → 藩閥政冶と政党政治、普通選挙法、軍部の台頭、政党の消滅（大政翼賛会）。	資料と解説による。時宜に応じてＱ&Ａ。		各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。
13	わが国戦後の「民主政」の再生	戦後日本の民主政の特徴 → 政党の復活、冷戦と中選挙区制が作り出した、55年体制といびつな政党政治（圧倒的な一党優位体制、派閥、政治腐敗）。	資料と解説による。時宜に応じてＱ&Ａ。		各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。
14	「民主政」の実質化に向けた変革（ⅰ）（政治改革）	志向された戦後日本の民主政の転換 →瓢箪から駒、リクルート事件、第8次選挙制度審議会、「明治維新以来の大改革」（佐々木毅）。	資料と解説による。ビデオで戦後体制の変革の１コマに接する。		各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。
15	「民主政」の実質化に向けた変革（ⅱ）（政権交代）	「民主政」の成否 → 「政党」が利権と議席保持を求心力とする集合（クライエンティリズム）から政策集団への脱皮は？集団の政権交代可能な体制作りは？屋山太郎 vs 香山健一、佐藤誠三郎 vs 北岡伸一。	資料と解説による。時宜に応じてＱ&Ａ。		各自のノートおよび配付の資料を参考に復習する。