南山大学

 
指定
期間
秋学期
単位
年次
2〜4
担当者
阿部 泰郎
他の科目との関連
他学科履修
副題 〈聖なるもの〉と〈魔〉の精神史
授業概要  日本文化の深層には、あたかも光と闇というべき両義的な世界が横たわっている。古代から中世にかけて、仏教の影響のもとで顕われる〈聖なるもの〉としての仏神の姿はたらきは、縁起や霊験記にあざやかに描きだされる。一方、物語や説話伝承には、〈聖なるもの〉の裏側にうごめく〈魔〉の存在とその世界が広がっている。「天狗」と呼ばれる彼ら魔界の住人たちをイメージした中世人の心性とは、どのようなものであったのか。〈聖〉と〈魔〉の両面にわたり、互いの葛藤相克のありさまと、それがつくりだす独特の世界像を、中世の文芸と美術を対象に考察する。
学修目標  中世日本の文芸、特に物語や説話とその絵巻や芸能などにおける宗教的世界のなかでイメージされる神仏のうち、代表的な対象として「生身の仏」を取り上げ、それがどのように〈聖なるもの〉の表象であるのか、それをテクストを読みながら考察する。同じく、説話伝承に登場する「天狗」やその領域としての「魔界」を描く作品を分析し、その世界像と〈魔〉の意味を問う。このように、二つの対照的な方向から中世的世界と中世文芸への理解を深め、その形式や享受を支える人間精神への想像力と洞察を培う。
授業計画 ○生身の仏とその伝承
1.傷付き流血する仏像の奇蹟—『今昔物語集』の二つの観音霊場縁起。
2.三国伝来の生身如来の流伝—善光寺へ光三尊弥陀如来と清涼寺栴檀瑞像釈迦の縁起。
3.生身の仏を希求する聖人達—性空上人と遊女。
4.生身と化した聖人—『撰集抄』の覚鑁。
5.代受苦する仏の説話と絵巻—泣不動縁起と頬焼阿弥陀縁起—『とはずがたり』への投影。
○魔王と魔界の伝承
6.第六天魔王と中世日本の創世神話『沙石集』の神と仏。
7.三国伝来の天狗譚の系譜—『是害坊』絵巻とその展開。
8.天狗と化した聖人達—『七天狗絵』成立の背景。
9.天狗=魔王と化した王—『保元物語』の崇徳院伝承と西行
授業時間外の学習(準備学習など) 講義中に言及した参考文献を読んだり、祭礼・行事などを見学してほしい。
評価方法  講義中に提示した課題によるプレ・レポートおよび本レポートを中心とする総合評価。
テキスト  講師が用意した資料のプリントを配布する。
その他