Ⅰ.授業の概要
①講義科目名(単位数) |
経済法(2単位) |
②担当者名 |
谷原 修身 |
③科目の種類 |
展開・先端科目 |
④必須の有無 |
選択 |
⑤配当学年・学期 |
2・3年(既修者コース:1・2年)・集中 |
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⑥授業の概要 |
本講義では、「経済法」と総称される法律グループの中でも、現代社会において最も重要な法律として位置付けられている「独占禁止法」を重点的に取り上げます。本講義の主要な内容として、 (1)「独占禁止法」制定の背景と「目的」に関する歴史的意義の解明、(2)「独占禁止法」の禁止対象とする①「私的独占」、②「不当な取引制限(カルテル)」、③「不公正な取引方法」の三類型に関する基本概念の理解と事例分析、(3)「独占禁止法」の専門的な執行機関である「公正取引委員会」の権限および活動状況の検討、(4)事業者の違反行為に対する私的訴訟の問題点および事例研究の4つであり、これらを徹底的に検討することを目的としています。 本講義は主として講義形式をとりますが、事例研究に関しては事前にテキスト・参考書・資料等を指定しておき、個別的な質問をした後に全体的な討論をすることを予定しています。 |
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⑦到達目標 |
本講義は、経済活動のグローバル化が著しく進展する現代の国際社会にあって、その経済取引の根幹を形成する国際的なルールを国内法化したものとしての「独占禁止法」を取り扱います。したがって、(1)各法科大学院におけるカリキュラムにおいても、民事法および刑事法の両域にまたがった「基本法」として位置付けられるべきものであり、(2)将来的には、その重要性が増すことは明らかです。そこで、(3)受講者が日常生活において頻発する「独占禁止法」関連事件に関心を持ち、自分なりに解決策を考える習慣を身につけることを期待しています。 |
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⑧成績評価の基準と方法 |
受講者の数が二桁以上の場合は筆記試験をし、一桁以下の場合は出席率とレポートの提出を求めます。 |
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⑨教科書 |
金井貴嗣・川濱昇・泉水文雄編『独占禁止法(第2版補正版)』(弘文堂、2008年) |
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⑩参考文献・参考資料 |
別冊ジュリスト『独禁法審決・判例百選(第6版)』(有斐閣、2002年) |
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⑪履修条件その他の事項 |
新司法試験選択科目「経済法」を受験することを予定している者、「経済法」に興味を抱いている者の受講を希望する。 |
Ⅱ.授業計画
回 担当 |
①テーマ |
授業内の学修活動 |
④授業時間外の学修活動等 |
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②ねらい・内容 |
③授業方法・工夫 |
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1 |
「独占禁止法」制定の背景・意義 |
①「経済法」の概念 ②「独占禁止法」制定の背景—資本主義経済体制の矛盾 ③占領政策の特質—経済民主化政策 |
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第二次世界大戦に対する史的な観点からの分析力を養うこと。 |
2 |
「独占禁止法」の「目的」の検討 |
①「アメリカ連邦反トラスト法」の「目的」論争 ②「独占禁止法」の「目的」論争 ③判例の展開 |
日米の法体系の相違点を明らかにする。 |
アメリカ合衆国の法体系に関する予備知識を身につけること。 |
3 |
「独占禁止法」の基礎概念の検討 |
①法主体—「事業者」「事業者団体」②「競争の実質的制限」③「一定の取引分野」④事例研究—「私製年賀葉書業者事件」(最高裁平成10・12・18) |
事例を題材にして、討論をする。 |
事前に、事件の概容を理解してくること。 |
4 |
「独占禁止法」の禁止行為の検討 |
①「競争」と「独占」の概念②「私的独占」の分析 ③「不当な取引制限(カルテル)」規制の必要性
④「不公正な取引方法」の行為類型 |
「経済学」と「法学」の接点に位置する問題の理解を容易にするように工夫する。 |
資本主義経済体制における経済的取引に関する基本的な考え方を理解すること。 |
5 |
「公正取引委員会」の存在意義 |
①設置の背景と問題点 ②組織と権限—「公取委中心主義」の意味
③執行手段の解明 ④調査権限に関する平成17年改正犯則調査権限 |
「公正取引委員会」のホームページ等の資料を使って、理解しやすいものとする。 |
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6 |
「独占禁止法」の刑事的執行制度 |
①刑事罰規定の概要 ②公正取引委員会の「専属告発制度」③事例研究—「業務用ラップ価格協定事件」(東京高裁平成5・5・21) |
事例を題材にして、討論をする。 |
事前に、事件の概容を理解してくること。 |
7 |
「独占禁止法」の民事的救済制度 |
①民事的救済制度の必要性—「私的エンフォースメント論」の高揚
②差止請求制度の創設(平成12年) ③損害賠償制度の意義 |
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8 |
損害賠償制度に伴う重要問題 |
①「独禁法25条訴訟」と「民法709条訴訟」の競合関係 ②損害額算定に関する問題点
③「民事訴訟法248条」創設の意義 |
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9 |
「独占禁止法」における重要問題の検討(1)—「持株会社」の規制 |
①「持株会社規制」の歴史的展開 ②「持株会社の解禁」(平成9年)の意義 ③「持株会社規制」の問題点 |
最近の「持株会社」形態の実例を分析 |
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10 |
「独占禁止法」における重要問題の検討(2)—「合併」の規制 |
①「合併」規制の必要性 ②「合併」の規制基準—「合併ガイドライン」の日米比較 ③事例研究ⅰ「八幡・富士製鉄合併事件」(公取委審決昭和44・10・30) ⅱ「JAL・JAS統合事件」(公取委判断平成14・4・26) |
事例を題材にして、討論をする。 |
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11 |
「独占禁止法」における重要問題の検討(3)—「入札談合」問題 |
①「談合体質」の分析 ②「談合」規制の必要性 ③平成17年改正-「課徴金制度」の改正④事例研究ⅰ「社会保険庁入札談合事件」(東京高裁平成13・2・8) ⅱ「協和エクシオ事件」(公取委審決平成6・3・30) |
事例の具体的な検討に主力を注ぐ。 |
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12 |
「独占禁止法」における重要問題の検討(4)—「抱き合わせ販売」規制 |
①「抱き合わせ販売」の定義 ②規制の要件 ③事例研究—「マイクロソフト事件」(公取委審決平成10・12・14) |
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「独占禁止法」における重要問題の検討(5)—「再販売価格の拘束」 |
①「再販売価格維持制度」の歴史的展開 ②違法性の要件 ③適用除外—「書籍・新聞等の定価販売」④「ヤミ再販」の典型的な例—メーカーによる卸・小売価格の拘束 ⑤事例研究—ⅰ「資生堂販売事件」(最高裁平成10・12・18) ⅱ「NTTドコモ事件」(公取委審決平成9・12・16) |
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「独占禁止法」における重要問題の検討(6)—「優越的地位の濫用」 |
①「優越的地位の濫用」の定義 ②規制の必要性—我が国特有の規定 ③事例研究ⅰ「三越事件」(公取委審決昭和57・6・7) ⅱ「ローソン事件」(公取委審決平成10・7・30)④下請法 |
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15 |
「不当景品類及び不当表示防止法(景表法)」の概要 |
①立法趣旨の解明 ②規定概要 ③事例研究ⅰ「主婦連ジュース訴訟事件」(最高裁昭和53・3・14) ⅱ「カーポートトウェンティワン事件」(公取委排除命令平成4・2・20) ③「まるき自動車事件」(公取委排除命令平成12・3・13) |
事例に対する討論形式を中心にする。 |
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