南山大学

 
指定
期間
春学期
秋学期
単位
年次
3
担当者
上野 宏
他の科目との関連  私の「国際開発論」は必須。2年次でミクロ経済(第1に必要)とマクロ経済(第2に必要)を履修していることが望ましい。これらを履修していない人は3年次でこのプロジェクト研究と同時に履修して欲しい。更に、総合政策数量的アプローチを取れれば、なお良い。
他学科履修 不可
副題  開発経済学・経済発展論:途上国の経済開発の研究
授業概要  ゼミナール形式の少人数教育で専門領域について理解を深め、卒論計画(卒論趣意書、3年秋学期)と第1回卒論(冬休み)を作り上げる。各学生が専門領域を深めながら、自分のプロジェクトのテーマとする問題を発見するのを手助けし、また問題解決のために必要な知識・理解・データ・手法についてはゼミナールの共通のプロジェクトとして設定し指導します。
 専門について。ゼミ生は、先ず第1に専門を確立することが必要です。専門とは、社会に出た時の「自分の売り」といって良いでしょう。即ち、就職面接の時、「私はこれが専門で、これが出来ます」といえること、たとえ就職ではなく専業主婦(主夫)になった時も「私はこの分野から私を取り巻く社会を切って(分析して)行くことが出来ます、他の人よりは正確に分析できます」という自負・自信・売りを持つこと、です。ゼミを決め、ゼミを行うことは、この「売り」を築き上げることだと言ってよいでしょう。
 卒論について。論文とは、人から教わるのではなく、自分で問題を設定し、自分で分析し結論を出す作業である、ことを理解してください。卒業論文とは例えて言えば、「自炊するようなもの(滝川、2002、p.10)」です。つまり、先ず自分が何を食べたいのかの嗜好をはっきりさせ、自分で料理を作り、自分で食べるようなものです、と滝川は言っています。
 すなわち、このような自主・自立作業を、学生時代に、指導教官の下で、一度やってみておくことが、卒論の目的です。この経験は、社会に出た時即ち、会社で仕事を任された時、研究者となり自主的研究を始めねばならない時、個人的に何事か(例えばある車を買うかどうか)に結論を出さねばならない時に、役立ちます。
 4年生のゼミに出席しても構いません。
学修目標 (1)途上国の経済現況を把握し、それを理解するための開発経済理論を理解し、問題を経済学的に理解する考え方を理解すること。
(2)問題を解決するための政策(経済学的な観点からアプローチした政策)にはどんなものがあるかを把握すること。
(3)研究論文(即ち卒業論文)とは何かを理解し、論文を書く準備をする:即ち卒論趣意書(卒論書くための計画書)を3年の秋学期に、作成する。これを使って、4年次で卒論を書く。3年の冬休み中に、第1回卒論を書く。
(4)この学部は総合政策学部なので、卒論の中に政策形成も取り入れ、卒論の最終章を独立章としそこで政策提言を行ってもらう。これは4年次で行うが、3年次では、(a)研究と政策提言の違いを学び、(b)どのような政策代替案が在りどのような考え方で政策を提言するか、を学ぶ。4年次で現在考えている方法は、(a)政策手段を中心とした文献を読む、(b)政策提言のエクササイズを一回行ってみる、の二つである。この(4)は4年次の学習目標である。
授業計画  世界人口(1998年で約60億人)の約5分の1は1日1ドル以下の極貧の生活をしています。極貧の人々の約98%は発展途上国に住んでいます。又、途上国の多くはインフレーション・失業・債務など沢山の問題に悩まされています。貧困に代表されるこれらの問題を解決するために、途上国の政府と国民は、どのような政策を採れば良いのであろうか?又富裕国の一員としての我々は、途上国に対してどういう援助政策を採れば良いのであろうか?このプロジェクトはこれらを考えることを目的とします。これらを、経済学的概念を用いて検討します。
                  プロジェクト研究の進め方
