南山大学

 

Ⅰ.授業の概要

①講義科目名(単位数)

地方自治法(2単位)

②担当者名

豊島 明子

③科目の種類

展開・先端科目

④必須の有無

選択

⑤配当学年・学期

2・3年(既習者コース:1・2年)・秋学期

⑥授業の概要

地方公共団体の諸活動は、本来、住民の権利実現を目的として、全国統一的な国法秩序の枠内に位置しながらも、これらの法の自主的解釈・運用や当該地域の諸課題に有効に応えるための自主立法の取り組みによって、様々な創意工夫を試みつつ、繰り広げられるべきものである。この意味において、地方行政は、国のそれと比較して、しばしば応用的・実践的で創造的・先進的な活動を展開しうる点に、特徴がある。

これらの点に留意しつつ、地方自治法の各項目について講義を行う。なお、講義は、教員からの講義形式を基本とするが、適宜、その都度とりあげる判例や事例について受講生諸君の知識や見解を問うような質疑応答形式も盛り込みながら進める。

⑦到達目標

(1)地方自治について、地方自治法を中心に、その仕組みが理解できる。

(2)判例をもとに、地方公共団体の諸活動の法的統制の現状を理解し、種々の法的紛争解決のあり方を考えることができる。

(3)地方公共団体では、近年、自らの法務能力を駆使して住民の権利実現と地域的課題の解決を図るため、「自治体法務」・「政策法務」の重要性が説かれている。法曹として、地方公共団体が独自の「法務」を展開できるよう、これらを支援するために必要な知識と思考力が修得できる。

(4)近年の「地方分権」政策の特徴と、これによる立法動向を理解し、今後の地方自治のあり方について批判的・発展的に考えることができる。

⑧成績評価の基準と方法

2回の小テスト(15%×2回=30)、平常点(出席状況と質問への回答=10%)、学期末試験(60%)によって評価します。

⑨教科書

室井力・原野翹編『新現代地方自治法入門〔第2版〕』(法律文化社、2003年)

⑩参考文献・参考資料

宇賀克也『地方自治法概説〔第2版〕』(有斐閣、2007)

『地方自治判例百選〔第3版〕』(有斐閣、2003年)

なお、新しい判例や先進的な条例等については、適宜、参照方法を指示したり、資料としてプリントを配布する。

⑪履修条件その他の事項

特になし

 

Ⅱ.授業計画

担当

①テーマ

授業内の学修活動

授業時間外の学修活動等

②ねらい・内容

③授業方法・工夫

1

地方自治の基本理念と地方公共団体

(1)     地方自治の基本理念を理解する。

(2)     地方自治の法源を理解する。

(3)     90年代以降の地方自治法の変遷を理解する。

(4)     地方公共団体の法的地位と広域行政の仕組みを理解する。

講義形式で行う。

教科書第12章を

読んでおくこと。

住民の権利

(1)     住民の意義と、住民の権利の類型を理解する。

(2)     住民の参政権に関する諸制度を理解する。

(3)     外国人たる住民の法的地位を理解する。

前回の復習のための質疑応答と、講義の形式で行う。

教科書第3章「住民

の参政権」と、あら

かじめ提示された

判例を呼んでおく

こと。

直接民主主義と住民参加

(1)     直接民主主義に関する諸制度の類型を理解する。

(2)     住民投票制度と住民参加制度について、その仕組みと法的課題を理解する。

(3)     住民参加の制度化と既存の行政手続条例との関係を理解する。

講義形式で行う。

教科書第3章「直接

民主主義」「住民参

加」「行政手続」の

部分を読んでおく

こと。

4

自治体情報公開の制度

(1)     情報公開条例の制定・普及の経緯を理解する。

(2)     情報公開条例の基本構造を理解する。

(3)     情報公開に関する政策法務を考える。

前回の復習のための質疑応答と、講義の形式で行う。

教科書第3章「情報

公開制度」の部分を

読んでおくこと。

5

情報公開条例の解釈・運用

(1)     情報公開条例の判例を理解する。

(2)     情報公開条例の解釈・運用のあり方を考える。

裁判例に関する質疑応答と、講義の形式で行う。

あらかじめ提示さ

れた判例を読んで

おくこと。

6

個人情報保護

(1)       個人情報保護条例の制定・普及の経緯を理解する。

(2)       条例の基本構造と解釈・運用のあり方を、判例とともに、理解する。

講義形式で行う。

教科書第3章「個人

情報保護制度」の部

分と、あらかじめ提

示された判例を読

んでおくこと。

7

普通地方公共団体の事務と自治立法権(1)

(1)       事務区分と事務配分について理解する。

(2)       条例制定権と憲法上の法律事項の関係を理解する。

(3)       条例制定権の限界について、その問題の所在を理解する。

(4)       条例制定権の限界に関する伝統的学説と、その克服過程を理解する。

講義形式で行う。

教科書第4章と第5

章「自治立法権」を

読んでおくこと。

8

自治立法権(2)

(1)     様々な規制条例の類型を理解する。

(2)     条例制定権の限界に関する判例と、学説の展開を理解する。

(3)     規則と要綱をめぐる諸問題を理解する。

講義形式で行う。

教科書第5章「要綱

行政」の部分と、あ

らかじめ提示され

た判例と条例を読

んでおくこと。

9

議会と執行機関

(1)     議会の法的地位・権限・組織・運営について理解する。

(2)     執行機関について理解する。

(3)     議会と長の関係を理解する。

講義形式で行う。

教科書第6章を読

んでおくこと。

10

公の施設

(1)     公の施設の利用関係について理解する。

(2)     指定管理者制度について理解する。

(3)     民営化の法的統制可能性について、事例をもとに考える。

事例に関する質疑応答と、講義の形式で行う。

教科書第7章と、あ

らかじめ提示され

た判例を読んでお

くこと。

11

住民監査請求と住民訴訟(1)

(1)     住民監査請求の対象・手続を理解する。

(2)     住民訴訟制度の類型・対象・手続を理解する。

(3)     監査請求前置主義について理解する。

講義形式で行う。

教科書第3章「住民

訴訟」と第8章「財

政の意義と基本原

則」の部分を読んで

おくこと。

12

住民訴訟(2)

(1)     「財務会計行為」と、これと先行行為の関係について理解する。

(2)     「当該職員」について理解する。

講義形式で行う。

あらかじめ提示さ

れた判例を読んで

おくこと。

13

住民訴訟(3)

(1)     各号請求の論点を、判例とともに、理解する。

(2)     地方財務の運営のあり方について、理解する。

事例に関する質疑応答と、講義の形式で行う。

あらかじめ提示さ

れた判例を読んで

おくこと。

14

地方公共団体の契約

(1)     補助金交付について理解する。

(2)     調達契約のあり方について理解する。

講義形式で行う。

あらかじめ提示さ

れた判例を読んで

おくこと。

15

国と地方公共団体の関係

(1)     普通地方公共団体に対する国の関与の制度(関与類型・関与の基本原則・手続)を理解する。

(2)     国と地方の間の係争処理の仕組みを理解する。

講義形式で行う。

教科書第9章と、あらかじめ提示された判例を読んでおくこと。