南山大学

 

【科目コード】97721

【科目名称】文化メセナ

【担当者】広瀬 徹

【単位数】2      【配当年次】1秋・2     【開講期】秋学期

 

【授業概要】

前提として、アート概念を日本・西欧との比較において、まず定義する。以下、次のような観点から授業を構成する。①文化支援の国際比較、②文化支援の類型分析、③日本における文化支援の歴史的変遷、④現代における国家・民間企業・財団による文化支援の問題点と企業メセナの方向性、⑤アート・マネジメントの概要、⑥社会貢献と文化支援。アート作品やインターネット情報も紹介しながら、その背後に存在する文化支援を実感体験させる機会を授業の中でつくっていく。

【到達目標】

文化芸術に関する一般概念について理解を深め、文化・文化支援に関する基礎データを読み取る能力を高める。文化メセナと近縁の概念についても関係性を認識させ、文化メセナの基本構造について理解させる。企業による文化メセナ、文化支援の意義に関する議論をふまえ、文化に関する戦略策定についての基本要件を把握させ、政策提言も行なえる能力を養っていく。

【授業計画】

 

1.        「文化」「アート」概念の定義とメセナ

    「文化」と「アート」という抽象的な概念を、アート作品を提示しながら、日本・西欧の比較に                 おいて定義する。メセナの一般概念と文化、アートの関係を明確にする。アートの領域設定、

                   コンテンツという文化、周縁概念としての「教養」「趣味」についても概説する。

  2.  メセナおよびパトロネージの形態と歴史

       フィランソロピーとは異なる意味領域のメセナ、パトロネージについて、文化支援の支援者・支               援形態の多様性という観点から事例紹介を行ない、パトロネージの意義について理解させる。

                   また文化支援の歴史的変遷についても概説する。

  3.  文化と経済

       日本における文化産業・文化消費を俯瞰し、文化と経済の構造的連関を説き、メディアの役割に               ついても言及する。またサービス貿易における文化の移出入について概説し、現代日本の文化特   性について理解させる。

  4.  文化形成と組織・制度

       文化形成に関わる組織(政府・公共団体・企業・民間組織)や個人の、機能と関与構造について               理解させる。また文化関係の法令・サービスについても概説する。

  5.  国の文化政策

       文化政策の国際比較を通し、それぞれの国の文化特性を認識させる。文化政策およびその決定プ               ロセスを類型化し、行政の役割について議論しながら理解させる。

  

6.  地方自治体の文化政策

       自治体文化予算の推移と構造、「ハコモノづくり」から「まちづくり」への政策転換、地域文化                 と地域メセナの活動、自治体文化政策の今後について概説する。

  7.  実業家と文化支援

       明治期以降の実業家による文化支援を紹介する。澁澤栄一、高橋掃庵、益田孝、平岡吟舟などの               人物群と「数奇者」文化の内容についても認識させ、企業家のエートスと文化との関連について     理解を深める。

  8.  企業経営と文化メセナ

    「企業活動にとって必要要件とされる文化メセナ」という命題を、ステークホールダーとの関係                 から、またCSR(企業の社会的責任)の観点から解説する。「企業と文化」について、事例(セ       ゾン・グループ)を提示し議論する。

  9.  企業メセナの発祥と変遷

       日本および海外における企業メセナ活動を概括し、企業の文化に対する態度について、その多様               性を理解させる。

  10.  企業のメセナ意識と活動実態

    「企業メセナ白書」のデータをもとに、1990年代以降の、メセナに対する企業の意識と活動実態                を定量的に把握させる。

  11.  企業メセナ活動事例

       企業メセナの手法を概念モデルで理解させる。トヨタ自動車、資生堂の企業メセナ活動を事例と               して提示する。

  12.  NPOとメセナ

       日本のNPO活動全般と、芸術文化を活動対象にしたNPOについて概説し、NPOの芸術文化へ                 の関与事例を紹介する。併せてNPOと財団との関係についても理解を進める。

  13.  アート・マネジメント

       アートに関わる組織・団体(オーケストラ・劇団・美術館・コンテンツ制作会社など)の経営実               態に関する資料・データを読み取り、芸術文化固有のマネジメント手法について理解を深める。

   14.  コンテンツ・ビジネスと芸術文化

                   コンテンツ産業をクリエーティブ・インダストリーとして捉え、コンテンツを創造する芸術文化             の産業創出力を解説する。

  15.  文化とメセナに関する総括ディスカッション

       14回までの講義の中で指摘した、主要な論点を整理・提示し、「文化とメセナ」の将来動向につ                いて議論させる。

【授業時間外の学習(準備学習など)】

1.        いろいろなジャンルの芸術文化に日頃から興味・関心を持って接触すること

2.        企業あるいは種々の組織体が主催・支援している芸術文化活動について、日頃から興味・関心を持って観察しておくこと

3.        毎回の授業に配布する資料について、実際の芸術文化活動を参照しながら、復習しておくこと

【評価方法】

レポート 80%

15回の講義終了後におけるレポート提出

  クラスへの貢献度 10%

    授業中のディスカッションへの参加態度と発言内容

  リアクション・ペーパー 10%

    毎回授業終了時に記載する授業集約レポート

【テキスト】

毎回講義資料を作成・配布する。

【参考文献】

多岐にわたるので、適切な参考文献を逐次講義の中で紹介する。