南山大学

 
指定
期間
夏期後半
単位
年次
2〜4
担当者
染谷 昌義
他の科目との関連
他学科履修
副題  知覚の哲学入門—錯覚論法を越えて
授業概要  水の入ったコップに一本の割り箸を入れてみる。このとき割り箸は、「曲がって見える」。しかしここで私が「割り箸は曲がったよ」と判断したとすれば、この私の判断は誤っている。なぜなら、割り箸は「曲がっていない」からだ。では、曲がって見えるという私の知覚は、箸は曲がっていないという世界の正しいあり方を反映していない「錯覚」ということになるのだろうか?錯覚だとすると、このとき私は何を見ていたのだろうか?「本当の箸」ではなく、箸の「似姿」を見ていたのだろうか?だとすると、錯覚ではない「正しい」知覚とは、水に入れた箸が真っ直ぐに見えることなのだろうか?
 知覚という外界を認識する心のはたらきには、以上のようなトリックめいた「哲学的問題」が控えている。この講義では、錯覚論法を中心にした知覚にまつわる哲学的問題を、ときに心理学や認知科学の知見を交えながら検討し、問題自身の妥当性の是非にまで遡って解決・解消法を考えてみたい。
学修目標  次の三点を目標とする。(1)錯覚論法とはどのような議論なのか説明できること。(2)錯覚論法を回避あるいは解消する議論を二つ以上説明できること。(3)哲学的議論とはどのように行われるものなのかを味わい、日常を哲学的に考える視点を持つこと。
授業計画 1.講義概要・方法、評価方法の説明と資料配布
2.知覚錯誤とは何か(1)—知覚の相対性、錯覚論法、幻覚論法
3.知覚錯誤とは何か(2)—二つの環境仮説、桶のなかの脳
4.知覚される対象—実体、第一性質、第二性質
5.現象主義
6.知覚の副詞説
7.知覚の志向説、現象学的知覚論
8.自然的実在論(素朴実在論)と知覚の因果説
9.大森荘蔵の知覚論—脳透視、過去透視、鏡像論
10.知覚と知覚判断—経験的判断の正当化問題
11.知覚の科学とその問題(1)—知覚の計算理論
12.知覚の科学とその問題(2)—生態学的知覚論
13.知覚の科学とその問題(3)—身体化された認知
14.まとめ
授業時間外の学習(準備学習など) 初回を除き、毎回授業時にその日の講義内容を確認する小問題を出題します。それを次回授業時までに行い、復習としてください。
評価方法 毎回の授業時に示される課題が40%、試験が60%
テキスト 特に指定しません。参考書は授業内で適宜紹介します。
その他 知覚の哲学って何を問題にするのかなと思ったら以下を手にとってみてください。大森荘蔵『流れとよどみ』(産業図書)、下條信輔『<意識>とは何だろうか』(講談社現代新書)