(1)3年次全体の目的は、第1に途上国についての一般的な問題点・分析理論を学び、問題点解決のための政策代替案を学び、第2に成果物として卒論趣意書(prospectus、3年次の秋学期)を作成し、冬休みに第1回卒論を書いて提出することです。趣意書とは、4年次でどういう研究をやるかの計画書です。即ち卒論の対象・目的・方法・作業計画等を含むものです。趣意書は、民間企業における目論見書・企画書・計画書などと同じですから、これを作る経験は就活に役立つでしょう。卒業論文とは、研究です。研究とは、論理的分析と論理的証明です。論理的に考え、論理的に分析し、論理的に説明し、論理的に記述することによって、その論文を読む人を論理によって説得し、納得させることです。スケジュールは以下のように考えています。
(2)3年次春学期。基礎学習期間。最初に、「途上国の経済問題」を講義し、最後に「趣意書の書き方」について講義します。途上国経済とその開発政策に関する基本文献(『トダロとスミスの開発経済学』)を読んで、レジュメを作り、ゼミで発表してもらい、質疑応答をします。人数が多い場合は、3〜4のグループを作ってもらい、分かれて勉強し、発表し、ディベートする方法も、考えます。 
(3)3年次夏休み。第1に、なるべく途上国へ行って見ること。なるべく観光旅行ではなく、途上国の実際の生活・生産を見られるプログラムに参加することが、望ましい。例えば、NAP、シーランド先生の学校建設ボランティア、国際機関のインターンシップ・プログラム(これにはなかなか良いものもありますが、競争が激しい)、日本のNGO・NPOの各種の途上国支援プログラム、FASIDの実習プログラム、途上国のNGO・NPOの途上国事業への参加等、が考えられる。夏休みの最後に「第1回趣意書」を書き提出してもらいます。
(4)秋学期。最初に、「研究論文の書き方」と“研究論文と提言書との違い”を講義します。次に、先輩卒論を読んで、卒論の概略を理解してもらいます。自己の研究対象国と対象問題を決定し、趣意書を作成し、冬休みに第1回卒論を書いてもらいます。同時に、基本文献(『トダロとスミスの開発経済学』)の講読も進めて、1年間(春学期も含めて)で基本文献講読を終了します。
(5)スケジュールとしては、9月中旬までに、趣意書の第1案を提出、ゼミで発表・討論してもらいます。これは、必須。
(6)11月末までに趣意書の第2次案を提出、ゼミで発表・討論してもらいます。討議・コメントに基づき改定し、第3次案へ。
(7)冬休み明け(1月8日又は9日)に、第1回卒論の提出。
(8)1月末に趣意書最終版(第3次案)の提出。
授業時間外の学習(準備学習など) 各クラスの前に、基本的に90分を使い、その週のクラスのアサインメント(『トダロとスミスの開発経済』の1章)について要約を作成し、それに3個以上の質問項目を書き加えること。クラス当日、その宿題を基礎として討議に参加すること。
評価方法  ゼミでの発言・討論の積極性(質問も発言の中にいれます)、参加の積極性、協調性、と出席状況(40%)。及び、ゼミでの発表内容の良さと、最終趣意書の内容の良さ(60%)。良さとは以下のような点です。
(1)基本文献のプレゼンテーションでは、その最も重要な部分を把握していること、内容をよく理解していること、レジュメが簡潔で明快であること、レジュメがきれいであること。
(2)趣意書案のプレゼンテーションと最終提出の趣意書については、その内容について、問題意識が明確であること、目的が明確であること、新しさあるいは独創性があること、論理性があり整合性があること、対象が明確であること、研究方法が明確であること、データ・ソースが明確であること、作業予定が明確であること、などです。そして、(3)ゼミでの質疑・討議で適切に返答できること。「論文とは、論理によって、聞く人・読む人を説得することである」ことを、思い出すこと。これらを、最初の「論文の書き方」のところで説明します。
テキスト 春学期・秋学期に読んで発表してもらうテキストは、トダロ=スミス(訳、2004)『トダロとスミスの開発経済学』国際協力出版会です。論文に入ると、ゼミ又はアポイントメントの時に、各人に、適切と思われる文献資料を指示します。
その他 Message: 「学びて思わざれば即ち暗し。思いて学ばざれば即ち危うし。(If you learn but don't think, then your knowledge is nothing. If you think but don't learn, then you make mistakes。)」(論語)