南山大学

 

【科目コード】97809

【科目名称】日本的経営

【担当者】竹野 忠弘

【単位数】2      【配当年次】1秋・2     【開講期】秋学期

 

【授業概要】

日本的経営について、日本の製造業における固有の生産管理方式という側面から、「トヨタ生産方式」および「トヨタウェイ」を事例として解説する。

いわゆる「日本的経営」は、従来、日本における人事労務管理の分析によって展開してきた。すなわち、欧米型の職位職層別序列、流動的雇用関係、職種職能別組合による人事労務管理に対して、「日本的経営」は、年功序列、終身雇用、企業内組合を特徴としてきた。

本講では、こうした「会社=社会」という固有な人事労務管理の基盤にある、日本の製造現場における、固有の生産管理方式について、解説と講読によって理解を深める。

まず、工学の諸分野および様々な製品のできる製造工程、いわゆる製造のサプライチェーンについて解説する。

次に、製造現場の問題点=生産管理上の課題について、ゴールドラット著『ザ・ゴール』ダイヤモンド社の講読を通じて理解する。講読においては、まず受講者各自全員に同書を読書してもらい、工場現場を擬似体験し、人を組織し製造工程を運営していくことの難しさについて理解する。さらに講師がfacilitateするグループワークによって、読後の「体験」を受講者間で共通の「経験知」に高めていく。すなわち、①本書の問題提起、②それに対する本書の解答、③教訓、④本書に残された生産管理論としての課題について、受講者各自の読書体験をもとにまとめていく。

生産管理(Industrial Engineering )および「改善」からなる「日本的経営」について解説する。生産管理体系は、欧米の大量生産工場における「能率」向上のための管理活動の中から生まれた。一般的に作業管理、工程管理、在庫管理、品質管理、物流管理からなる。これに対して日本では、こうした生産管理体系を原価低減・「効率」改善を実現するための手段・道具として取り入れ独自に再構成した。大野耐一著『トヨタ生産方式』を軸に、生産管理手法と改善との関係を理解する。

さらに、この改善活動が全社的な活動として動機づけられ組織的に展開できる背景はなにか、受講者とともに分析していきたい。特に、冒頭の「いわゆる日本的経営=日本の人事労務管理」と連携して、改善がどのように動機づけられているのか、ジェフリー・K.ライカー『ザ・トヨタウェイ』を読みながら考えていく。

最後に講義で学んだことを踏まえて、日本的人事労務管理と生産管理からなる日本的経営をいかにグローバル経営に役立てていくのか、各自で経営戦略プランをまとめていく。

【到達目標】

   欧米型の「能率」・大量生産本位・高付加価値・販売主導の「市場取引のための経営」に対して、「効率」・後工程取り・原価低減・買い手本位の「生産原価低減のための経営」という視点から、経営や経済を見る眼を学ぶことが、本講義の目標である。換言すれば、「日本的経営」・日本の職場を見直し、市場競争頼みの政策運営に対する代案をグローバルに提起していくことが目標である。

 

【授業計画】  

1.        はじめに:生産管理工学から見る「日本的経営」講義の進め方

2.        問題提起:日本における人事労務管理の概要と生産管理工学との連携

3.        解説:工学の諸分野と製品のできる製造工程

4.        『ザ・ゴール』のグループワーク:製造現場の問題点と生産管理上の課題

5.        解説:生産管理工学(Industrial Engineering )と日本的生産管理

6.        論説:欧米と日本の経営思想=VE観の相違:市場主義対原価主義

7.        中間試験:『トヨタ生産方式』の用語の理解

8.        解説:トヨタ生産方式と原価管理:佐吉「自働化」と大野「改善」

9.        解説:トヨタ生産方式と在庫管理:喜一郎「ジャストインタイム」と大野「かんばん」

10.     解説:トヨタ生産方式とVE:後工程取り=原価改善=効率化の思想

11.     『トヨタウェイ』のグループワーク(1):人事労務管理と生産管理方式との連携

12.     『トヨタウェイ』のグループワーク(2):日本的経営のグローバル適用の要点

13.     講義研究発表会(1):「日本的経営のグローバル適用プランの提案」:レポート提出

14.     講義研究発表会(2):「日本的経営のグローバル導入プランの提案」

15.     講義のまとめ:「日本的経営」のグローバル化の展望:レポート受理

【授業時間外の学習(準備学習など)】

    テキストは、全体をまず一読し、次いで各回で扱う章を改めて読みなおして講義にのぞむこと。

【評価方法】

①邦文文献の読書、②講義の良好な受講状況およびグループワークへの参加・貢献、③中間テスト受験、④期末報告レポート課題提出を、いずれも単位修得の必要条件とする。いずれかひとつでも欠く場合は、単位認定をしない。4項目すべてを満たした受講者について、全て同じ25%のウエイトで成績評価を行う。

【テキスト】

テキストは、以下の3種4冊。

①エリヤフ・ゴールドラット著三本木亮訳『ザ・ゴール』ダイヤモンド社 (※『ザ・ゴール』と間違わないように)。

②大野耐一『トヨタ生産方式』ダイヤモンド社

③ジェフリー・K・ライカー著稲垣公夫訳『ザ・トヨタウェイ(上)』および『同(下)』日経BP社 (上巻と下巻の2冊とも必要)。

【参考文献】

製造業の工程間分業や生産管理工学の概説書については、講義の中で適宜紹介する。

【備考】

   テキスト文献はいずれも必読。講義ならびにグループワーク・演習は、いずれもテキストを読んできたことを前提に実施します。